きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり
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新井克彦画「モンガラ カワハギ」




2001.2.24(土)

 横浜詩人会の総会がありました。『山脈』の例会とかち合っていて、1時間ほどしか出られませんでしたが、出席しました。総会に出席するのは会員の義務ですからね。『山脈』からも私を含めて5人が出席していて、4人は同じように1時間で退席しました。本当は懇親会も出たかったんですが、みんなでそうもいかないね、と言いながらタクシーに乗った次第です。

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2001年度横浜詩人会新役員の皆さん(一部)

 総会で承認された新役員です。私も当選していたようですが、日本詩人クラブとの兼任はちょっと無理なのでお断りしたいきさつがあります。ですから、この中の一名は私のせいで役員をやらざるを得ないハメになったわけです。そんな意味でも、今回の役員には申し訳ない気持があって、できるだけの協力はしようと思っています。もともと微力ですから、たいした役には立ちませんけどね(^^;;

 後髪を引かれる思いで会場の馬車道十番館をあとにしました。『山脈』の例会は盛会でしたよ。先月は雪で、6名しか来れなかったんですが、今回はその反動でしょうか、13名も集まって指定席はいっぱいになってしまいました。それはそれで良かったんですけど、私は苦しかったですね。禁酒6日目。なんとか禁酒には慣れてきましたが、『山脈』はちょっと違う。過去20年近く、呑まないで参加したことはなく、一番うまい酒が呑める集まりですから、断わるのに苦労しました。皆さんは嫌味タラタラ、酒がうまい、と私に無理にすすめるし(^^;;

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呑みたかったなあ

 我ながら、立派なモンだと思いましたね。一滴も呑まずにつき合えるなんて! しかも二次会までつき合っちゃいました。よっぽど二次会は断わろうかと思いました。でも、亡くなった手塚久子さんが烏龍茶で二次会も三次会もつき合ってくれたことを思い出して…。あの人はえらかったと、ようやく判りました。クソッ、来月はせいせいと呑むゾ!



詩と散文・エッセイ誌『吠』14号
bou 14
2001.2.20 千葉県香取郡東庄町
「吠」の会・山口惣司氏発行 600円

 アレルギィ/山口惣司

セロハンの袋から
飴色の旨そうなものが覗いている
白い粉が吹いて………
乾燥芋だ! と認知した途端
私の胸に拒否反応のようなものが疼く

金輪際私は手を出さない
戦時中の我が家の庭に干してあった
堅くて不味い乾燥芋の一切れを
手にした痩身の兵士は
裏庭の工場で上官の鉄拳制裁を受け
血まみれになって倒れていた

娘は自分の買ってきた土産に
手を出さない私に不満顔だ
ソンナ昔の忌マワシイ記憶ナドと
妻は笑って取り合わず
歯の無い九十の義母と
むちむち ちょびちょび
嘗め回している

白い馬が通ると顔を背けた
決して許すことの出来ない
倣岸な亡霊が今でも騎乗している
そのお方の命令でもあるまいが
山という山に杉苗が植えられた
人一倍敏感に杉の花粉症に悩むのは
私の反抗精神
(レジスタンス)に起因するのだろうか

家族が乾燥芋を楽しむ脇で
私は何の脈絡も無く
不器用に
幾つもの
古い記憶を飲み下そうとして
喉の痛みに堪えるしかない

 何度か書いていることですが、このホームページでは主宰者の作品はなるべく外すようにしています。同人誌に載せられている返信を見ると、主宰者の作品への批評が多く、同じことを私がやってもあまり意味がないと思うからです。主宰者以外の作品について感想を述べた方が主宰者も本望とするのではないか、という思惑もあります。
 その禁を破って、今回は主宰の山口惣司さんの作品を紹介しました。タイトルの「アレルギィ」があまりにも決まっていて、思わず唸ってしまったからです。「花粉症」と「古い記憶を飲み下そうとして/喉の痛みに堪えるしかない」という「アレルギィ」の同一性の見事さ、これには脱帽しました。そして、こういう作品はこれからも書いてほしいと思いました。戦後生まれの私にとって、「山という山に杉苗が植えられた」いきさつの知りませんし「上官の鉄拳制裁」も知りません。歴史を残すのはその歴史を体験した人にしかできない、という思いを、この作品を通じて改めて思った次第です。



神山暁美氏詩集『糸車』
itoguruma
2001.3.10 東京都東村山市
書肆青樹社刊 2200円+税

 柘榴

「信じよう」とする心の動きは
「疑い」から生まれる

たったひとつ掛けまちがえた
ボタンのずれの隙間から
容赦なく風が吹き込む

影が方向を変えて伸びる
時間が止まった陽だまり

丸く納められた過去から
真実がはじけ
嘘が無数にこぼれ落ちる

 第1連が素晴らしいと思いました。「疑い」があるから「信じよう」とする心がある、というのは、なるほど、その通りだと思います。「疑い」がなければ「信じよう」なんて気持すら出てきようがありませんからね。そこに着目した眼力はすごいです。
 最終連の「嘘が無数に」という言葉にひっかかって、タイトルの「柘榴」との関連を考えてみました。それには「柘榴」にはどういう意味があるのかが重要だろうと思い、辞書で調べてみました。柘榴本来の説明の他に、次のような意味も載っています。
(実が熟すると口を開けるところから)ばか。あほうをいう。¥ャ学館 BookShelf Basic
 この意味は、広辞苑には載っていませんので一般的な意味かどうか不明ですが、この作品には近いものを感じます。ばか。あほう。≠ニまでは言わなくとも、猜疑というような意味で考えてもいいのかもしれません。私はそんなふうに取ってみました。
 第1詩集だそうですが、詩集全体を通してかなりの力量を感じます。「謀反」「同級生」「家族」なども秀作です。「五月の風に」という作品ではもう 引き算しかない私の時間を≠ニいうフレーズが出てきて、これだけでも詩史に残る言葉と言っていでしょう。ご出版をお祝いし、今後のご活躍を祈念しています。



 
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