きょうはこんな日でした 【ごまめのはぎしり】
1999.1.19(火)
日本ペンクラブ電子メディア対応研究会への出席メールを出した。研究会の秦恒平座長が2/3に文字コード委員会(情報処理学会の文字コード標準体系検討委員会の略称)に出席なさるということで、その事前準備も兼ねるとのこと。
この文字コード委員会、秦さんからは、お前も来い、とお声がかかっていたが理事会で蹴られたといういきさつがあります。村山精二なんて無名のものは駄目だ、と言ったかどうかは知りませんけど、結局、秦さんとご一緒することになったのは、なんと、井上ひさし氏。井上さんは私の好きな作家のおひとりでもあるし、こういう交渉事にはうってつけの人。相手が井上さんでは、こりゃあかなわんな。という訳で素直に引っ込みました。
電子メディア対応研究会、文字コード委員会となにやら難しそうな名称がいっぱい出てきますが、難しいんです(^^;;
おいおいこの【ごまめのはぎしり】でも取り上げていきますが、要はパソコン上での漢字の問題をどうするかということ。皆さんもご経験があると思いますが、特に固有名詞などは変換してくれませんよね。これは文字コードがパソコンソフト上に全て揃っているわけではない、ということに起因しています。
普通に使う分には今の文字コードで十分なんですが、こと文学となるとそうもいかない、というのが我々(文筆家)の主張なんです。これを書き出すと長くなるんでやめますが、相手が大手の出版社や大学の教授クラス、通産省、文部省、文化庁と結構大掛かりになりそうです。そこで前出の井上ひさし氏、となった次第なんですね。
これを見てくれている人は、当然パソコンを使っている訳ですから対岸の火事とせず興味を持ってほしいと思っています。日本ペンクラブのホームページには、その辺の議論も載っていますから是非アクセスしてみてください。
URLは、
http://www.mmjp.or.jp/japan-penclb/
です。アクセスしたついでに感想なども寄せていただけると、こんなうれしいことはありません。
と、ここまで書いて気がついた。日本ペンクラブについてこんなに書いているんだから秦さんに断りのメール出しておかんとまずいな。別にまずくはないけど、常識だろうな、と思いますんで。
この二日ばかりはホームページ開設で時間をとられていた。今日はようやく贈呈本への返信が書ける。まずは2通の手紙に返事を書いて、次は贈呈本へのお礼。
○詩誌 『帆翔』 小平市 岩井昭児氏主宰
あれあれ、これは本誌ではなく「『帆翔』15号返信より(追加分-その2)」となっている。返信を集めたプリント。中を見ると今度は「『帆翔』16号返信より」もある。もちろん私の返信文もあるが、まあ、それにしても16号返信で56名。何人に贈呈しているかは知らないけど、結構きちんと返信しているんですね。意外と皆さん律儀なんですね。
ここで変な計算。56名の中で私が知っている人は何人いるんだろう? 結果25名。意外と少ないな、という思いです。8割くらいは知っているだろうと思っていたけど・・・。まだまだ知らない人が多いということに驚かされています。
で、ここは返信なし。返信の返信なんて変だし、岩井さんもそこまでしつこくされたんじゃあ迷惑だろうしね。
○隔月刊詩誌 『東国』 106号
伊勢崎 編集者・川島完氏/発行者・小山和郎氏
今回は珍しく塩原経央さんからいただいた。今までは川島さんや小山さん、井上敬二さんからいただいていたが、塩原さんからは初めて。順番に持ちまわりで贈っているのかな? 中に塩原さんからのメモ。なになに、雑誌「正論」にもことばのコラムを1ページ連載するって!? 今度買って読んでみよう。
塩原さんはもともと新聞記者だから、そういう仕事があって当然なんだけど、私も欲しい! きちんとした原稿料をもらう仕事って、ここんとこ無いもんな。仕事くれ! あっ、誤解を招かないようにはっきり言います。仕事は持ってます。明日30年勤続の表彰を受けます。まじめに(本人にすれば)働いています。
そんなことはどうでもよくて、『東国』。
やっぱり巻頭の寺島珠雄さん「梅雨日録 酒食年表抄」はいいなあ。なんでもない生活の一部を切り取って、自分の視線と、女、死んでしまった友などを詩情豊かに書いている。書き過ぎてもいないし、足りなくもない(サントリーの宣伝みたいだな)。
五行の詩をひとつのまとまりとして5編載せているが、全部いい! 特に5編目の「(遺品解消)」と名づけた作品は、その前の「(穀象虫愛育)」を受けた作品だが、ここに全編載せたいほどだ。載せちゃおう!
研ぐなと洗うなと袋全面に説く<丹波産のこしひかり2kg>
<スーパージフラスイ加工 減農薬有機質肥料施用米>
というものを初炊きした朝 女を一人思う。
糠(ぬか)臭いめしを栄養と呼んだ彼女との日もいまは古典だが
この残り米も古典化へ 即ち凶作用備蓄にわが遺品に。(穀象虫愛育)
謗(そし)りすぎた次の日 つまり今朝 同じ米を炊いた。
袋全面の能書き禁忌(タブー)にかまわず軽く研いで炊いた。
噴き終っためしには つやがあり糠っ気がなかった。
精製岩塩を振り大根葉を刻み散らして菜(な)めしにした。
うまかったせいか懸案の手紙をすらすら長く書けた。 (遺品解消)
どうです、素晴らしいでしょう! 細かい点のうまさは言い出したらキリがないのでやめますが、特に最後の一行なんか唸るほどです。こんなぶっきらぼうな顔をして相手にガツンと言わせるような台詞を吐いてみたいものです。
なお、作品中の( )は本文ではルビになっていました。以下同じ。
寺島さんはこの他にも評論で「出なかった『死刑宣告』、その痕」も書いている。萩原恭次郎と雑誌「ダムダム」についての論評だが、それら詩集・雑誌の表紙コピーがあり、「ダムダムパンフレット」なんて初めて見た。私ぐらいのレベルだと、そんなものも資料としての価値を覚えてしまいます。
「ハナミズキの街の午後三時」伊藤信一氏
伊藤さんとは昨年9月の「榛名まほろば」開店日にお合いしています。
自分がかつてこどもだったなんて
経歴を偽造して
しかも信じ込んでしまっている
変な大人が増えている
という第二連が印象的でした。見方によっては全体にとても怖い詩なんです。ご本人はおだやかに見える人なんですが、こんな面もあるんだな、と妙に納得です。
「ベンゼン函の得公称(エクリプス)」北川有理氏
この詩はじっくり読みたい。なにせ散文詩で11頁もあるんで、こんなにキーを叩き続けた頭では、なかなか入ってこない。もっとスッキリした頭で、さあ解剖してやるぞ、ぐらいの気構えがないと無理です。若い人なのかな? ちらちらと流し読みをするだけでも頭の柔らかさ、才気を感じます。
「帰郷夜」中澤睦士氏
中澤さんとも昨年9月にお合いしています。「詩学」によく書いていると記憶しています。
時間の仮想線沿いに歩きながら
あてもなく方法を探してる
というフレーズに惹かれました。
「塑像」塩原経央氏
あれっ、塩原さんて旧仮名だったんだ! うちの『山脈』主幹の筧槇二さんと一瞬見間違えた。筧さんの作品で慣れているから、なんかなつかしい気がしますね。作品は、男が造った塑像が男自身を吸い取ってしまうという詩なんですが、旧仮名で書かれると不思議な気がしますね。だからいいのかな。
「走馬灯」新延拳氏
昨年出版した詩集『百年の昼寝』の中にもある作品。
母の短い手紙をまた読み返す
というフレーズを覚えていて、詩集を見るとやはりあった。記憶に残るフレーズがある詩というのは素晴らしいなと思います。前詩集『蹼(みずかき)』も良かったけど、今度の方がいいな。これはご本人にも言ったけど。母君の死を扱った詩集なんで、ゴマカシが効かないから実力がわかるんだよね。
「絵はがき」井上敬二氏
1990年に出版した詩集『ジアン』から引き続いているテーマ、子供についての詩、と受け止めたが、子供の成長に合わせてこちらも成長(失礼(^^;;)しているなあ。同じパターンの連を三度も使っているが、飽きさせないもんね。
はがき
「書中お見舞い申し上げます あなたの肌のように
すべてが滑らかならばいいのに」
どこかで使ってみたいフレーズだな。ん? なんで肌がなめらかなんて知ってるんだ!?
トリは「波止場にて」愛敬浩一氏
愛敬さんとも9月に初めてお合いしました。実はお名前は10年ほど前から存じあげていたんですが、お合いできるとは思っていませんでした。もっと年配の方かと思っていたら、若くてびっくりしました。どこの大学だっけ、助教授やさてるのは? あれ? 教授だったかな?
例外と原則の疲労の中で
これ、判るなあ。うちみたいな会社て゛もそうなんだから、大学教員なんて際たるもんだろうな。こういう言葉も吐いてみたい。
愛敬さんはこの他、評論「その時代-富沢智の視点」も書いてます。
おっ、いかん。22時を過ぎてしまった。これから風呂入って、酒を呑まないといけない。1時間は続けて酒を呑まないと身体に悪い。
小山さんと川島さんの作品について書く時間がなくなってしまった。まあ、主宰者にはいろんな人から返事が来るものだから、今回は割愛。
あと一冊くらい詩集の感想文が書けると思ったけど、無理だな。
明日、、、は遅くなるからあさってに順延。ここまで読んでいただいてありがとうございます。おやすみなさい・・・・・・。
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