1999.1.27(水)
昨日は東京出張。アメリカに本社のある、シンクタンクの日本支社長と会見してきました。夜は赤坂の料亭で懇親会になりました。小さなお店で、こんな時代だから客も少ないだろうと思っていたら、なんのなんの、いっぱいになってしまいました。少しは景気も上向いてきているのかな?
○詩誌『波』8号
埼玉県志木市 水島 美津江氏 発行
日本詩人クラブ会員の水島美津江さんが発行する個人誌です。かれこれ4年は続いていますから立派なものです。ちなみに題字は詩人クラブ会長で、山脈主幹でもある筧槇二氏です。
ここのところ特集を組んでいて、今回は「男の中の愛」。恥ずかしながら私も一編、投稿しています。でも、ここでは出さない。それほど厚かましくはない。
「つきのひかり」 成田敦氏
病気の奥さんをお風呂に入れている作品。全編ひらがなで、流し読みしないで丁寧に文字を追っていくと、知らず知らずに成田さんの世界に入り込んで行く。
ふたりでゆにつかるのは
こんやがさいごのようなきがした
はだかのやせぐあいをゆにうかべ
ゆのおとにじぶんをしずめているようだ
ゆからあがると
ふしどへたおれるようにはいった
そのかおがさむそうにうつってみえる
そとはまんげつだった
まどをあけあかりもけして
いっしょにながめているはつなつのよる (部分)
病気に対するなんとも形容し難いやりきれなさ、奥さんのいじらしさ、などが私には伝わってきます。”ゆのおとにじぶんをしずめているようだ”に、奥さんの性格と成田さんのやさしい眼を感じます。これが成田さんの「男の中の愛」なんです。
「シングル・ライフ」水島美津江氏
女性である水島さんが、男の身になった作った作品。
窓向こうで
ニューファミリーを乗せた
キャンピング・カーがゆっくりと走っていく
会社を選んだ分だけ淋しいのか
夕べ別れた女のナンバーを
指先だけが求めている
そして
いみもない動きを止める (第3連)
うーん、これは判るな。何度、女の部屋のダイヤルを回そうとしたことか。あっ、昔はダイヤルだったんです。今みたいにプッシュホンじゃあないの。ジリジリと回すヤツね。
で、そこで回さないのが男だ、ってんで必死に堪えたことを覚えているな、、、30人ばかり、、、、。
男が女の身になってモノを書くって、結構難しいんだけど、逆はできるんだね。感心しました。女性性は男性を含むけど、男性性は女性を含まないってことかな?
○詩誌『花』14号
埼玉県八潮市 呉 美代氏 発行
亡くなった土橋治重さんの奥さんである呉さんが発行なさっている詩誌。昨年10月に詩誌「中央山脈」と共催した『山梨・詩の集い』の写真もあって、見やすい詩誌です。
「淵」山田隆昭氏
最初、名前を見ないで読んでいたら、ん?
うまい人がいるな、思ったらなんのことはない、山田さん。うまいのは当たり前、第47回H氏賞受賞者でした。
古い家はガランとして
木目の浮いた柱ばかりが林立している
柱には関節ができかかっている (第3連
部分)
今にも折れそうな柱を”関節ができかかっている”なんて表現できる詩人は、そうざらにはいませんな。
「ひぐらしの声 ―敗戦のとき」呉美代氏
呉さんは敗戦のとき十代で、軍関係の機密書類をつくっていたそうです。
叱咤と激励、忍耐と努力の
汗と涙にまみれた書類が
戸外にほうり出され、火が付けられる
バラバラにされた文字や数字が
無念の唸りをあげ
焔は光や風を巻き込んだ (第2連 部分)
”バラバラにされた文字や数字”に恨みが込められています。戦争の良し悪しは別にしても、仕事の結果に対する理不尽さへの憤りは判るように思います。
朝刊のトップを
一夜で軍神に祀り上げられた
若い航空兵の顔が埋めている (第4連
部分)
この光景はどこかで見たな、と思って「一億人の昭和史」(1975毎日新聞社刊)をひっぱり出して探してみましたが、見つかりませんでした。しかし、資料があろうと無かろうとこの光景は眼に浮かびます。これが言葉の力なんだろうな、と感じました。
[ トップページ ] [ 1月の部屋へ戻る ]