きょうはこんな日でした 【ごまめのはぎしり】
1999.3.1(月)
今日は日本ペンクラブの第8回電子メディア対応研究会があって、赤坂の事務所にいってきました。文化庁の国語調査官がおいでになるとのことでしたから楽しみにしていました。結果は裏切られなかったと思います。
○第21期国語審議会『新しい時代に応じた国語施策について』
(審議経過報告)
平成10年6月 文化庁
調査官の氏原さんから渡された資料がこれです。昨年の国語審議会の報告書ですが、委員に俵万智さんが起用されたこともあって記憶している方も多いのではないかと思います。
文化庁という性格上、我々が期待した文字コードの問題についてはあまり出ませんでした。やはり通産省なんですね、相手は。JISとして文字コードをとらえるとそうなります。しかし今日の会談ではいい発見をしました。東大でTRONという文字コード体系を研究なさっている坂村教授の発言がきっかけになったんですが、JISと文科系の文字コードとは切り離すべきだ、という意見が出ました。
私も迂闊だったんですが、ついついJISという観点でしかこの問題を見ていませんでした。JISにいかに必要な漢字を取りこんでいくか、そのためには通産省にどう働きかけていくか、そんなことばっかり考えていました。
しかし、それは間違いだと気付きました。文化と工業規格とはもともと違うものなんです。工業規格の中に文化が取り込まれていってはならないのです。むしろ文化のひとつとして「工業」があり「規格」があるんです。なぜならそこで表現されている文字は「文化」の範疇だからです。
だからJISはJISで勝手にやればいいんです。我々はそれをも取りこんだ文字コードを提唱すべきなんです。具体的には文化庁なり文部省が日本語の文字なり漢字なりは、例えば100万あるよと提唱し、JISはその中からJISとして必要なものを使うという構図です。
現実はそれに近いように見えますが似て非なるものです。通産省指導でJISを制定して漢字を選んでいます。国語審議会はそれとはまったく無関係にこの文字はどうの、あの漢字はどうのとやっている訳です。これでは問題はこじれていくばかりです。
今日の会談の中での私の提言は、文字のことは文部省や文化庁にまかせろ、ということに尽きます。極端にいえば文部省が文字コードをふって、通産省がその中から必要なものを使うべきです。理系の連中が文化としての文字に口を出すべきではありません。
昔の筆つくりの職人は書についての意見を言わなかったと思います。いかに書き良い筆をつくるかが彼らの仕事で、書家はいい筆を選んで使っていたと思います。理系の人たちにはいい筆を作ってもらいたい。それを使っていい作品を書くのはもの書きの仕事です。
これを書き出すと長くなるのでやめますが、いずれペンクラブのホームページにも出てくると思いますから、詳しくはそちらをご覧になってください。また、今までのいきさつも載っていますから、それも参考になさってください。
文藝家協会のホームページにも同じような書きこみがUPされています。
文化庁がことばや文字、漢字について想像以上に真剣に取り組んでいることは、今日の氏原審議官のお話しでよく判りました。しかし「経過報告書」を見て唖然としたのは、メンバーの構成です。大学教授や大会社の社長ばっかり。俵万智さんや作家の杉本苑子さんが入っているんで、公平を期しているように見えますが、私に言わせればなんで魚屋のおじさんや花屋のおばさんが出てこないのか不思議でなりません。文化庁の努力は認めるけど、庶民感覚が無さ過ぎるなあ。菓子屋の詩人やタクシー運転手の作家だっているんだぞ。
おっと、「魚屋」「花屋」はいけません、「魚店」「花店」にしなさい、って言ったのも文化庁だっけ?
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