きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり
   mongara kawahagi
      
新井克彦画「モンガラカワハギ」


1999.4.25(日)

 投票に行った以外は、一日中ベッドにもぐり込んで、本を読んでは眠り本を読んでは眠り、をくり返していました。この自堕落な生活、たまりませんな。いい天気の一日でしたが、家の中にこもっているとずいぶん贅沢な時間を持っているようで、心地よい気分です。相変わらず軽い眩暈がしていますけど。


月刊詩誌『柵』149号
   saku 149
  大阪府豊能郡能勢町 志賀英夫氏 発行

 だれがいちばん馬鹿なのか/桜井武尚

子犬が生まれて一月たった
なんでもかじるので
木ぎれに めいめいの名を書いて
かじるものを作った

おばあちゃんは
「≪くろ≫のはこれ」
「≪ちゃ≫のはこれ」
「ちがうよ≪くろ≫のはこれだよ」
「そうではない≪はなあか≫はこれ」
「≪はなぐろ≫こっちだったら、馬鹿だね−」と
いちいち間違いをなおしている

子犬が馬鹿なのか
おばあちゃんが馬鹿なのか
おれがいちばん馬鹿なのか

 桜井さんはここのところ子犬を題材にした作品を多く発表なさっています。これもその一連の作品群に入ると思います。ホッとしますね、こういう作品に出合うと。自分の子どもや孫のことを書くとロクなものは出来ないと言われますが、犬は違うようです。どこか醒めているのか、人間の子のような責任はないからなのか、私自身にも判然としません。一度「論」としてまとめるのも面白いかな、と考えています。


詩誌『掌』118号
   te 118
  神奈川県横浜市 志崎純氏 発行

  街はやさしさばかりで、と彼は言った   福原恒雄

 モノにあふれた世の中よ!
 という言論は もののない床をなめて 臭い
 遠くにいらっしゃる身なりのいい方がたの
 これからは
 かんきょうに やさしさの氾濫をめざします!と
 ネクタイしめ直すこえ    (第1連 以下略)

 福原さんとは、私が10代の頃からのおつき合いです。もう30年になります。その頃から彼の表現に魅力を感じて、たくさんの作品を拝見し、かなりの影響を受けました。そしてこの作品でも30年前と福原詩の基本部分が何も変っていないのに驚かされます。私はあっちにグラグラこっちにグラグラやっているのにですよ。
 この作品も福原さんのものの見方、表現が端的に示されていて、変らない旺盛な作風に圧倒されます。力のある者とは一定の距離を置くという気概が感じられます。環境なら環境、国際化なら国際化、と無批判に受け入れていく国民性への痛烈な批評も表現されて、いつも福原詩の前に行くと小さくなってしまう自分を感じます。
 福原詩を越えられるか、というのがこの20年ほどの私のひとつのテーマでした。しかし、最近はあまり考えないようにしています。越えるか越えないかが問題ではない、ということに気付いてきました。そういう尺度を持つこと自体がおかしいんだ、と福原さんの作品から教わってきたように思います。


野矢茂樹著『無限論の教室』
   mugenron
  1999.1.25 第3刷 講談社現代新書 660円

 3月の『山脈』例会で話題になっていたので買ってみました。数学の「無限論」を哲学として論じる、という観点ですので、確かに面白いには面白い。しかし、何というか、観念的な話ですので、私にはちょっとね。ああ、そうだよね、そんな風に考えると、こんな理論なんかひっくり返せるよね、とは言えるんですけど。だから何だ、というのが常について回ってしまいました。
 どうも私は学者ではなく、あくまでも生産工場の技術屋の考え方が身についてしまったようです。もちろん学者の仕事を否定するつ
もりは毛頭ありませんが、目先の利益、目先の技術に目が行ってしまいます。悲しい性ですかね。
 ひとつには昨日の頁で紹介した『見果てぬ夢「明石原人」』の、直良博士への学閥の迫害、文字コード委員会に出席しての学者の発
言などに私が影響されているのかもしれません。まず言葉の定義を決めてから議論に入る、という文字コード委員会のやり方は、正し
い手法でしょうが、どこか浮き世離れしたものを感じました。
 まあ、それとは直接関係ないんですけど、観念をいじくり回されたという思いが強い読後感でした。


桐生操著『本当は恐ろしいグリム童話U』
   gurim dowa

  1999.3.29 第8刷 KKベストセラーズ 1500円

 なんと、私でもこんな本を読むんですね。驚きでしょう。私も驚いています。これにはいきさつがあります。娘が私のために友人か
ら借りてきてくれた本なんです。「こんな本があるよ」と娘に言われて「おもしろそうだね」と言ってしまったのが失敗。一度返した
本を、理由を言って借り直したそうです。
 まあ、それはそれとして、童話の裏話というのはある程度知っていましたから、そこに違和感はありません。むしろ裏話の中に詳し
い性描写が出てくるのが驚きでした。だって娘もその友人も、この3月までは小学生、4月になってやっと中学生なんですよ!そんな
彼女たちが、ここに書かれた性描写の意味が判るのかしらん?
 恐る恐る読後感を聞いてみました。「つまんないから読んでないもん、ワカンナイ」というのが回答でした。ほっ。安心して読み終
わりましたが、まあ、内容はこんなもんでしょう。



 
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