きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり
kumogakure
「クモガクレ」Calumia godeffroyi カワアナゴ科




2001.11.27(
)

 社員教育を担当している課長がこの暮に定年になるので、送別会が開かれました。教員仲間が20名ほどのささやかな会でしたが、なごやかないい集りになりました。4000人ほどの工場で、教員は50名ほど。実際に活動しているのは30名ほどですから、そのほとんどが集ったと言っていいでしょう。好かれている課長ですから、まったく自主的に集った人たちばかりです。
 実は、この送別会を発案したのは社外の人です。私たちの社員教育の理念、教材を提供してくれているシンクタンクの日本支社長が発案者です。それはいいね、ということになったんですけど、その方はなんと2週間ほど前に亡くなってしまいました。病気の手術後の経緯が思わしくなく、本人もまさか死亡するとは思っていなかったようです。発案者がいないという淋しい会になってしまいましたけど、教員仲間が力を合わせて乗り越えていきたいと思っています。




個人詩誌『伏流水通信』創刊号
fukuryusui tsushin 1
2001.11.25 横浜市磯子区
うめだけんさく氏発行 非売品

 春の向こうに/うめだ けんさく

白い辛夷の花が咲いている
春の日射しが漏れる木立の中にあなたは彳んでいた
人生のずっと先の方に見える不幸が
その花の影につきまとっていて
目に焼き付けられて堆積していく

あるべき日は二度と訪れては来ないだろう
白い花びらの不吉な予感がする
きっとだれもそれに気付かない
春の光に誘われて雲母が満ちているにしても
多分それは一時の気休めにすぎない

 「あるべき日は二度と訪れては来ないだろう」と「春の向こう」を見透かす作者の眼に、詩人の鋭い感性を感じます。暖かな「春の光」を身にまとって、ある種幸せな気分に浸っていても「多分それは一時の気休めにすぎない」と言うのです。甘い、私たちのナマクラな生活態度をガツンと叩かれた思いです。
 作品にはいっさい出てきませんが、今回のテロ事件や報復戦争へのまなざしが底流にあるのかもしれません。世界中を巻き込んでいく「人生のずっと先の方に見える不幸」がうたわれているように思います。読みすぎと言われてしまえばそれまでですが、そんな深さと広がりを感じさせる作品だと思います。



詩と散文・エッセイ『吠』17号
bou 17
2001.11.25 千葉県香取郡東庄町
「吠」の会・山口惣司氏発行 700円

 まあるい地球は/みやうち・さとるこ

まあるい地球が泣いている
放たれた矢は止めどなく
大きな弧を描いて
折れて地球に突き刺さる

突如訪れた哀しみ
そしてそれへの報復
またもや全能の神々を盾に
人間が右往左往し始める

くりぬかれた悪意と殺意は
深く深く日常の中に影を落とし
渺茫たる大海原に漂流し
地球を歪んだものにしてしまう

命の重さや自然を壊す行為は
死者たちの流星となって
青光りを放ち警告しつつ
無慈悲な乾いた歌声となる
「全うな首尾などどこにもない
 全うな不首尾が侍っているだけだ」

痛みを抱いて在るかぎり
まあるい地球は
巨大な涙である

 おそらく今回のテロと、その報復戦争をうたっているのだと思います。「突如訪れた哀しみ/そしてそれへの報復」というフレーズから、まずそれを知ることができます。「またもや全能の神々を盾に」というフレーズでは、宗教戦争の色合いも強い今回の戦争を見事に言い当てていると思います。話題になる流星群さえ、作者は「死者たちの流星となって/青光りを放ち警告しつつ」あるととらえ、なかなか手厳しいと言えるでしょう。
「全うな首尾などどこにもない/全うな不首尾が侍っているだけだ」というのは何かの引用かもしれませんが、いい言葉ですね。「まあるい地球は/巨大な涙である」というフレーズとともに、印象に残る言葉です。詩人が表現しなければならない問題を、真正面から取り組んだ作品だと思います。



詩とエッセイ『焔』59号
honoho 59
2001.11.10 横浜市西区 金子秀夫氏方
福田正夫詩の会・発行 1000円

 おおむらさき/

山国信州は
夏と言えども木蔭は涼しい

物思いにふけり
ただぼんやりとしていると

一羽のおおむらさきがどこからともなく飛んで来て
私の回りをぐるぐると回った

そしてひとときの間私の指に止まり
羽根を休めると

名残り惜しそうにひらひらと
甍を越えて飛んで行った

おおむらさきの姿を借りて
最後の別れに来たのだろう

ふるさとに
母はもういない

 亡き母上への静かな鎮魂歌です。日本の国蝶に指定されている「おおむらさき」を取り上げていることで、作品の格調も高まっていると思います。「ひとときの間私の指に止まり」「名残り惜しそうに」去る姿に、子を思う母親の姿が重なり、胸に熱いものを感じました。1連2行という構成も、最終連で全てを語る手法も奏効していると思います。
 お名前の
は文字コードにはありませんので、「文字鏡」を使い画像で貼り付けています。ちょっと見苦しいかもしれませんがご容赦ください。人名としてはよく使われる文字ですので、早く文字コード化し実装してもらいたいものです。



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