ょうはこんな日でしたごまめのはぎしり
murasame mongara
新井克彦画「ムラサメモンガラ」




2000.2.2(水)

 先ごろ、昭和女子大で1962年頃の「日本詩人クラブ会員履歴調書」というものが発見されました。当時の会員122名分で、コピーが私の手元にあります。物故者を含めた日本詩人クラブ会員・会友名簿の電子化を担当していますので入手した次第です。
 見ていて驚きましたね。信じられないような有名人ばかりです。長田恒雄、河西新太郎、近藤東、高橋新吉、それに山田耕筰なんかも会員だったんですね。まあ、西條八十さんが存命の頃ですから、そんなことも一因だったのかなぁと想像します。先輩の名を汚さぬように後世に引き継いでいきたいものです。


詩誌『花』17号
hana 17
2000.1.25 埼玉県八潮市
呉美代氏発行 600円

 地下鉄道/山田隆昭

次の駅に至る道のりの
地上の風景は忘れてしまった
乗客はみな黙っている
ある者は物語に没頭し
また 向かいのおんなの靴に見入る者もいる
隣の客はなまあたたかい静物である
光ばかりがはしゃいでいて
車内は妙に明かるい
吊り広告が
へら へら と媚びている
レールの継ぎ目が骨に響く
勾配もカーブも見えない
わずかな体の傾きでそれと知る

見えないことは恐怖である
もう どこへも到着しないかもしれない
眠ったふりして 観念して
午前零時を越えるあたりから
引込線にそれてゆく
その先には車庫すら ない
ゆく手も後方も
やわらかく湿っていて
土の匂いが侵入する
ここは どこ?

 山田隆昭さんはご存知のように、第47回H氏賞の受賞者です。私などがとやかく言える立場ではないのですが、まあ、友達ということでご勘弁願います。
 私が○をつけたのは「隣の客はなまあたたかい静物である」というフレーズです。そうなんですよね、隣の客というのは変に生あたたかいんですよ。意識しないようにしているんですが、どうしても意識してします。男の客で、股を広げた途端に私の足に触れたりするとこの野郎≠ニ思ったりします(^^;;
 いつかそんなことを書いてみたいと思っていましたが、やられました。さすがは山田さん、いい表現をしていますね。私は単に意識するというレベルでしか考えていなかったけど、なまあたたかいという表現の方が現実味があるし、詩の言葉としても生きています。いい勉強をさせてもらいました。



 
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