きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり
chibori park
ローマ・チボリ公園 '99夏




1999.10.11(月)

 高田馬場で朗読劇を見てきました。
T-THEATERという詩の朗読を中心にした舞台集団の公演です。監督をやっている大村浩一さんに誘われて行ってみました。ひと言で言うと、おもしろかった!
   991011
   公演パンフレット
 「朗読と音楽 記憶の森の物語」と題された公演です。パンフレットもハンパじゃありません。B5版24頁のものですが、びっしりと詩が書かれていて、しかもそれを全部朗読しました。所要2時間。
 詩の朗読だけではなく、ギターとバイオリンの競演、おまけに漫才?まであって、ちょっとフツーじゃない朗読劇でした。10人ほどの詩人のオムニバス形式でしたから、うまくまとまらないんじゃないかと心配しましたが、そんなこともなく、素人(たぶん)にしては上出来だと思います。1500円というのも良かったしネ(^^;;
 詩の立体ということについて考えさせられました。通常は本の中の活字でしか詩をみていないわけです。それが朗読、アクションということになると、まったく違った風に見えますね。たまにはこういう公演も見ないと、活字の詩しかイメージできなくなるなアと感じました。その意味でも良かった。大村さん、ありがとう!


詩誌『ひょうたん』11号
   hyotan 11
  東京都中野区 中口秀樹氏 発行

 当日、会場で一色真理さん、岡島弘子さんご夫妻にお会いしました。その折、岡島さんからいただいた詩誌です。

 案外な場所/阿蘇 豊

朝早く起きて野菜炒めを作る
玉ねぎを四分の一線切りにしていたら
重なっていた一枚一枚がはがれ散らばり
小さい方から三番目ぐらいの一片が
ころがりはずみで落ちてどこかへ
消えた 流しの下
そんなはずはないのに
見つからない はいつくばって捜しても

  とるにたらぬこと
     とるにたららら…?

                      びっくりした
                      ここはどこだ
                        少し寒い
                      うすぼんやり
                 誰の目からも遠く離れて
                       案外な場所
                   見つけてほしくない
                 鬼はあきらめて家へ帰れ
                  人の指の脂っぽい匂い
                    包丁の引き裂く光
                   細菌がのさばる空気
                    人の場所はくさい

ここはいいなあ
ずっと
見つかりたくない
声を殺し
斜め上空30度あたりを見ていたい
そうして
遠いいつか近いいつか
からからに干からびて
野菜でも玉ねぎでもなくなって
名前のつけようのない
なんでもないものに
なるんだ

 横書きでしか表現できないのが、残念。右にある第3連は、縦書きの場合は当然下になります。それがこの作品の魅力のひとつです。下にあるべき理由がちゃんとあって、しかもうまくいっている。なかなかこういう作品はありませんね。
 「名前のつけようのない/なんでもないものに/なるんだ」というフレーズも好きです。こういう姿勢が詩人にとっては必要だと思っています。


吉田秀三氏詩集『花の炎』
   hana no honoo
  1998.4.1 仙台市・宝文堂刊 1200円

 早春

風を呼ぶ
芹が光る
ふと風の中に
思い出に似た
小さな芽を
みつける
かすかな
ときめきの朝

 正統な抒情詩を読ませていただいた気分です。この作品には花は出てきませんが、他の作品に多く出てきます。そんなところも正統派を感じさせる所以かもしれません。
 この「早春」では早春≠ニ風≠ニ朝≠ノ注目しました。小品と言ってもいいような作品ですが、その3つの組み合わせにすんなりと目が行ったのです。できそうで、その実なかなか出来ない詩ではないかなと思います。



 
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