きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
新井克彦画「ムラサメモンガラ」 |
1999.5.17(月)
きょうは野球がないので安心して過ごせます(^^; きのうの横浜は負けちゃったけど、まあ、あした勝てばいいさ。あしたゆっくり野球を見るためにも、いただいた詩誌の紹介はどんどんやっちゃいましょう!
○詩誌『花』15号
埼玉県八潮市 呉美代氏 発行
ぶらんこ/高田太郎
海辺のぶらんこを揺する
先上がりの極み
後先上がりの極み時
人の運命の角が見え隠れするが
そのあわいの一瞬の快感の身を貫くものは
真正面からの急降下の機銃音だ
幻視の中の東部ニューギニア戦線クレチン岬
箱の中の石ころとなったきみが
この綱の軋り音に合わせて頻りに転がる
身を晦ましつづけたぼくらのつましい贖い
きみの帰らざる海の眩しさに
いつしかぶらんこを握る手が開いてくる
うまい詩ですね。そして怖い。「きみ」とはおそらく戦友だろうと思います。「身を晦ましつづけたぼくらのつましい贖い」の複数形は同時代の生き残った人たちのことを言っているんでしょう。こういう感覚は私には実感としてはありませんが、判るような気がします。ですから「いつしかぶらんこを握る手が開いてくる」というのがとても怖く感じます。
「ぶらんこ」と「急降下」という組み合わせもうまいと思います。子どもの頃のぶらんこの感覚とよくマッチしていて、若い頃の戦争体験と現在の心境が一本貫かれていて、詩としての締りも成功しています。これだけ短い中で、歴史と人生がぎっしり詰まっていて、詩の持つ本当の力を感じました。
火葬にもピンからキリまであって
業界用語では、これを「釜差」という
すなわち
*特別賓館 十七万七千円
*特別室 十万七千五百円
*特別最上等 六万六千円
*最上等 四万八千三百円
*上等 三万四千五百円
*中等 一万七千六百円
(狩野敏也氏「釜差アリ〜いちばん下が最上等〜」部分)
この作品もおもしろい詩です。このあと改築のために「上等」「中等」が一時無くなって「いちばん下が最上等」となったと続きます。これはまあいいとして、次がおもしろい。
ところで裏の婆さんは、いい歳をして
近くのスイミングスクールに足繁く通う
三途の川を自力で渡れるようになりたいとか
すると、嫁さんが「戻りの泳ぎ方は教えないでくださ
い」と、先生に頼んだそうな (同上・部分)
おばあさんもあばあさんだけど、嫁さんもすごいね。こういうブラックユーモアが出てくるのは、ちょっと不謹慎かもしれないけど楽しくなります。
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