きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり
nasu
新井克彦画「茄子」




2000.8.20(日)

 2年毎に開かれている中学校の同窓会に行ってきました。今回は幹事が母校の見学会をやるというので、なんなんだあ!?と思っていましたが、行ってみて判りましたよ、凄い学校になっていました。

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静岡県小山町立北郷中学校外観

 歩いているうちにチラチラと変な建物が見えたんです。なんかリゾートマンションみたいのが出来たんだなあ、と思っていると、なんと我が母校! 腰を抜かすほど驚きましたね。35年前の木造二階建ボロ校舎はどこに行ったんだあ!?
 さらに驚いたことに、この中学校の校長が、高校の同級生の土屋君。あいつ、頭良かったもんな。エラクなったもんだ。で、土屋クン、じゃない、土屋校長先生の夏休み返上登校に案内されて見学しましたよ。中は至れり尽せり。パソコンが24台も生徒用にあって、全部インターネットに繋がっているってんだから、スゴイ。地域の間伐材を使った内装もGood。美術室、音楽室なんか照明も音響もGood。
 こんな学校でもう一度勉強したい、在校生もきっと頭が良くなってんだろうな、という質問には「そんなことはない」というのが返答でした。ちなみに土屋校長の返答ではなく、我が同級生のうちのひとりの答えでした。やけに自身たっぷりに言うなあと思ったら、彼の子が通っている模様でした(^^;;
 夜に照明を点けておくと、ときどきカップルが某ホテルと間違えて入ってくるので消しちゃった、というのは土屋クンの弁でしたが、文部大臣も視察に来たって言うから、やっぱりスゴイ学校になっちゃったんでしょうね。地域開放型というのもいい試みだと思います。おぉい、在校生諸君、しっかり勉強しろよ、オレ達みたいになるなよ(^^;;

 で、見学のあとは懇親会。同級生200名ほどのうち40名近くが集まったから、まあまあかな。しかし残念なことを聞いてしまいました。仲の良かった幸久君が死んでいました。私がバスケット部の主将をやっていた時のメンバーで、勉強も教えていたせいかなついてくれていました。私が実家から離れて生活していた時も、よく訪ねてくれていたようで、親父と話し込んでいたと聞いています。中学を出てすぐ大工になって、私の家を造るんだと言ってくれていましたが、私は勝手に他の大工で実家と現在の住まいを造ってもらいました。2年前に会った時も、もう一度バスケットコートに立とうと言ってくれたんですが、それも果たさず仕舞。2月に屋根から落ちて亡くなったと聞きました。約束を何一つ守ってやれず、残念です。
 懇親会の始めには幸久君を含めて亡くなった6名に黙祷しました。これから同窓会の度に増えていくんだろうな。出席してくれた67歳の恩師は「オレよりも先に死ぬな」と言ってくれましたが、こればっかりはどうも。

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記念写真の前にパチリ、みんなフケたなあ

 フケたなあ、と言ったって51歳だもん、当たり前ですよね。なぜか3〜4人は名前も顔も判らんヤツがいるのが不思議。相手も私のことをそう言ってるかな。いやいや、そんなことはない、私を知らんヤツはモグリだぁ、、、と思う。


木村孝夫氏詩集『封印』
fuin
2000.6 福島県石川郡浅川町
内田文庫刊 2000円

 何を

何を
思い煩っているのか
人は生きて八十年
大股で歩くと
もうそこにある

心が騒ぐ
それが生きている証しと
小舟に揺られながら
旅するのもまたいい
目を細めると
微かにゴールが見えるではないか
生きるための戦いとは
気負いをすてて
笑いながら歩くこと

それだけで
心が落ちつくから
不思議だ

 「大股で歩くと/もうそこにある」というフレーズに惹かれました。確かに大股で早足で歩いてきたような気がします。もっとゆっくりやればいいのに、と思うのですがなかなか出来ません。習慣になっているんでしょうね。そんな私たちの生き方を「気負いをすてて」と言われると、そうなんだよな、と思ってしまいます。自分の足元を見よ、そんなことを教わった作品です。


詩歌文芸誌GANYMEDE19号
ganymede 19
2000.8.1 東京都練馬区 銅林社刊 2100円

 ブルージュの日傘/宗 美津子

ブルージュの日傘くるくるまわすと
レースの隙間から光が振りかかる
近くの郵便局へゆくだけなのに
ほんのり明るい傘のサークルに心やわらぐ

オランダ地方へ旅した妹が
母のために買った高価なブルージュレースの日傘
  <お姉さんがもらっていいわよ>
形見分けのときの妹からの心譲りの品

誰でも持ってる貴重な一編のドラマ母もまた
劇場公開することもなく
主役を演じて
だまって幕を閉じて
哀歓すべて家族の胸の中
ほろほろとほろほろと光の中に舞って肩の上

  <差すのもったいない>
口ぐせの言葉言いながら
スーパーへ差していったかもしれない
郵便局へ差してゆく娘と似た者親子
笑いがでてくる
母と会ってる昼下り
日傘の中

 亡き母上への思いが痛いほど伝わってくる作品です。最終連にそれがすべて現われています。「笑いがでてくる」というフレーズの中に含まれる作者の感情を思います。「母と会ってる昼下り/日傘の中」には生きている作者と亡くなった母上との無言の話し声が聞こえてくるようです。いい関係の母娘だったんだろうなと思いました。
 私の勤務する工場の昼休みは、構内に日傘が溢れています。女性のほとんどが日傘を差して食堂に向かいます。それは、むさい男どもの中にあって、清潔感に溢れていて、いつも好ましく見ていました。この作品を拝見してから、ちょっと見方が変わるかもしれませんね。この作品のような由来で差している人もいるんじゃなかろうか、と。日傘のひとつひとつに物語を感じるかもしれません。



 
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