きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
新井克彦画「茄子」 |
2000.10.28(土)
横浜で山脈合同出版記念会を行いました。同人の石原武さんが『遠いうた マイノリティの詩学』という著書、桜井さざえさんが『ひとの樹』という詩集を出版しましたので、そのお祝いです。いつも行っている野毛の「今福」という店は、25人程度が定員ですので、仲間うちの会と称して、あまりお客さんを呼びませんでした。特に埼玉の詩人たちにはご無礼いたしまして、お詫びいたします。でも「なんで呼んでくれないの?」という質問を浴びせられるたびに、私は感激しましたね。皆さんが『山脈』を大事にしてくれている証拠で、うれしくなりました。
でも、午後6から横浜で開催となると、埼玉の人はキツイだろうと思います。そんなヘンな配慮をしてしまいました。この場を使ってですがお詫びいたします。そして、定員いっぱいの26名の方にお集まりいただいたことをご報告いたします。
桜井さざえさん 石原武さん |
ほんとうは100人でも200人でもお集まりいただきたかったんですけど、桜井さんは『山脈』にお入りいただいたばっかりですし、石原さんはお仕事として出版しているわけですから、あまり大げさにできないという事情もあったんです。その辺をお汲みいただければうれしいです。会はなごやかに終りました。同人の司茜さんからは「山鶴」、ご出席の山崎美和さんからは中国の「竹葉青酒」という差し入れがあって、うまかったですよ、、、って、こんなこと書いたらご招待しなかった皆さんに怒られるかな(^^;;
○詩誌『はあふ・とおん』11号 |
2000.10
滋賀県彦根市 角田祐子氏・やまかみまさよ氏発行 非売品 |
C T/石井春香
「息を吸って・・・止めて下さい」
「楽にしてください」
テープから流れる美しい声の指示で
胸部がスライスされる
一センチの厚さで 二十四枚
二ミリの間隔で 十三枚
切りとられる わたしの人生
白日のもとに さらされる過去
どんなに小さな傷も見逃さないとばかりに
負けないと決めた日から
笑いで包んだガラスの破片
貧乏で言い出せなかった小学校の修学旅行
勉強すれば怒る母
蒲団のなか
懐中電灯に照らされた教科書の文字
火のような片想いの焦げ跡
生活を省みない男への苛ち
虐待に耐えた青白い時間
「慢性化しています。随分、前からの出血ですね。ここに治った跡があるでしょう」
物静かなドクターの指
月日がフィルムに映し出されて
シャーカステンに
トランプのように並べられている
今さら
過ぎ去った時間と向き合っても仕方ない
いっそのこと
スライスした堅めの肉はボイルして
酒の肴に
ババ抜きでもして遊びましょうよ
先生
この感覚は判りますね。CTは経験していませんが、胃の内視鏡を初めて受けたときに同じような感覚になりました。「白日のもとに さらされる過去/どんなに小さな傷も見逃さないとばかりに」というフレーズはまったく同感です。
「貧乏で言い出せなかった小学校の修学旅行/勉強すれば怒る母/蒲団のなか/懐中電灯に照らされた教科書の文字」というフレーズから、同年代の人だということが判ります。今では信じられないことですが、本当に修学旅行に行けない子もいたんですよ。私はかろうじて行かせてもらえましたが、もうちょっと貧乏だったら、絶対に行けなかったでしょうね。
最終連は私とまったく違いますね。「ババ抜きでもして遊びましょうよ/先生」なんて、とても言えません。そんなに開き直れない。その強さが作品にも滲み出ていて、作者の精神的な強さを感じます。
もっとも女医さんだったら、私も言うかな(^^;;
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