きょうはこんな日でした 【ごまめのはぎしり】

1999.3.13(土)

 風邪をぶり返して、情けない一週間でした。休暇も一日使ってしまい、職場の呑み会では酒を一滴も呑まないで帰る、という前代未聞のことをやってしまいました。目の前に酒があるのに手を出さないなんて、我ながら信じられないことです。

 3/7は「榛名まほろば」で荒川洋治氏の講演会があったので、行ってみました。これは面白かった。荒川氏の話は初めて聞きましたが、いい話し手ですね。例によって「朗読全否定」というのがテーマでした。最初はちょっと身構えて聞いていましたが、よく聞いてみると、なんだ、オレと変らねえじゃあないか、ということになってしまいました。
 私は人様がやっている朗読をどうこう言うつもりはありません。ただ、私はあまりやる気がありませんよ、と言いたいだけです。やるんだったら、もうちょっと練習して、聞いていただくのに耐えられるようになったら朗読しますよ、と。
 荒川氏も同じです。私との違いは、安直に朗読している人を攻撃するかしないか、だけです。どちらがいいかは判りませんが。

 3/11は藤本義一さん(かの作家とは別人)主催のワインサロンで、池尻で呑んできました。ワインサロンとは言っても、今回は河豚刺に日本酒。「越乃寒梅」「久保田」「八海山」と出てきて大満足。どなたかが持ってきた「千代の亀」というのもうまかったな。「鬼ごのみ」に似た味で、ちょっと手に入らないだろうなと思います。


鬼の会会報『鬼』323号
   oni 323
  奈良県奈良市 中村光行氏 発行

 鬼は悪にあらず、善である、というユニークな鬼の研究者、中村光行氏の発行する会報です。中村氏とは20年ほど前に知り合いましたが、ここのところは毎年2月にお合いしています。奈良・桜井の「鬼ごのみ」の会が実は中村さんのお世話で開かれているものなのです。

  鬼をただ闇くもに悪いとする考えに対して、アンチテーゼを呈する
 集いです。まさに、天邪鬼を気取る正統派集団かもしれません。
  だからこそ存在意義があるのかも知れぬと、自負する人もおります。
  善鬼論者の集団と考えて下さい。

 「会員募集」の中の言葉です。鬼に限らず天狗、般若、仏像なども扱っていて、他にはちょっとない会報です。また最近では「鬼のしきたり」というコラムで伝統行事やことわざの検証を行っていて、えっ!?そうだったのと思わせることに出合います。「鬼の霍乱」の意味、「鬼と節分は無関係」、「茶は不祝儀」などのコラムが参考になりました。
 その中から「茶は不祝儀」を紹介してみます。例外として九州では祝儀に茶を用いるけど、他の地域では不祝儀として使うそうです。関東では香典返しに茶、関西では仏事に茶飯という具合です。
 で、なんでそうなったかと言うと、明治維新後、旧幕臣の救済に茶栽培を奨励した静岡県が香典返しに売り込んだのが最初、なんだそうです。

 なんだ、そうだったのか。バレンタインのチョコレートと一緒ですね。どこかで誰かがし掛けて、いつの間にか生活の慣習になっていくんですね。私なんか気が弱い方ですから、慣習を破るというのはなんかとんでもないことのように考えてしまうんですが、発生の理由を知ると怖くありませんね。もう少し気を大きく持って、古い不要な慣習は破っていこうという気になってきます。


詞華集『レヴェイユ』
    reveil
  1999.3.1 銅林社 発行 3500円

 銅林社のアンソロジーで、今回は「レヴェイユ[めざめ]」とタイトルが付けられています。『山脈』同人の山中以都子さんからいただきました。他に9名の方が参加なさっています。
 山中さんの作品の中では「川あかり」が傑作です。小学生の時に学友と渡った鉄橋をモチーフに書かれた散文詩です。後年、その友は列車に飛び込んで心中します。全編を取り上げたいのですが、かなり長くなるのでやめます。“川あかり”を効果的に使った作品です。
 それに引けをとらないくらいうまいのが次の作品です。山中以都子詩の特徴をよく発揮していると思います。

 秋おそく

ひくい垣根ごしに
落葉をはく尼僧の細いうなじが
目にしみた

ときおり
竹群(むら)をしなわせて
斜めにしぐれが走った

話すことばもみつからず
ひっそりと径をひろって
ただ歩きつづけた

いくつめかの曲がり角にさしかかったとき
思い切ってたちどまり
背中にまわってしつけ糸を抜いた

かすかに指先がふるえたのは
しつけ糸をつけたままのコートと
歩き廻っていたのが恥ずかしかったからだと

あのときは
思っていた・・・・・・

 いいでしょう! 青春を思い出すでしょう。たまりませんね、こういう作品は。日本女性のいい面を余すところなく見せてもらった気分です。恥じらいの美学、とでも言いましょうか。最近の若いオンナノコではこうはいかないでしょうね。つくづく私たちの青春にはいい女がいたんだな、と自慢してやりたくなります。


西本梛枝著・ガイドブック『ひとり歩きの 山陽山陰』
     sanyo sanin
  1999.3.1 JTB 発行 1500円

 『山脈』同人の西本梛枝さんからいただきました。西本さんはプロの旅行作家で、この手のガイドブックはもう何十冊もお出しになっています。皆さまの中でも旅行に出かける前にガイドブックを買って、知らず知らずに西本さんの本を見ている、なんてことも多いのではないでしょうか。一度、奥付を見てください。一冊くらいはお宅にもあるかもしれませんよ。

  という訳でこの本に関しては内容紹介なし、宣伝のみです。旅行の前にお買い求めになってご覧ください。私も6月に山陽地方を旅行する予定ですので、この本を携行します。



      
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