きょうはこんな日でした 【ごまめのはぎしり】

1999.2.28(日)

 さきほど0時ちょっと前に帰宅しました。今日は日本詩人クラブ役員改選の選挙管理委員会があって、それに出席していました。選挙管理委員の仕事は開票までで、そのあとの候補者への連絡や許諾は、現理事会のやることですから、もうこれで私たちの役目はオシマイです。詩人クラブに少しでもお役にたてたようで、うれしいですね。

 昨日は『山脈』の例会でした。今回はいつもの例会と違って「由利浩を偲ぶ会」というのをやりました。由利さんは『山脈』の創刊同人で、小説の同人誌を創刊したために途中で山脈同人をやめましたが、主幹の筧さんとはおつき合いが続いていました。私は直接面識はないのですが、『山脈』に寄稿していただくために何度か手紙のやりとりはやっていました。
 昨年4月に亡くなりまして、その遺稿集『蝙蝠の飛ぶ町』という小説集が山脈文庫として12月に発行されています。未亡人の美和さんをお招きし、遺稿集の作品を論じながら故人を偲ぼうという趣旨です。現在の山脈同人と故人とゆかりのある人たちをお招きし、30人ほどの小さな会でしたが、勉強させられた、いい会になったと思います。


由利浩遺作選集
『蝙蝠の飛ぶ町』
    yuri hirosi
  1998.12.20 山脈文庫 2500円

 私も元々は小説も書いていましたので強く感じるのですが、本来、小説が持っている真面目さを貫いている作品集だと思います。うわいたところがまったく無く、なぜ人は生きなければならないのかを教えられた思いです。巻頭の「蝙蝠の飛ぶ町」は、由利さんがルポルタージュの記者としてご活躍なさっていた頃のものをベースに書いたと想像していますが、集団就職の少年が故郷に帰って交通事故で死亡したことを追いかけた作品です。もちろん小説ですから、単なるルポではなく記者の内面をえぐりとった内容となっています。
 時代背景が違っても現在に通用する作品です。むしろ現在だからこそ、このバブルがなぜ起こったか、なぜバブルが崩壊したかまで見通したように私には感じられ、正直、その先見性には驚かされました。

 由利さんには週刊誌の仕事などもまわってきたようですが、商業誌とは一線を画すようなところがあったそうで、それが無ければ著名な作家になってもおかしくなかった、と聞かされました。それを実感させられます。純粋に文学だけを愛したという姿勢が文章の隅々、文体に現われていて、こんないい作家を埋もれさすこの国の文化の有りように憤りさえ覚えました。
 他に「紅い薔薇」「愛と、わかれと」「誹謗の周辺」「無人島」などの小説も読み応えがあり、小説とは何か、を改めて考えさせられました。
 自費出版ですから一般の書店にはありません。2/16付け神奈川新聞の「かながわの本」というコーナーでも大きく紹介されていましたから、ご存知の方も多いかもしれませんね。興味があって読んでみたいという方がいらしたら、
pfg03405@nifty.ne.jp までご連絡ください。仲介いたします。



  
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