きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
新井克彦画「茄子」 |
2000.9.30(土)
新宿・紀伊国屋画廊で10/3まで開催されている「人形半世紀」という展覧会に行ってきました。浜いさを、四谷シモン、辻村寿三郎氏ら10人の人形作家による展覧会です。『山脈』の表紙絵をお願いしている浜さんの招待によります。ちょうど筧代表も一緒になって、四谷シモンさんたちを紹介してもらいました。四谷さんの自画像とも言うべき顔の人形がありましたけど、ご本人にそっくりでしたね。
こうやって10人もの作家の作品を見ていると、浜さんの作品は他の方とは大きく違っていますね。抽象なんです。他の人形はひたすら具象を求めているようですが、浜さんだけは抽象。ですから、タイトルのつけ方も違います。詩的な、考えられたタイトルになっています。そんなところが『山脈』とも波長が合っているのかもしれません。
新宿の後は五反田にある立正大学に行ってきました。日本詩人クラブ会長の鈴木敏幸さんの招待により、第2回「天と海忌」という会に出席しました。立正大学の名誉教授でもあった詩人・浅野晃を忍ぶ会です。原史郎さんの講演がとても良かった。
421教室で講演する原史郎氏 |
なつかしいですね、教室ですよ、教室! 何十年ぶりかで教室の雰囲気も楽しみましたよ。原さんには9/9に行われた日本詩人クラブの例会でもご講演願ったのですが、相変わらずのユーモアを交えたお話で、熱中しました。浅野晃の言っていた「形式と様式は違う」ということを中心にお話しになり、参考になりました。個が突出するのではなく、集団が個を育て上げるという浅野の思想も紹介され、これは大いに満足した話でした。村なり文学者集団なりが個を育て、押し上げていくものだという考え方は、自治会や詩人クラブの理事をしている身としては励まされました。もちろんこちらが押し上げてもらう側ではなく、誰かを押し上げていくという立場でね。押し上げた誰かが成功すれば、それはこちらの成功という考え方に大賛成です。
大雨の中、60名ほどの人が集まり盛会でした。第1回は北海道でやったそうで、東京では今回が初めて。北海道穂別町、東京・立正大学が手を結んで、今後は交互に開催されるようです。穂別も1995年に行ったきりですから、また行きたいものだと思いました。
○詩誌『猗』10号 |
2000.10.1
埼玉県所沢市 書肆芳芬舎・中原道夫氏発行 500円 |
新我流生物学入門(続)/門林岩雄
シカノクニデハ
ダンジョベツベツニクラス
シカシニンゲンイツモベタベタ
コレヲイッテハミモフタモナイ
アタマヲサゲテセンベイモラオウ
確かに奈良公園では、鹿は「ダンジョベツベツニクラ」しているように見うけられます。中に1頭のオスに5〜6頭のメスというハーレムもあったようですが、記憶は定かではありません。それに奈良公園には若いカップル、熟年の二人連れというのが多く「ニンゲンイツモベタベタ」と見られても仕方ありませんね。女子中学生の集団、なんてのもありますが近くには必ず男子中学生もいて、これは「ニンゲンイツモベタベタ」の予備軍。
「新我流生物学」の生物学たるところは最後の2行でしょうね。そうか、鹿ってそんなことを考えて頭を下げているのか、と納得させられます。50円だったかな、100円だったかな、忘れましたが煎餅を買って与えたことがあります。小さい鹿にやろうとしても、大きいのがすぐに寄って来て、駄目なんですね。オマエライイカゲニシロ!と言ってやりましたよ。フン、という顔をされてしまいましたが…。
○木全圓寿著『不見陸奥噺』 |
1989.3.1
青森県弘前市 緑の笛豆本の会・蘭繁之氏発行 非売品 |
知る人ぞ知る、名古屋の作家・木全圓寿さんの10年ほど前の著書です。残念ながら数年前に亡くなっていて、私もお会いしたことはありません。「天と海忌」で筧代表よりいただきました。この本の特徴は何と言っても小さいこと。縦95mm、横75mm、厚さ12mmほどしかありません。しかし中身は濃いんですよ。
まだ行ったことのない陸奥の噺を考察する、というのが本のタイトルです。江戸時代の噺を5編集めてあります。その中で私の興味を一番ひいたのは、安寿と津士王の続編。安寿は丹後の人買いに殺されるのですが岩城山にまつられます。そこで岩城山に入る人は丹後に関係があるかどうかと詰問されるというもの。丹後の人が岩城山に入ると安寿の霊が怒り、風雨強まるのだそうです。人買いとは関係のない丹後人には気の毒としか言いようがないんですが、そんな続編が載せられていることがすごいと思います。江戸人の想像力の豊かさを知らされます。
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