きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
新井克彦画「ムラサメモンガラ」 |
1999.8.12(木)
9〜11日は会津に行っていました。今年は早乙女貢さんの『会津士魂』をずーと読んでいて、それに影響されて、実地を見たくなりました。もともと私の親父は福島県出身で、私も小3までは今のいわき市に住んでいました。会津は同じ県内でしたから好感は持っていたのです。
親父の実家は平藩の下級武士だったようです。そういえば子供の頃実家を訪ねると、床の間に鎧兜、長押に槍、食事は箱膳でした。そんな影響もあって早乙女さんの『会津士魂』には同調していましたから、現地を見たい、となった次第です。
驚いたのは『会津士魂』にも出てくる佐々木只三郎の墓があったこと、しかも打ち捨てられていたような状態を、早乙女さんたちが再建したことです。歴史と現実の見事な融和を見た思いです。
会津盆地の夕暮
それからこの夕焼けにも驚きました。伊豆の雲見という所が夕焼けの名所ですが、それに負けない華麗さです。普通はここで鶴が城の写真などを出すところですが、私の一品はこれですね。30分ほど見とれていました。
という訳で私の夏休みはおしまい。いただいた本がたまっています。精力的に紹介していくつもりです。
○詩誌『SPIRAL LINE』14号
横浜市緑区 大滝修一氏 発行
大滝修一氏を始め伊藤桂一、一色真理、筧槇二、菊地貞三、櫻井幸男、浜田知章、木津川昭夫の著名な各氏が作品を発表しています。当代を代表するような詩人たちばかりで、どなたを紹介すればよいのか迷いに迷いました。
神経戦/筧 槇二
結婚なんて誰でもできるが
離婚は誰でもできるつてわけぢやねえぜ
ありやァ ものすげえエネルギーの消耗戦だ
テレビには松方弘樹と仁科明子が映つてゐる
かつて 人から亭主を奪つた女が
いまは 人に亭主を奪はれて泣いてゐる
死ぬこたァ 誰でもさうなるが
死にかたァ 誰でも一緒つてわけぢやねえぜ
一発勝負もありやァ
延長々々の神経戦もある
病院での見舞の帰り
友の襟元から盗み見た肋骨を思ふ
西洋たんぽぽの咢のやうな頼りなさだつた
酔ふたびに
泣きながら軍歌をうたつた木原孝一よ
もう傷は癒えたか
あの世でも
硫黄島の岬のやうな場所があるか
潮からい声をふりしぼつてゐるか
結局、私の所属する同人誌の主幹の作品を紹介することにしました。ちょっとルール違反のような気もしますがお許しください。師匠筋になりますから感想など書きません。作品を堪能していただければ良いと思っています。
○藤森里美氏詩集『徒花の証し』
1999.7.22 ゆすりか社刊 2000円+税
エンゼルフィッシュのこと
I 年輪
十年近く
我が家に泊まっている
水槽のエンゼルフィッシュよ
随分
長生きしているものだ
生き残った彼等を
じーと見つめていると
真夜中に働く私に
やんちゃに踊りまくりながら
餌をねだっている
しかし活発だった彼等も
近頃は片隅や石影に潜み
もの思いに耽っているみたい
こんなどんづまりの時間にも
私はこせこせと忙しく
動き続けなければならないのだろうか
日本詩人クラブで何度かお会いしている藤森里美さんの第6詩集です。この作品からもお判りのように、対象とご自身をうまく表現なさる方です。それに「我が家に泊まっている」や「どんづまりの時間」などという表現を拝見すると、並々ならぬ言語感覚をお持ちだと思います。
終連の解釈は、人によって別れるところだと思いますが、私は第3連を受けたものだと素直にとる方が良いと考えます。それから「年輪」というタイトルの解釈も難しいかもしれませんね。これも私は素直にエンゼルフィシュの10年と藤森さんご自身を重ね合わせるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
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