きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり
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新井克彦画「モンガラ カワハギ」




2001.5.26(土)

 『山脈』の例会+108号合評会が横浜でありました。筧さんは昨日まで4日間の検査入院をしていましたが、元気にご出席になりました。酒もお呑みになりました。途中で烏龍茶で一息つきながらでしたが、まずはみんなと一緒に呑めるまでに快復していることが判り、一安心しました。

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合評会は真剣です

 合評は比較的褒められた作品が多く、こちらも良かったナと思っています。年に2回ほどしか合評会はありませんけど、それが同人の血肉になっていることと、月例会の四方山話も無視するわけにはいきません。むしろ私はそちらから受ける影響の方が大きいと思います。
 先月は大事をとって二次会に行きませんでしたが、今回はちゃんと行きました。ボトルが残っているか心配でしたけど、ありましたね。我々の顔を見るとすぐにボトルが出てきて、「いつもの」と言うと好みのつまみが出てくるところなんか、感激モノです。二次会ですから、たいした金を使うわけじゃないけど、商売人の誠意が見えて、いい店だと思っています。店の名は京急日の出町駅のそばの「登喜」です。良かったら行ってみてください。



詩誌『きょうは詩人』1号
kyo wa shijin 1
2001.5.6 東京都武蔵野市
きょうは詩人の会・鈴木ユリイカ氏発行 500円

 鳥を追って/房内はるみ

人は鳥からことばをおしえられた
そういって 男はふかい語源の森へ旅だった
一陣の風が 森をふるわし
心房のように 伸縮する葉むらのなかへ
彼はのみこまれていった

チッチッ チルーチルー ピューピューキリキリ
翼をもたない人間は
自由に飛びかう鳥に思いをのせる

カルルー カルルー
カラ カリ カム カミ
世界中のカミ(神)ということばは
カルルーとなくウミアイサの鳴き声からきているのではないか
とある日感じた
部屋にのこされた資料のやま
表紙をなぞると ほこりとなった歳月がゆびにつく

彼がもとめていたものは
鳥のこえではなく
詩のようなものだったのかもしれない
何かをつたえたい
人がはじめてそう思ったとき
こころにうまれた ことばではとらえられないもの

ピョコピーピュコピー チッチッツクツクオーシ
国境をこえて飛びかう鳥は
ことばのちがう人々のこころのうえに やわらかく着地する

成長するのに百年
実をつけるのにさらに百年
千年を生きるブナの森で
彼は出会っただろうか
人にはじめてことばをおしえた鳥に
人々のこころのなかにある 詩のようなものに

 「人は鳥からことばをおしえられた=vというフレーズに惹きつけられました。インディアンの言葉であったような記憶もあります。全体にこれがモチーフになっていて、いい雰囲気の作品にし上がっていると思います。「男はふかい語源の森へ旅だった」というのもいいですね。これだけで一篇の詩ができそうです。そして二度でてくる「詩のようなもの」という言葉も、この作品のテーマをはっきりさせていて、イメージの拡散を防ぐ効果もあって重要なものだと思います。
 小柳玲子さんを中心とした新しい詩誌『きょうは詩人』は、全員女性で、今までの詩誌とはちょっと違うゾという感じを受けました。以前、日本詩人クラブの講演で小柳さんがお話しなさった、北森彩子についても連載されるようで、これも楽しみなエッセイになりそうです。



詩誌『花』21号
hana 21
2001.5.25 埼玉県八潮市
花社・呉美代氏発行 700円

 戦々慄々として/佐藤精一

毎日 びくびくと恐れおののく
たいせつな心用意なのだ
小心ではない
注意をはらって慎んでいるのだ

食物はのどに引っ掛けないようによくかみ
偏食にならぬよう栄養に気を配り
歯は手入れを怠らぬように
酒は度を超さぬよう控えめに
排泄は順調か見張り
からだは冷やさぬよう温かく保ち
衣服は寒さ暑さに適するものを
住居は日当たりよく風通しのよいように
腰痛など起こさぬようよく歩き
風邪の流行には人混みを去け
マスクをかけて花粉やウイルスを防ぎ
時々血圧や脈拍血液検査など診察を受け
風や雨雪には足元に気をつけ
道路は左右をよく見て渡り
就寝は戸締り火の始末など
心配ごとは消してじゅうぶん眠り

この世を生きてゆくには
悪いことをしないのはもちろん
数え上げれば
さまざまなことに注意しなくてはならない
ところが
忘れたころをねらって発生する
しまった!とおもったときは遅いのだ
おのれの間抜けをさらけ出しても
始まらない
毎日 びくびくと恐れおののく
肝に銘じておくがよい

 まあ、よくこれだけ書き出したと思うほど、留意すべきことを並べたものです。そこがまずおもしろい。もっとあげれば出てくるでしょうね。しかし悪いことは「忘れたころをねらって発生する」。それを私たちはたくさん経験していますので、おもしろいと言うか、シリアスな気分にさせられます。「肝に銘じておくがよい」なんて言われると思わずドギマギしてしまいますが…。
 もちろんこの作品は表面だけを受けとってはダメで、その裏の諧謔まで読み取らなければなりません。でも現実はもっとおもしろいんですよ。私事になりますが、社員教育の教員もやっています。教育内容はまさにこの作品の通りで、仕事上のミスを減らす考え方を教えています。いろいろな場面を想定して、起こり得るトラブルを考えてもらいます。そのトラブルが起きたらどうするか、事前に手を打っておこうというものです。会社に限らず公共事業の大きなプロジェクトなどではよくやっている手法ですがね。
 ところが、ちょっと考えてもらえば判りますが、そんなことをやっても100%完璧な予防法はありません。人間の智恵はそこまで進化していないんです。自然現象を全て解明できるほどの知識は、残念ながら私たちは持っていません。これから100年たっても1000年たっても、事態は絶対に変化しません。従って「毎日 びくびくと恐れおののく」しかないのです。生徒からそんな質問が出たときには、私はこう答えています、諦めなさい(^^;;
 蛇足ですが、第2連7行目寒さ暑さ≠ヘ原文では寒さ厚さ≠ノなっていました。誤植と思い、訂正してあります。



 
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