きょうはこんな日でした【 ごまめのはぎしり 】 |
新井克彦画「ムラサメモンガラ」 |
2000.2.25(金)
自治会の中に「組」というものがあります。10軒ほどがひとつのまとまりになった単位です。地域によっては「班」という呼び方をしているようです。その「組」の総会がありました。総会と言っても料亭で会計報告をやって、その後は呑み会という気楽なものです。地域の人たちとのふれ合いの場で、意外に楽しみな会なんです。
しかし今年度はそう楽しんでばかりはいられません。組長になったからです。10軒の集まりですから、10年に一度は順番が回ってきます。月に一度の組長会議への出席が義務づけられ、自治会の行事にも皆出席が求められます。今年度は中学校PTAの副会長も決まっていますし、難儀なことです。
戸数300にも満たない小さな集落ですから、いろいろな役が回ってくるのは覚悟していました。10年ほど前に越してきた時からの覚悟です。これまでも子ども会や小学校PTAの役員をやってきましたから、おおよその様子が判っているつもりです。なんとかなるでしょう。日本詩人クラブの役員や日本ペンクラブの委員をやっていて、日本のことを考えるのも大事ですが、自分が住む地域のことも忘れてはいけないと思っています。ちょっと優等生すぎる発言ですが(^^;;
○河上鴨氏詩集『老僧』 |
2000.2.10 東京都東村山市 書肆青樹社刊 2200円+税 |
老僧
首吊りそのもののように
浴衣がぶら下がっている
天には尼僧の眉のような月
赤い提灯があちこちから集まってくる
村人の声が大きくなる
めしいの修行僧が池の中を
長い竿で突いている
老僧が水面に浮かび上がる
一人の僧侶は桑畑で
女を追いかけ
もう一人の僧侶は染物小屋で
女と藍にまみれている
草叢からかけすが飛び立つ
この作品は詩集の表題になっている以上に河上さんの思い入れが強いようです。「後書き」のほとんどを使って、次のように述べています。
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表題作「老僧」は、「聖と俗」をテーマとした。「聖」の象徴として老僧を扱ったが、純粋なあまり自らの命を断つ事になる。「俗」の象徴として二人の僧侶の世俗的な姿を描いた。「かけすが飛び立つ」という表現は、老僧の昇天を意味する。この一行により、老僧の魂は、この世に執着せず昇華する。
「老僧」を書いたきっかけは、ある年のアジア映画祭の優秀作品をテレビで見た事による。島尾敏雄の「死の棘」と中国のある映画を見た後に生まれた。東洋と西洋の世界観の差異を見た。
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「聖と俗」というのは考えさせられます。私なんかはどうしても俗な方に行ってしまいがちですが、もちろん聖を否定するものではありません。自分自身が聖を貫こうとするのが難しいな、と思うのです。客観的に見ているのはいいのですが、その場に置かれたらどうなるか、自信がありません。
精神としては聖を求めるべきなんでしょうね。いろいろと考えさせられた詩集でした。
○川中子義勝氏詩集『ものみな声を』 |
1999.12.15 東京都新宿区 土曜美術社出版販売刊 2000円+税 |
夕の風に
ひとにはどれほどの土地がいるか
あの物語の結末も
身の丈ほどの地面が
かくも値を上げたこの国では
まったく別な寓意をみちびくだろう
むしろどれほどの事物(もの)がいるかと
ひとは自分に問いかける
いまやものを捨てる土地にも窮する国で
路上生活者だけが身のまわりの
ひとつひとつをいつくしむ
日向の影が過ぎてゆく
そののちまで何を携えていく
発すればたちまち風にまぎれて消える
言葉のほかに
所有(もの)なき身にしてもことはおなじ
ひとにはどれほどの言葉が要るか
日ごと 費やして顧みぬわたしくが
たとえば とおく旅立つまえに
あなたに遺すかなしみを
なお夕の風に託していくとしたら
難解な言葉はほとんど使っていないのに、私の理解を超える作品が多い詩集でした。聖書に取材した作品などは、まったく歯がたちません。一般教養のつもりで、一応聖書にも目を通して、本箱に置いてありますが、そんな程度では駄目だということを痛感しました。勉強不足を感じます。
そんな作品の中で唯一、私でも理解できる作品が「夕の風に」です。この程度に書いてもらえると何とかなりますね(^^;;
それでも格調高いと思います。決して悪い意味ではなくて、尊敬の念を込めて。
詩集には川中子さんのHPのURLがありましたので、さっそく行ってみました。なんと東大文化人類学部の教授だったんですね。なるほど格調高いわけだ(^^; それは別としても良質なものを感じていました。あとは読者の読みこなす力だけですね。
ご本人の承諾は得ていませんが詩集にもURLを載せているぐらいだから大丈夫でしょう。お教えしますのであまたの作品をご覧になってください。「良質」という意味がご理解できると思います。
http://www4.justnet.ne.jp/~kawanago-/
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