きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり
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新井克彦画「モンガラカワハギ」




1999.12.3(金)

 五反田で「
TRONSHOW2000」というシンポジウムをやっていたので、行ってみました。日本ペンクラブの秦理事からの情報で、「超漢字」の紹介がある、とのことで興味を持ったわけです。
   991203
 「超漢字」の紹介は13時から14時半までで、残念ながら30分ほどしか聞けませんでした。しかし各社の出展があり、その中で実際を見ることができました。カタログもいっぱいもらってきて、これからの対応に役立ちそうです。
 上の写真は「文字鏡」の紹介場面です。「超漢字」の中に「文字鏡」も取り入れられることを説明しています。
 この辺の話は、ペンクラブの電子メディア対応研究会でやっていまして、説明を始めると長くなるのでやめます。しかし電メ研の研究員もこのHPを見ていますから、その方たちのために簡単な報告をしておきます。
1.電メ研委員の坂村健教授は、このシンポジュームの委員長でした。TRONの発明者ですから当然でしょうが…。一応、挨拶してきました。
2.「超漢字」はWindows上で動きます。WindowsのOSと「超漢字」用のOSをふたつ持つことにはなりますが…。
3.DOS/VパソコンでないMacでは動きません。
4.WindowsのOSと「超漢字」用のOSは、切り換えて使います。ふたつ同時に使うことはできません。
5.Windowsと「超漢字」の間での文章のやりとりは、基本的にはテキストファイルのみのようです。ただしWindows側の制約で、JIS第1・第2水準、韓国語、中国語/簡体字に限ると思った方がよさそうです。
6.ソフト代金は定価で15000円でした。会場では1万円で売っていましたが、持ち合わせがなく買えませんでした。申し訳なし。事務所で買ってもらいましょうか。
 そんなところですね。詳しくは研究会で報告します。とりあえずメーリングリストにも載せておきます。

 シンポジウムのあとは日本詩人クラブの理事会。忙しい一日でした。こちらは例によって広報にいずれ載りますので、省略。理事会のあとは理事と専門委員との忘年会。今年一番早い忘年会となりました。いつもの理事会後の懇親会と違う顔ぶれが揃いましたので、なかなか楽しい。二次会はボトルの置いてある店に行きましたが、満杯、残念。早く呑まないと賞味期限が切れそうだなあ(^^;;


詩誌『帆翔』19号
   hansho 19
  東京都小平市 岩井昭児氏 発行

 ただわけもなく歩きたかった/大岳美帆

時計の中に埃がたまり
とうとう動かなくなってしまった
いずれも取り返しのつかぬことに
なることは分かっていても
刻まれる時間にせかされるように
あれもこれも欲を出し
明日という日を
勘違いしたまま過ごしてきた
今日も昨日と変わらなかった
ということには
見て見ぬ振りをしてきたから
拭い去れない疲れを
さらに溜めこむ一方だった

時計は止まってしまったのだ
もう立ち止まることもできるのだ
だから
ただただ
わけもなく歩きたかった
わけもなく歩いて
昨日も今日も
そして明日も
一度
きれいさっぱり忘れ去ろう

 うーん、これはよく判りますね。なにもない、ぼんやりとした一日を作りたいと、私も思っています。一日、休暇をとって、なにもせず昼にはビールを呑んで昼寝して、夜はうまい日本酒を呑んで、意識不明で眠りこんで…。こんな日が年に一度くらいはあってもいいんじゃないでしょうかね。定年になったらできるかな?
 大岳さんは、歩く、私は、呑む。ぜんぜん似ていないけど、根底は同じ、、、と思いたい(^^;; 山屋さんの心境と呑屋の心境はきっと、同じなんでしょう。そういえば大岳さんって、山屋さんじゃなかったでしょうか。昔、アウトドアの本で何度も見た覚えがあります。間違っていたら、ゴメンナサイ、です。
 この詩誌には赤木駿介さんが「詩誌『第一書』のころ」という連載をなさっていて、これは毎号楽しみにしています。今回は白川青年と岩井昭児青年が神保町でばったり出会うところで、以下次号。続き物のコツも心得ていらっしゃって、次号も楽しみです。小説としいうことになっていますが、詩史として読んでもおもしろいですよ。


詩誌『蠻』120号
   ban 120
  
埼玉県所沢市 秦健一郎氏 発行

 空蝉/近村美智子

家の裏の雑木林から一昼夜
鈴なりになった一定の音量は
高くもなく低くもなく休むことなく
生命のあらん限り念仏を唱えつづける

夢の中で会いたいあなたを追って
泣き濡れた涙は
朝靄がふりそそぐと白い絹糸の雨になった
やがて空が現れて陽がじりじりと射して
蝉は一匹一匹助走をつけて鳴きだすと
一斉に渾身の力でふんばり
ひと夏のたった七日間を謳歌する
数年もの土中の生活からやっと這いだして
一生を来世へ紡ぐ美事なシンフォニーの営み
まるで過去から蘇生した短い生涯
そして来世のまた過去へ帰ってゆくようだ

盛夏 琢が逝って一年
蝉はたとえ強風と雷雨に叩かれようと鳴く
死者を弔う読経の子守歌が道標になる
待つ人がふえて振りかえる私の脳裏に
盆に眠らない蝉は
琢からのメッセージのように聴こえてくる
「みっちゃん まだまだ修行が足らんよ」
あの太く低い声でぶっきらぼうに

 ※琢は早川琢氏

 『蠻』の主宰者、早川琢さんが亡くなって、もう一年なんですね。それにしても、こうやって同人から作品が寄せられるということはうらやましいほどです。早川さんとは面識はなく、手紙のやりとりだけのつき合いでしたが、文面から氏の誠実さは感じていました。近村さんの作品に接して、私の見方は間違っていなかったんだと思います。
 作品としても優れていると思います。蝉の一生と過去、来世を扱った第2連は特にそうです。「来世のまた過去へ帰ってゆく」という発想はなかなかできるものではありません。それにしても「あの太く低い声でぶっきらぼうに」というフレーズを見ると、生前に一度お会いしておきたかったな、と思いました。



 
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