きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
新井克彦画「モンガラ カワハギ」 |
2001.1.21(日)
日本詩人クラブ三賞の選考委員会がありました。今回は会員、会員外に依頼した推薦著書、上位10冊と選考委員推薦による数冊を絞り込んで、選考対象著書を決定する大事な委員会でした。結果は以下の通り(敬称略)。
第34回日本詩人クラブ賞
丸山勝久詩集『雪明かり』 溝口
章 詩集『禁忌の布』
こたきこなみ詩集『星の灰』 山口惣司詩集『心事片々』
杉谷昭人詩集『小さな土地』 以倉紘平詩集『プシュパブリシュティ』
秋野さち子詩集『夕茜の空に』 松尾静明詩集『都会の畑』
木川陽子詩集『芽キャベツ』 大塚欽一詩集『蒼ざめた馬』
南 邦和 詩集『ゲルニカ』
選考委員推薦
小山和郎詩集『白地図』 星野元一詩集『ゴンベとカラス氏』
第11回日本詩人クラブ新人賞
藤森里美詩集『湖國抄』 秋元
炯 詩集『血まみれの男』
清岳こう詩集『創業天明元年ゆきやなぎ』桜井さざえ詩集『人の樹』
牛嶋敦子詩集『緯線の振子』 江口
節 詩集『鳴きやまない蝉』
鈴切幸子詩集『街はきらめいて』 房内はるみ詩集『フルーツ村の夕ぐれ』
北村 真
詩集『始祖鳥』 アーサ・ビナード詩集『釣り上げては』
山本倫子詩集『以後無音』
選考委員推薦
馬場晴世詩集『ひまわり畑にわけ入って』 岡田
響 詩集『わが煉獄の主題にむけて』
佐々木朝子詩集『砂の声』 山本純子詩集『豊穣の女神の息子』
伊藤公成詩集『冬瓜のある風景』
第1回日本詩人クラブ詩界賞
佐川亜紀著『韓国現代詩小論集』
中村不二夫著『現代詩展望U』
石原 武
著『遠いうた−マイノリティーの詩学』
詩界賞の候補著書はもう少しあったんですが、メモが手元になく、判っている範囲で書きました。正式な書面が出てきたら、日本詩人クラブのHPでつけ加えます。最終選考委員会は2月25日、どんな結果になるか楽しみです。しかし、私は結果はあまり重要視していません、、、って、新人賞の選考委員が言うのもおかしいですけど(^^;;
個人的には、ここに挙がってくることが大事だと思っています。ここから先は運が主ですから。本音は、みんなに賞をあげたい!
○詩と童謡誌『ぎんなん』35号 |
2001.1.1
大阪府豊中市 ぎんなんの会・島田陽子氏発行 400円 |
いま なんじ?/島田陽子
マンガよんでても
きになるねん
----いま なんじ?
ゲームしてても
きになるねん
----いま なんじ?
じゅくにおくれたら しかられるもん
アニメはじまったら こまるもん
いま何時ですか?
バス停で
よその おばさんにきいたら
とけい忘れてきたわ やて
わーっ さいていや
今の子どもの世相と、「わーっ さいていや」と身勝手なことを言う子どもの心理がよく出ていますね。思わず笑ってしまいました。そんなこと言うなら、自分で時計持っとけ!
でも、この「さいてい」という言葉は、関東でのサイテー!≠ニいうニュアンスとはちょっと違うかもしれませんね。もっと軽い意味だろうと思います。
それに「いま なんじ?」と聞くのは子どもばかりではありませんね。大人もいつだって、いま何時だろう?と気にしています。あれもやらなくちゃ、これもやらなくちゃ、と時間に追いまくられているのが現状です。「わーっ さいていや」と言われてもいいから、時計なんか放り出して生活してみたいものです。経済、なんてことを考えなければ、いつだってできるんでしょうけどね。
○季刊詩誌『楽市』39号 |
2001.1.1
大阪府八尾市 楽市舎・三井葉子氏編集 1000円 |
『山脈』同人でもある司茜さんの作品特集として6篇の詩が載っていました。女性の機微をうたった優れた作品群です。その中で最も私が気になった次の作品を紹介します。
猿沢池/司 茜
寒い夜
猿沢池のほとりの和菓子屋で
おはぎを
ふたつ買いました
「濡れてはるみたい」と
店のおばあさんが
言いました
ひとと
別れた夜でした。
猿沢池とは、私も大好きな奈良・興福寺のそばにある池のことでよいと思います。姫の伝説のある池と記憶しています。どんな伝説だったかは忘れてしまったんですが…。
この作品のポイントは「濡れてはるみたい」でしょうね。なにが濡れてはる≠フか? そこが非常に気になります。涙? 心? 夜露? まさか、おはぎ?
おそらく猿沢池の伝説と関係あるのかもしれませんね。
作品としてはうまいし、印象に残る詩です。「濡れてはるみたい」をそれほど深刻に考えずに、読者の思った通りに鑑賞すればいいのかもしれません。しかし、仮に猿沢池の伝説と関係があるなら注釈が必要かもしれませんね。あるいは、奈良や関西の人ならすぐに解るのかもしれません。関東でも学識のある人ならすぐに理解できることなのかもしれませんが…。ん? そうやって気にかけさせるのがねらいだったりして(^^;;
○詩誌『RIVIERE』54号 |
2001.1.15
大阪府堺市 横田英子氏発行 500円 |
ちょっと寄り道/滝
悦子
いま乗ったところ
と、打ったメールが
十五分後に電車が着いても
人波をかきわけて
エスカレーターをかけおりて
信号の下で足踏みしていても届かない
無数に飛び交う電波の中で
だれの約束にまぎれこんだのか
どんな誘いにのったのか
私の
たった一行のメッセージが行方不明になる
すぐに 早くに 一瞬に
片手の中の画面を見つめて無言のまま
指先だけが器用に動く
----そんな世界を抜け出して
ラ・マンチャの男を尾けたのか
うっかりタイムトンネルに踏み込んで
忘れていた人に呼び止められたのか
それとも
赤い観覧車のてっぺんで
あくびをしていただけなのか
送信完了のサインを残して
いったい どこまで寄り道したのやら
二十六時間後に
いま届いた!
と、ジョークを連れて返ってくる
滝さんは新同人だそうです。新しい時代の人だなと思います。作品の舞台は携帯のiモードでしょう。意外とこういうことってあるんですよね。私にも経験があります。タネを明かせばサーバーのパンクやエラーだったりしますが、それを「寄り道」ととらえる感覚は新しいと思います。IT時代の感覚を大事にしていってほしいと思います。それと、どんなに時代が変っても、人間の本質はちっとも変らん、という感覚とを持ってもらえるとすごい詩人になりますよね。
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