きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
新井克彦画「ムラサメモンガラ」 |
1999.6.22(火)
あっという間に、日本詩人クラブの丸亀大会から10日も経ってしまいました。この辺で書いておかないと忘れてしまいそうです。
新理事紹介
正式な報告は詩人クラブの広報誌『詩界』に載りますので、ここは身辺雑記風に。
新理事の紹介風景です。右端で説明しているのが鈴木敏幸理事長。立っているのが私です。座っているのが左から山田隆昭、ちょっと見え難いですが北岡淳子、中原道夫、神崎崇、森常治、奥が志賀英夫、その前が五喜田正巳の各理事。一番右が高橋渡会長です。
懇親会にて
こちらはグッとくだけて、懇親会。左から『山脈』同人の司茜さん、私、『山脈』主幹で詩人クラブ前会長の筧槇二氏。筧さんはこれで二年の会長職を全うし、服装もリラックスしています。私は紹介される立場でしたので、ガラにもなくきちんとスーツ。あと二年たって解任されたら、筧さんスタイルに戻ります。
まあ、こんな程度かな。書き出したらキリがないんで止めときます。地元の小学生の群読やら太鼓の披露など面白いものがいっぱいあったんですが、舞台装置の裏方をやっていましたので、ほとんど見ていません。舞台の袖で見るには見ていましたが、スケジュールをこなすのに追われていました。でも舞台裏から覗くというのは、あまり経験がなかったので、いい勉強になりましたよ。
○詩とエッセイ誌『さやえんどう』19号
神奈川県川崎市 堀口精一郎氏発行
無造作に積み重ねられた古本屋の
本と本の
ちょっとした隙間にも
世間の
空風が吹き込むらしい
埃と
誇りにまみれて
彼らだって そうして
風邪を引くのだ
ゴホン
ゴホン
咳込む咳に
敬語まで添えて
まだ誰に媚(こ)びを売ろうというのか (吉田定一氏「古本」第1〜4連)
駄洒落と言ってしまえばそれまでですが、笑えます。すました文字の中に、すました顔をして「ゴホン」。でもそれだけじゃないんです。
それにしても
店主(おやじ)のすがたが見えない
著者の顔のように
本の古(いにしえ)におぼれ沈んで… (同・第5連)
こうなるとちょっと怖いですね。「著者の顔のように」と言われると、ドキンとします。自分の文学がどんどん古くなっていって、「本の古におぼれ沈んで」しまう怖さです。あるいは「すがたが見えない」のは「店主」ではなく、古本に埋没した自分かもしれません。
古本には魔力があると思っています。特に限定500部なんてのがザラな詩集は、その最たるものです。再版されることも稀で、世の中の奥深くに沈み込んでいく本は、欲しいと思えば思うほど出てこないものです。それが出てきた時、巡り合った時の妖しい魔力に惹きつけられます。自分の青春がそのまま詰まっているような。
この作品は「古本」だから成功しているんですね。新刊本じゃあ、こうはいきません。古本屋の黴臭い匂いを思い出しました。
○詩誌『都大路』25号
京都市伏見区 すえかわしげる氏発行
旭川在住の東みゆきさんからいただきました。東さんとは1996年前橋で行われた世界詩人会議でお会いしています。その後、早川琢さんの『蠻』にお入りになったんですが、早川さんが亡くなったので『都大路』の同人となったようです。密かに心配していました。いい所の同人になって良かったと思います。
無題--夜明けへの祈り--/東みゆき
弱音を吐く ということは
本当は いけないことなのかも知れない
でも 正直言って以前ほど
熱くは なれない私がいる
そして 実際に今までのようには
激しく 危なっかしく 一途に
書くことに全てを賭けることも無いだろう
ネジがゆるんだ?
バネがのびた?
力が尽きた?
いいえ!
ただ 遠く青く美しい大雪(たいせつ)の山並みを
そして
空が薄紫色から次第に明るさを増してゆく
夜明けを--
じっと 眺めていたいだけ
まばゆい黄金の光の煌めきが
東の 山と空のはざまから
世界を照らし出す瞬間を
じっと 待っているだけ
そして その時
私は…
大雪山(たいせつざん)…北海道の中央に位置する代表的な連峰の名前
東さんとは一度お会いしただけ、その後は文通が何度か、ですから正確には判りませんが、素直な女性だとイメージしています。この作品からもそれを感じますね。ちょっと素直過ぎるくらいです。
私も北海道生まれで、子供の時は一時住んでいました。大雪山の風景は大好きです。朝の澄んだ大気は言いようのない神々しさを感じます。それはこの作品からも読み取れます。その前では、人間は自分に素直になってしまうものなんでしょうね。東さんのその良さは、いつまでも残していってもらいたいものだと思います。
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