きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
新井克彦画「茄子」 |
1999.7.12(月)
嫌煙運動をおやりになっている方には、まことに煙たい話ですが、葉巻とパイプを始めました。理由は、もらったから、です(^^;
『山脈』創刊同人の由利浩さんが亡くなって、遺品に葉巻とパイプがあり、処分に困っていると未亡人から伺いました。だったら引取りますよ、と申し出たのが発端です。送られてきた荷物を見て驚きました。ちゃんと茶箱に一式入っていました。よほど煙草が好きだったんですね。由利さんとは文通を何度かした程度で、結局お会いすることはありませんでしたが、故人の遺志を継ぐのは私しかいない(^^; と、肝に銘じた次第です。
葉巻は一週間ほどで吸い尽くし、今はパイプです。紙巻煙草よりはるかにおいしい。煙草の害は紙にある、という説を信じて毎日せっせと吸っています。JTから表彰してもらおうと思います。あっ、洋モク(死語!)だった。
○千葉龍氏小説集『愛炎の海に』
1999.7.20 蒼洋社刊 1900円+税
日本詩人クラブでご一緒している金沢の詩人、千葉龍さんからいただきました。小説もお書きになっているのは存じ上げていましたが、拝見するのは初めてです。拝見して、ああ、やっぱり詩人だな、と思いました。
異界のモノたちとの交渉を描いた「雪の夜の来訪者」、「幽霊を抱く男」、「霧の中から」などを拝見すると、いわゆる普通の小説家とは違った感覚をお持ちのように感じます。むしろ詩人としての感性で言葉をつないでいるという風に思いました。
「峠に吹く風」、「横浜・南軽井沢」、「蚊帳」、「愛炎の海に」は不倫も含めた日常的な男と女の愛を描いています。こちらも詩人としての眼差しが強いように思います。
それから気づくのは女性の描き方です。いずれも魅力的な女性が登場しますが、皆やさしい。小説の裏に見える、千葉さんの母上への思いをそこに読み取るのは、あながち間違いではないと思います。表面的には激しい性描写の中にも、一種の安らぎを感じるのは、そこに起因しているのかな、と勝手に想像しています。
いつも情熱的にお話しされる千葉さんを、遠くからながめているだけでしたが、急に身近に感じられました。散文の力でありましょう。詩人としての感性と、散文の力をお持ちになっている千葉さんに、これから教わることは多いなと、決め込んでいます。
○個人詩誌『色相環』2号
神奈川県小田原市 斎藤央氏 発行
先月、創刊号をいただいたと思ったら、もう2号。斎藤さんの意気込みが感じられます。いい言葉も続きます。
雪を踏む足音がして ミッションスクール
の女学生たちのレモンのように明るい笑い声
がさざめく (「サルビア」部分)
女学生≠ニいうと最近はコギャルなどと呼ばれて、私自身はそういう面でしか詩の素材として考えていません。それを見事に裏切られました。そうですよね、本来の女学生は「レモンのように明るい笑い声」の持ち主なんですよね。しかも、それが大部分なんでしょう。マスコミに操られて、ごく一部の女学生を巨視化して見ている自分を恥じます。
生まれることは
亡んでいった魂たちへの
鎮魂ではないだろうか(「紫」部分)
この言葉も考えされられました。生まれて、死ぬ、ということは、生物の種の保存としてのみ考えていて、そこに詩はどう介在するのか、と思案していましたが、鎮魂という発想はありませんでした。私に欠けているものを発見した思いです。
このふたつのフレーズから感じることは、なんと人間にやさしいのだろう、なんと人間をまともに見ているんだろう、ということです。斎藤さんは学校の先生です。斎藤さんに教わっている子どもたちは、幸せだと思います。
○詩誌『饗宴』20号
札幌市豊平区 林檎屋 瀬戸正昭氏 発行
日本詩人クラブの会員でもある村田譲さんからいただきました。毎号、特集を組んでいますが、今回は同人の紹介と数篇の詩を集め
た小詩集となっています。顔写真があって、コメントがあって、その人となりを知るにはいい企画だと思います。
いい詩がいっぱいある中で紹介したいのは、これです。
菜/瀬戸正昭
無意味的変奏曲 むいみな、ゔぁりえーしょん
(為朗読) (ろうどくのための)
嫁菜 よめな
シャクシ菜 しゃくしな
摘マミ菜 つまみな
漬菜 つけな。
薺 なずな
芥子菜 からしな
野沢菜 のざわな
蔓菜 つるな。
大阪白菜 おおさかしろな
南都川白菜 なんとかしろな。
京菜 きょうな
酸茎菜 すぐきな
甘菜葉 あまな は
サラダ菜 さらだな。
高菜 たかな
小松菜 こまつな
遺菜 やれな
困惑菜 こまつたな。
筧菜 ひゆな
壬生菜 みぶな
菜王 なを
頴割菜 かいわりな。
焦菜 こけな
暇菜 ひまな
良諫言西菜! えーかげんにしたーさい!
★これら、すべて「菜(な)」の類なれど、いくつか、ちがふもの有。さて、どれでせう。(ヒント 五つ有升)
選んだ理由その一は、私も言葉遊びが好きだからです。そうは言ってもうまくはないので、まったく発表していませんけど…。作者がニヤニヤと、苦労しながら作っている様子が想像できて、楽しくなりますね。
その二は、「」という漢字にあります。これがパソコンで表現できるかどうかに興味がありました。UNICODE
では入っていたのですが、実際に表現しようとすると「?」となってしまい、駄目でした。
では、なぜこのように表現できたかというと、9万字を有する文字鏡コードによります。詳しくはきのうの頁に書いたので繰り返しませんが、なかなかの優れものだというのがお判りいただけると思います。『饗宴』の皆さん、変な実験をしてしまい申し訳ありません
m(__)m
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