きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり
nasu
新井克彦画「茄子」




2000.9.23(土)

 『山脈』の月例会がありました。いつもは横浜・野毛の「今福」という北海道料理屋でやるんですが、祝日でお休み。近くにある別の店に行きました。ところが、高くなったんで驚きましたよ。
 以前も何度か使っていた店で、1000円程度の定食を頼んで酒つけて、3000円程度であがっていました。今回も事前に予約を入れたんですが、ちょっと様子が違っていました。何人来るんだ、料理はいくらのにするんだ、と結構細かい。しかも5000円の宴会で予約してほしいとのこと。あれあれ、と思いましたが予約してしまったんです。行ってみて理由が判りましたよ。改築したんです。
 確かに料理は立派になったし、部屋はきれいで良かったんですが、我々はそんなこと気にしない種族なんですね。そこそこの料理で酒があって、安くあがるに越したことはない、という貧乏詩人の集まりなんです。10名で予約して8名しか来なくて、結局2人分を皆で分担して、エライ高いもんになってしまいました。お集まりの皆さん、ごめんなさいね。今度はその店には行かないからね。

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勘定を考えて仏頂面して焼酎を割る村山精二(左)と知らん顔の三上透さん(右)

 二次会はいつもの、京急日の出町駅前・居酒屋「登喜」に行きました。オヤジが巨人ファンというのが気に入らないけど、奥さんなのかな、女の人はいい人で、肴も気に入ってます。今度は「今福」が駄目だったらここにしよう、一同合意。試しに「何時からやってるの?」と聞いたら、なんと午前11時からだって! それじゃあ早い時間から呑めるワイ。今日一番の、いい話でした(^^;;


月刊詩誌『柵』166号
saku 166
2000.9.20 大阪府能勢町
詩画工房・志賀英夫氏発行 600円

 コウスケ・五歳/南 邦和

  ウソ

折れた煙草の吸殻で‥‥ではなく
コウスケのウソは
目尻の笑い皺で すぐわかる
五歳の智恵のありったけで
コウスケはジジを試そうとする
髪を洗おうとするジジに
ボクもうさっき洗っちゃったよ
と ケロッとして言いきるしたたかさ
きのう ウチュウぐらいの金魚掬ったの
コウスケのウソには罪がないが
世間の大きなウソに気付かせるために
ホントのことを伝えるのはむつかしい

 「コウスケ・五歳」という総タイトルのもとに「ウソ」「ブランコ」とふたつの作品があり、そのうちのひとつを紹介しています。一般に親が子を書いた作品、祖父母が孫を書いた作品はメロメロになって失敗作が多いと言われていますが、この作品はそうではありませんね。「世間の大きなウソに気付かせるために/ホントのことを伝えるのはむつかしい」というフレーズで、孫を通してちゃんと社会を見ているからです。こういう作品を書く場合の、ひとつの視点だと思います。
 それにしても「きのう ウチュウぐらいの金魚掬ったの」というデフォルメはすごい。私自身のデフォルメで一番大きかったのは冨士山を蹴っ飛ばして/太平洋に沈めたい気分だ≠ニいうものです。それに比べると「ウチュウぐらいの金魚」ですからね、負けました。コウスケ君は大物になりそうです。


詩誌『回転木馬』108号
kaiten mokuba 108
2000.9.20 千葉市花見川区
鈴木俊氏発行 非売品

 母の手紙/川原公子

前略ごめん下さい
皆皆様ご機嫌如何ですか
何かと取り紛れて
すっかりご無沙汰してしまいました
こちらもお蔭様で皆元気です
お目もじの上お話したき事山山です
取り急ぎご機嫌伺いまで
            あと文

待てども届かない「あと文」
ご無沙汰の釈明ばかりの
ついに言葉にならなかった
日夜の思い

 日本のお母さんだなと思いました。自分のことはさて置いて相手を気遣う、一歩下がって相手を立てる、そんな良き時代の日本のお母さんを思い出しました。それに、これだけの文章を書けるお母さんというのは、その時代としては相当教養のある方だと思います。死んでしまいましたが、私の母など手紙一本書けませんでしたからね。そんなお母さんを見守る作者の優しい気持ちにも感動します。
 ちょっと話はズレますが、この作品では日本語の勉強もさせてもらいました。まず「お目もじ」。言葉としては聞いたことがあります。しかし意味を深くは知りませんでした。辞書にあたると「御目文字−お目にかかることをいう女性語」(小学館ブックシェルフ・ベーシック)とありました。文字≠ニいう字が出てくるとは思いもしませんでした。それに、女性語だったんですね。男性も使っていたような記憶があります。間違いだったんですね。
 そして「あと文」。前出、小学館ブックシェルフ・ベーシックと広辞苑、三省堂明解漢和辞典を調べましたが、ありませんでした。小学館ブックシェルフ・ベーシックには後文(こうぶん)≠ニして「あとの部分に記されている文章」とありました。作中の意味からもこれが正解なんでしょうね。日本語は本当におもしろい!



 
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