きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
ローマ・チボリ公園 '99夏 |
1999.10.22(金)
第31回横浜詩人会賞の授賞式に行ってきました。今年度は田村雅之氏の『鬼の耳』です。とてもいい詩集で、横浜詩人会の選考委員の皆さんの質の高さも評価できますね。
受賞者・装丁者
左が受賞者の田村さん、右は装丁者の倉本さんです。本の仕上がりも良く、装丁者とお会いできたのも収穫でした。普段はなかなか装丁者は表に出てきませんから。会場は50人ほどで、満員。田村さんの短歌の仲間なども集まって、盛況でした。
○高橋敏氏詩集『邂逅』
1999.10.5 国文社刊 2500円+税
゚(からみ)
山あいを行く
さえずる小鳥 深緑の木立
ありふれた風景の中に
坑道の櫓が迫る
形よく並べられた石畳
いわくありげな碑
一筋の光沢をとどめている鉱脈
足音が乱れる
閉山された中腹に立つ煙突
亀裂のある石塊
置き去りにされた無数の石炭
どれも泣きべそをかいている
煙害にあった岩肌に咲く草花
無心に鳴く虫たち
音楽を奏でる涌き水
足音が止まる
うずたかく積まれた゚
老体を風雨にさらして
かつては 砕かれ溶かされ
良質の鉄や銅を産んだという
手に取った感触の中で
歴史を語ろうとしている
似たような体を移動する
足音が続く
振り返る
呼び止められたような気がして……
浅学にして「゚」という意味が判りませんでした。しかし第2連から鉱物のカスのことだろうな、と想像しました。はたして辞書で調べるとその通りでした。そういう意味でも第2連はうまくできていると思います。言葉の意味をきちんと説明できる連なんて、そうそうあるもんじゃないと思います。
「足音」の使い方も巧みだなと思います。「乱れる」「止まる」「続く」と、作中人物の動きがよく理解できます。最終連もいいですね。歴史≠ノ「呼び止められたような気がして……」と受けとめました。
○詩と童謡誌『ぎんなん』30号
大阪府豊中市 島田陽子氏 発行
本人の希望により削除しました。2012.10.5 村山記
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