きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり
mongara_kawahagi.gif
新井克彦画「モンガラカワハギ」




1999.12.18(土)

 きょうは本当にうれしい! 頼んでおいた酒が来ました(^^;; 毎年この時期になると奈良の蔵元から案内が来ます。今年も当然注文しました。楽しみですからね。
 奈良県桜井市三輪に今西酒造という蔵元があります。「鬼ごのみ」という酒を造ってします。「鬼ごろし」ではありませんぞ。鬼は殺してはいけません。鬼も好むほどうまい酒という意味です。それが来たんです。原酒一升2200円、オリ酒一升同じく2200円、送料を入れても5000円ちょっとで幸せになれるんですよ(オレも安上がりな男だなぁ)。
 3年ほど前から毎年2月に蔵元を訪れています。その関係から案内が来るんですが、冬一番の楽しみです。昔は冬が来るとスキーを楽しみにしていましたが、堕落したなあ。まあ、スキーよりは安上がりですが…。問題はいつまでもつか、せめて一週間は大事に呑みたいです(^^;;


個人詩誌『パープル』15号
   purple 15
  神奈川県川崎市 高村昌憲氏 発行

 土地トラスト

鮮やかなギフチョウが勢いよく翔ぶためには
*
小さな小さな土地かもしれない百坪足らずの庭
それでもゼロではない小さな勇気で見直したい
どんちゃん騒ぎよりも小さな遺産として残したい

県知事のために計画をつくる人がいて
社長のために計画を推し進める人がいて
子供のために 計画を考え直す人がいない
市民のために 万博を見直す勇気が欲しい

 *二〇〇五年開催予定の愛知万博に反対する市民グループは、「海上の森を守る土地トラストの会」を発足させた。

 「子供のために 計画を考え直す人がいない」というフレーズにドキリとさせられました。確かにそうですね。会社の仕事でも「計画を推し進める」のは簡単ですけど、中止するにはその倍以上のエネルギーが必要です。離婚もそうらしいですけど(^^;;
 自慢じゃありませんが、万博という万博は一度も行ったことがありません。愛知万博が仮に実現したとしても行かないでしょう。なぜかなあ? たぶん他人が作った「遊び場」が気に入らないんでしょうね。まぁ、徹底するのは難しいですが…。この作品からは、そんなことを考えさせられました。


詩歌文藝誌GANYMEDEvol.17
   ganymede 17
  東京都練馬区 銅林社・武田肇氏 発行

 雪の十和田/宗 美津子

白い雪の舞う中に生まれたという母
白い心で
気高く気丈に生きた
東北女のジョッパリに一本
私が母に捧げる秋田のお酒
 雪の十和田
*
母のちちははのふるさと秋田の
雪深い色そのままの瓶の色の酒
光にかざすと
お酒と十和田湖が追憶の物語を届けてくれる

初冬の十和田湖に雪が降り頻ると
雪は引かれるように
ホトリホトリと湖面に飲まれてゆく
墨色に煙る遠景色は
眠りゆく誰かのためにやわらかい

一合の晩酌の啜り泣くような音に
母への想いを重ねれば
雪の水面に魂の渡る気配を想う

雪の十和田≠ヘ
爽やかだが切ない辛さで胃に浸みてくる
深深と深深と眠る十和田湖の水辺が
脳裏を撫でてゆく

 *雪の十和田¥H田県大館市・北鹿酒醸の純米吟醸酒の名

 私も北海道生まれ、東北育ちですから、この雰囲気はよく判ります。ただ、子供のときの記憶しかありませんから、酒の話になると駄目です。成人してからの酒の記憶とダブらせて読んでみました。
 母から子へとつながる血筋、それと地域の特性のようなものを感じます。秋田だからやはり酒と十和田湖が出てこないとサマにならないようです。その酒は女性が媒体となっているところに、この作品のひとつのおもしろさがあるように思います。女性の血縁の中でお酒が出てくるのは不勉強で、初めてのように記憶しています。
 シリアスな作品なのに、違う読み方をしているかもしれませんね。でも、いろいろな読み方ができる作品というのは、良い作品だと思います。


大森隆夫氏詩集『風に舞う帽子』
    kaze ni mau boshi
  1999.9.25 土曜美術社出版販売刊 2000円+税

 風に舞う帽子

風が吹いてきて
少女の鍔広の帽子が
ふんわりと浮き上がり
謎の円盤のように
空中遊泳した

少女は
しばし 呆然とした
自分の帽子が
何故 宙に浮いているのか
不思議だった

少女は
われに返ると
すぐさま帽子を追いかけていった
少女もあやうく
宙に舞い上がりそうになった

 表題作ですが、この作品になんとも言えない愛着を覚えます。少女らしい可愛さが伝わってくるからでしょうか。本当に「宙に舞い上がりそうに」思いますものね。いい一瞬をとらえていて、ほのぼのとした気分になります。
 大森さんの他の作品を拝見しても、バランス感覚のとれた詩人だなと思います。文学には破綻した面も必要なのかもしれませんが、それだけではないと思っています。バランスのとれた中での文学も当然あってしかるべきで、まさに大森詩がそれに当ると思いました。


詩とエッセイ『焔』53号
   honoo 53
  横浜市西区 金子秀夫氏 発行

 小さな美しい町の夏のあさ/亀川省吾

小さな 美しい なつのあさ
夕顔もようのパラソルが ひらく音がする
       、、、、
お母さまは 二十世紀をむいている
こういう なつのあさならなにを考えてもゆるされま

              
ドーム
8月の女王陛下はやけただれた鳥籠を抱きに入道雲に
扮して降りてくる
、、、
リッパな
、、、、
スリッパは そろって まちうける
けれども 永遠に着かない足

そうだ 次の本の題名は 正夫の井戸 はどうかしら
そうですね 考えにいれておきましょう
      、、、
ところで まさをさん 人間やめますか
ハイ やめます
どうして?           
ビン
ぼくは あの進水式で船首に砕けた酒壜です
そのあとは 沈黙を守るために らしきもの
書いてきましたが ことごとく失敗です
詩論にいたっては 全滅

そんなことはありませんよ あなた
その手を私の中に入れてごらん
ほら 動くでしょう かすかな草の種子が
もう弾(はじ)けかけています そっとつかみ取って
官能的なつのあさが終わらない内に
深いポケットの中で迷うゆびは いま
カチリと死者との婚約指輪をはめられる

お母さまは 二十世紀を剥いておられます
純白の独楽をくるくると回されています

 どこかの会で亀川さんの朗読を聞いたことがあります。「人間やめますか」「ハイ やめます」というフレーズがあって、衝撃を受けました。この作品を朗読なさったのかもしれませんね。
 それにしてもおもしろい作品です。エロスと高貴さとダ洒落と、ごちゃまぜにあって独特の雰囲気を醸し出しています。「ことごとく失敗です」なんてご冗談を…。こういう作品は誰でも書けるというものではありませんよ。「カチリと死者との婚約指輪をはめられる」なんて、ドキリとさせられます。



 
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