きょうはこんな日でした 【
ごまめのはぎしり 】
1999.4.6(火)
今朝は5時起きして会社に行って、おまけに残業までして、疲れました。横浜ベイスターズの4連敗にも疲れちゃいますけど・・・。
でもまあ、気分は爽快です。4日からボチボチ始めていた「山脈通信」を作り終えて、あす発送できます。同人誌『山脈』の月報のようなものですが、この10年ほどは私が担当しています。その前の担当者は筧槇二主幹。40年もやっていたんですね、主幹は。それと同じだけ私がやるとすると、あと30年。80歳になっちゃいます。
○沼津の文化を語る会会報『沼声』226号
静岡県沼津市 望月良夫氏 発行
日本ペンクラブ会員の望月さんからいただきました。この欄ではもう3回目の登場ですから、お馴染みになったかもしれません。
硬質で上質なエッセイが多い雑誌です。なかでも新聞記者を長くやっていた
轡田隆史さんの「素粒子の夢」というコラムは大好きです。今号も考えさせられました。「ベタ記事にこそ人生の諸相が潜んでいる」とお書きになっていて、次のような“ベタ記事”を紹介してくれています。
「若い母親が列車に飛び込んで死亡する事件がロシアで発生した。原因は家庭不和」
これはなんだと思います? トルストイの『アンナ・カレーニナ』をベタ記事にすると、こうなるんだそうです。では、これは?
「恋人が死んだと誤解して青年が命を絶った。青年の運命を知って、今度は女性が自殺してしまうという悲劇が起きた」
事件が起きた場所は「ヴェローナ」。シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』なんですよ、これは。じゃあ、次は?
「若い母親が砒素を飲んで死亡する事件がフランスの片田舎で発生。原因は家庭不和」
フローベルの『ボヴァリー夫人』です。アラン・ド・ボトンという人の『プルーストによる人生改善法』というのがネタ本のようです。そして「自分自身のことも大河小説ふうに考えずに、ベタ記事で片づけたら気が楽になるかも知れないぞ」と結んでいます。
逆に言えば、新聞のベタ記事から大河小説も作れるということですね。まあ、そういう場合も現実には多いんでしょうが。新聞記事に触発されて詩を書くなんてこともありますが、その場合は一面トップ、大見出し、なんてのが題材になりやすいようです。そうじゃなくて「ベタ記事」というのも一考に値しますね。
○詩誌『ぷりずむ』2号
東京都八王子市 原田道子氏 発行
4/3の「螻(けら)の会」で原田さんよりいただきました。『詩と思想』の研究会メンバーが始めた詩誌です。
もう港も、船も見えなかった。二人はたが
いの身体に腕をまきつけ、そろそろと顔を寄せ
あった。ふたりの唇がふれた。―――すると、
かれらは本当の肉体をもつ男と女になった。
しかし、まわりの世界が幽霊になり、ふっと
揺らいで消えてしまった。 (藤井雅人氏『幽霊になった男』部分)
ここでの「二人」はともに幽霊という設定です。この人の感覚にはいつも驚かされます。幽霊とは、だいたいひとりで出てくるものなんですが、ここでは二人、という設定になっています。また、「まわりの世界が幽霊にな」った、という発想もおもしろいと思います。巻頭になっているだけのことはありますね。
その他、先生格の菊田守さんの評論「詩と美の周辺T」、原田道子さんのエッセイ「M・とはずがたり」などもあり、勉強しようという意欲が前面に出ている詩誌です。
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