きょうはこんな日でした【 ごまめのはぎしり 】 |
新井克彦画「ムラサメモンガラ」 |
2000.2.13(日)
日本詩人クラブ『日本の詩100年』刊行委員会に出席してきました。今回はゲラの校正で、正直なところ、疲れました。私は校正には携らず、会員アンケートが戻ってこない人の経歴を書き出すことをしていましたが、14時から18時までびっしりかかってしまいました。
800人近い会員の中で、経歴を書くアンケートが戻ってこない人は、約7.5%ですから、回収率としては立派なものですが、戻さない人がいることに驚きもあります。なんの強制もなく加入した団体ですからその程度の義務は当然、と私なんかは思うのですが…。まあ、高齢でペンもとれない、という会員もいらっしゃるでしょうから、一概に批判できるものでもありませんけど…。
○山口あつこ氏詩集『愛の多様性』 |
2000.1.10 東京都板橋区 待望社刊 1200円 |
別れ Separation
爽やかな顔をして
ドアの前に立った
ノブを回そうとしたら
中から 軽やかな女(ひと)の声が転がってきた
フロアに両足が硬直し
ノブを回す手は凍った
それから 片方ずつの足を
そっと摺り摺り
どのくらいの時間をかけて
わずか十五段の階段を
降りたことだろう
いつ家に辿り着いたのか今も
記憶は 途切れたままだ
その時から
あの青春の時計の針は
ずっと停止したままなのです
こういう憶えって、ありますね。みんな同じような経験をしてきたんだなあ、とつくづく思います。「軽やかな女(ひと)の声」というのは、実際のところ、どういう女(ひと)だったのかというのは判りませんが…。
20歳から30歳までの「私の生き様をまとめ」とあとがきにあります。青春の詩集、と言ってよいでしょう。誰もが引きずっている青春を素直に表現された作品が多く、赤面ばかりの青春の日々を思い出しました。
○個人詩誌『点景』21号 |
2000.2 横浜市金沢区 卜部昭二氏発行 非売品 |
落葉
正月も近い 故郷へ帰るんだろう
否 郷里の家失くしてから
この町で過ごしている
それは淋しい
だけど住めば都のたとえもあるし
差し詰めこの町が
第二の故郷といったところだろう
なあに風に流されふと立ち止った
硝子向うの路上の落葉さ
自らの身を落ち葉に例える潔さ、凄さを感じます。どんなに栄華を極めていようが、人はこういう気持ちになるものなんでしょうね。いや、こういう気持ちがなければ人として成り立たない、と言ってしまった方が良いのかもしれません。
卜部さんはおとなしい方で、いつも静かに微笑んでいる、という印象があります。そんな卜部さんの内部に、このような強いお気持ちがあることに、正直、驚いています。見かけで判断している私自身を恥じます。いい勉強をさせてもらいました。
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