きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり
chibori park
ローマ・チボリ公園 '99夏




1999.10.2(土)

 日本詩人クラブ会友、布川鴇さんの第一詩集『さぶさの』の出版記念会がありました。新宿の「プチモンド」で行われましたが、80名ほどの人たちが集まって、大盛会。会友になった頃からの知り合いとしてはうれしい限りでした。
   991002
     会場風景
 ご主人は都合がつかなかったようですが、ご子息、お穣さんもお見えになって、華やかでしたね。やはり女性の出版記念会っては、華やかで和やかで、いいもんですナあ。


高橋サブロー氏詩編・詩論集『サランコットの朝方に』
   sarancott no asagata ni
  1999.9.19 詩画工房刊 2500円

 暗闇の中を走るのはオンボロバス
     
  僕の命を預けたヘッドライト
 凹凸
(おうとつ)の道は上下左右に揺り動かす
      夜道が長く続くサランコット
 尾根に取りつく時もクラヤミ
       足許は 懐中電灯に頼って
 両肩に加わるカメラのオモミ
       一歩一歩 踏みしめ登って (「サランコットの朝方に T」

 詩集のタイトルにもなっている作品です。サランコットとは、ネパールの山の町の郊外にある丘のようです。行ったことはありませんが情景が目に浮かぶようですね。
 高橋さんはお医者さんで、山男、そして詩人という多面性を持った方で、この本の中ではたくさんの詩論もお書きになっています。なかなかできることではありません。多才ぶりに驚かされます。

 僕がこの世でなすべき小さな課題が幾つかある。
   一(いち)が 医学で、
   二(ふた)つにはフォト(写真)がある。
   三(さん)に 山岳、
   四(し)が 詩学で、
   五(ご)に 語学といきたいが、もう時間がない。

 「あとがきにかえて」に出てくる言葉です。小さな課題≠ネどとご謙遜なさっていますが、とんでもない、誰でもできるというようなものじゃありませんね。多才な詩人に脱帽です。


薦田光恵氏詩集『モリーナの部屋』
   morina no heya
  1999.9.20 書肆青樹社刊 1800円+税

 ノート(16頁)

 私は何処にいるんだろう。草むらに眠るボ
ールのようだ。びしょ濡れの子犬かもしれな
い。夜になると誰かに拾われて怯えている。
「何処へ行くの?」夕べの夢の中ではA氏の
家は燃えて、 私は妊娠していた。 いつのま
に? まったくわからない。二日前の夢は絶
交しているB氏と散歩していた。∠70゚の坂道
をクルマで登りつめると、海の展望台まで辿
りついた。軒を連ねる土産物屋に、一軒だけ
靴を売る店があった。皮製のベタ靴がほとん
どで、B氏は編み紐の靴を買った。つられて
私も買う----。「立地条件にふさわしくない
店は、いいモノを売っている」とB氏は言う。
そして不機嫌になり「どうしてきみと一緒な
んだい?」と靴箱で私の脇腹を突いた。夢は
ここで
FINだ。朝がきていて<ゴミの日>だ
と気づいた。黒いビニール袋に四日分のゴミ
を詰める。自転車でチョイと走れば、台所は
きれいに片づく。頭の中は夢また夢のゴミだ
らけ。幸い忘れることで、きれいに片づいて
しまう。

 「ノート」と名付けられた作品が5編あります。これはそのうちの最初のものです。夢の話≠ニしているところが惜しい気がしますが、おもしろいですね。夢≠ネんて断わらなくても十分通用するように思います。全編を拝見して、この作品が薦田さんの基本であるように思われてなりません。絶好したはずのB氏に付き合う善良さ、ゴミの日≠きちんと意識する社会性(ちょっと違うかな(^^;;)などを考えると、きちんとした女性だなあ、と思います。
 他の作品はかなりヤバイです。女性の生理についても、男に対する見方も、ここまで書いちゃっていいの?と思うほどです。しかし私はこの「ノート」で薦田さんの根本を見た思いですので、安心です。律儀な方だと思います。



 
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