きょうはこんな日でした【 ごまめのはぎしり 】 |
新井克彦画「アカククリ」 |
2000.1.18(火)
このホームページも昨日で丸一年でした。アクセス数は2400回余り。開設当初の私の予想は、年に1000回もあればいいなぁ、でしたから、大幅に上回っています。月に200回、一日平均7回というのは凄いですね。自分の詩集や同人誌を比べると、考えられない数字です。これもひとえに訪れてくれる皆さまのお陰です。改めてお礼申し上げます。
それにしても時代が変ったなと思います。パソコン通信時代も自分の考えていることを日常的に公にする、という経験はありましたが、私の場合、フォーラムやパティオででしたから、閉ざされた世界での発言でした。ホームページは開いた世界ですから、誰が入ってきたのかさえ判りません。そういう場所で発言するのは、正直に言って怖い気もしていました。
しかし、それを打ち消したのが「信頼」でした。これはパソコン通信時代に培われた考え方です。パソコン通信も匿名の世界ですから、インターネットと同じような危険性があります。それを克服しているのが、相手への「信頼」なのです。ネットで遊ぶ人間には、基本的に悪い奴はいない、こちらが信頼すれば相手も信頼してくれるはず、という考え方に立脚してきました。
これを書き出すと長くなりますが、ちょっと書いておきましょう。その考え方に誤りはなかったという経験があります。ニフティーのフォーラムに「FCAMP」という所があります。最初は当然、ハンドル名で入りこんで、あーでもない、こーでもない、とやっているのですが、そのうち、いろいろな発言者に合ってみたくなるんですね。
「FCAMP」の場合はキャンプのフォーラムですから、一緒にキャンプできますので、ある意味では自然な成り行きですが、他のフォーラムも同じなんです。この「合ってみたい」という感情がそのまま相手への「信頼」になるんだろうと思います。そうなればあとは怖いことはありません。怖いのは相手の顔が見えないからで、一度合ってしまえば、どうということはないんですね(^^;;
もちろんマスコミで取り沙汰されているような部分もあります。悪意の人間というのは、いつの世でも一定の割合でいるもので、彼らには信頼を持ちません。このHPでも女性の顔写真と名前を一緒に載せるようなことは、なるべく避けています。出版記念会などで必要がある場合は止むを得ませんが…。
まあ、そんなこんなで一年が過ぎました。自分にとっては充実した楽しい一年でした。これからもよろしくお願いいたします。
○佐々木誠氏詩集『空中ピエロ』 |
1989.11.1 秋田県秋田市 秋田協同印刷製 非売品 |
昨年12月26日に行われた中原道夫さん詩論集出版記念会でお会いした佐々木さんよりいただきました。佐々木さんとは事前のEメールでやりとりをしていて、秋田から日帰りで来ることが判っていました。東京の詩人たちとはあまり面識がない、とのことでしたから、じゃあ、紹介してあげよう、と生意気にも思っていました。
そう思ったのは12月10日頃だったんですね。当日になったら忘れちゃいました(^^;;
「佐々木です」とご挨拶をいただいて、よろしく、と返事をしたんですが、なんか違和感がありました。うちに帰って何で違和感があったのか考えてみて、あっ! さっそく謝りのメールを入れましたよ。
そんなチョンボにも関わらずいただいた詩集です。佐々木さんのHPでこの本の存在は知っていましたから、楽しみに開きました。24歳の頃の出版で、20歳前後の作品が集められています。
愛情4
君は
そうやって
紫煙をあげて
いつも 物憂げに 遠くを見つめているね。
ぼくは 枯木に水をやるような思いで
見つめている。
----錯綜---- 限りある君の情報。
枯木
に
水をやる
作業を 毎日 続けているのだ ぼくは----。
うーん、20歳でこういう発想をしたいたのか、と正直なところ驚いています。私も20歳のときがありましたから(^^;;
女性への接した経験もあります。でも「枯木に水をやる」なんてことは考えもしませんでしたね。佐々木さんと私は15歳ほど違います。時代が違うと言ってしまえばそれまでですが、そんな表現をしてしまうような女性はいませんでした。
そういう現場から(^^;;
遠ざかっていますから、あるいは私自身が忘れているのかもしれませんね。久しぶりに自分にもあった青春を思い出しています、、、、って書くほどのトシでもないけど、20歳のオンナノコより年増の芸者がいいなぁ。
○文芸同人誌『selest』試作版 |
1999.11.1 神奈川県相模原市 selest発行部・琴生結希氏発行 500円 |
こちらは佐々木さんの近作(だと思う)作品が載っている同人誌です。ネット上でのつき合いの人たちが纏めた作品集のようです。「試作版」という位置付けが面白いし、電子詩誌ではなく紙の本にしようという意図も面白い。後者についてはいずれ分析してみようと思っています。
にゃあ/佐々木誠
かおをあらう
なめる
ごろごろする
ちょこんとすわる
まるくなってねる
みみのうらをかく
くれくれとなく
ふみふみする
ちょうちょにじゃれる
しらないひとにはちかづかない
おなかをなめる
しっぽはみじかい
トイレがきたないと
もんくをいう
あおむけになってねる
いえのなかでも
かだんのなかでも
きみは
貴婦人のような振る舞いで
ぼくらを惑わす
佐々木さんのハンドル名は「いっぽ」さんですから、この猫の名前も「いっぽ」ではないかと想像しています。昔の知り合いにそういう名の猫を飼っていた人がいましたから…。
猫に対する愛情がよく判りますね。私のうちでは猫でなく室内犬ですが、同じような感情を持ちます。ただし「貴婦人」ではありません。「貴婦人」は猫にこそふさわしいものです。吉行和子さんでしたっけ?『小さな貴婦人』という、確か芥川賞をとった小説がありましたが、それを思い出しました。
「ぼくらを惑わす」というのは、何も猫に限らず女性もそうですね。そこがこの作品のオチだと穿った見方をしています。
○隔月刊詩誌『東国』110号 |
1999.12.20 群馬県伊勢崎市 東国の会・小山和郎氏発行 500円 |
アンケート/関口将夫
もうすぐ
二〇〇〇年になるというが
二〇〇〇年という区切りは
ほんとうは
〇〇〇の中にあなた(人類)は
あと何年生きられるか
その予想と希望の数を書き入れなさいと
つきつけられたアンケートのようなものだ
一〇〇年のときも
一〇〇〇年のときも
そうやって時代がときおり
ボクらにつきつけるアンケートだ
悲しいことはないのだ
死はボクらの水先案内のように
いつも時間の波間に点滅している
あなたは
あと何年と書き込むのですか
さすがは巻頭詩、さすがは詩人と気分の良くなった作品です。昨年暮の発行ですから、この作品が書かれた頃は1999年でしょう。2000年、2000年とうるさいなあ、と思っていた年末でした。そんな世間を見ていて、何か書いてやりたいと思っていましたが、私はとうとう書かず仕舞い。そこへいくと関口さんはちゃんと書いていて、立派です。しかも世間とは違う詩人の感覚で、です。
先日も車のセールスマンがうちに来て、「2000年ですから新車を」というモノ言いをしたので、ムッとしました。別にセールスマン氏は悪気があってしゃべったのではないでしょうが、カコツけてモノを売るという感覚が気に入らない。相手が詩人ではないから、ムッとしただけに留めました。詩人だったら、なに考えてるんですか、と言ってしまったかもしれませんね。
1981年も2000年も、みんな一緒。私の誕生日も正月も1日としては一緒、と思っています。まあ、それはそれとして関口さんの「アンケート」は一歩抜きん出ていますね。私の嫌がりよりも上に行って、「あと何年生きられるか」と突きつけるとは凄い。そうでなくちゃ!と思わず拍手してしまいましたよ。世の中には凄い人もいるんだなあ、オレの考えはまだまだ中途半端だなあ、と反省させられました。
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