きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり
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新井克彦画「モンガラ カワハギ」




2001.6.24(日)

 おらっチに耕耘機が来ました。「ヤンマー歩行型トラクターTB40」というものです。プロの農家になった気分です(^^;; 空冷4サイクルOHVガソリンエンジン110cc・3.6馬力という代物です。うれしいんで写真を載せちゃいましょう!

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ヤンマー農機株式会社パンフレットより

 裏の90坪ばかりの蜜柑畑をツブしたのは、この春でした。その跡は義母が野菜畑にして、恩恵を受けています。でも、80になるおばあちゃんには畝立て作業は無理なようです。私にクワを持って、という話がありましたけど、農業経験も無いし体力も無い、尻ごみしていました。そこでおばあちゃんが打った手というのが、この耕耘機という訳です。これには触手が動かされましたね。なにせ、機械モノにはメロメロ。さっそく運転して、取説も熟読してしまいました。これなら半日もあれば畝立てもできそうです。本来は晴耕雨読が夢だったんですけど、なんか、達成されそうです。でもその前に植物の勉強をしなくちゃネ(^^;;



詩誌『梢』26号
kozue 26
2001.6.20 東京都西東京市
宮崎由紀氏発行 300円

 ガード下/日高のぼる

焼き鳥の匂いにつられカウンターの丸椅子に腰かける
それぞれの人生が表れているような酒の飲み方をつまみにグラス傾ける

赤ら顔のいきなり「酒くれえ」と丸椅子を引き出し座る
酒くさい空気が一瞬張りつめる
椅子の位置を直しながら「煮込みの豆腐だけくれ、俺は歯が悪いんだ」
そしていきなり話しかけている
「カシマもフジタも……」とゼネコンの名をいくつかあげ
「外国でさんざんもうけているからなあ……」
隣の人もそれなりに相づちをうっている
カウンターのなかは何事もないようにてきぱきとこなしている

酒は二四〇円煮込み四二〇円
通路に面してビールケースをテーブル代わりに飲んでいた人
「トイレどこですか」と声をかけている
カウンターから大きな声で「パチンコ屋」

仕事帰りにふらり 立ち寄り
ひとときの酔いを楽しむ
風がまといつき吹きぬけていく

 ガード下の呑み屋というのは私も好きで、よく呑んでいます。しかし、ここに表現されたような場所ではなく、有楽町のガード下ですからネクタイ族ばっかりですね。東京でも、ここに表現されたような場所は他にもあるんでしょうが、どこにあるか判りません。横浜にも大阪にもあるようですが、それもよく知りません。従って有楽町ということになりますが、やはり「それぞれの人生が表れているような酒の飲み方」をしている場所に行ってみたいですね。
 パチンコ屋のトイレを堂々と自分の店のものとして使う図太さ、あこがれますね。そして作者の鋭い感性を「風がまといつき吹きぬけていく」というフレーズで感じます。その通りなんです。有楽町であっても、なぜかガード下というのは風がまといつき、一種の匂いがあるんですね。ガード下だから空気が溜まりやすいせいかもしれませんけど、どうも違うように思います。
 図太い亭主、図太い客、でもなぜかほほえましくて、心が洗われる思いをした作品でした。



詩誌『青い階段』67号
aoi kaidan 67
2001.6.10 横浜市西区
浅野章子氏発行 500円

 坂の途中の家/浅野章子

野毛山動物園の前を抜けて西戸部の坂を
下り始める
今ほど家が建て込んでいなかった頃
坂の中腹には 
ショウシャ
ほど好い間隔で瀟洒な家が並んでいた

あの家なのと 突然その人が言った
林芙美子の文学に傾倒していた当時の私に
自分の恋の悩みを書いた手紙を
その作家に送って欲しいと渡された
あの家にはもうすぐ彼の妻が船で
本国から来る

そんな話を坂の途中で見晴らした
天気のいい日 で
物語はどうなったか
やがて芙美子が急死したニュースを
新聞で知った
栄養教室で隣だったその人とは
講座が終って再び会うこともなかった

その家がどこにあったか
本当のことだったのか
だらだらと下がった坂の底のような
そんな話は珍しくもなかった

急坂がつきあたる
水道道のその坂
あえぐように上ると芙美子の時代の
苦い女の吐息がその狭い空に
たばこのけむりほどにむせるのだ

 「そんな話は珍しくもなかった」というフレーズから急に視界が広がったように思いました。「芙美子の時代の」背景を思い出して、そうだったな、という思いを新たにしています。今のようなアッケラカンとしたものではなくて、もっとジメジメとしていたように思います。そして「そんな話は珍しくもなかった」のです。
 坂と「狭い空」という対比もうまいですね。坂を上っていくと、どんどん空が近づいてくるようで、「狭い空」という実感があります。時代背景と土地をうまく結びつけた作品だと思いました。



詩と批評誌『岩礁』107号
gansyo 107
2001.6.1 静岡県三島市
岩礁の会・大井康暢氏発行 700円

 悪癖/市川つた

 2

外出するときは必ず
これが最後かも もう会えないかも
ぢゃあ元気でね と出掛ける

見送るときは必ず
これが最後かもね もう会えないかもね
気をつけてねと送り出す

馬鹿げていて
縁起悪くて
それでももしやと笑顔をして手を振るふたり

そしてただ今と当たり前の顔をして帰ってくる
だから出掛ける時も送り出すときも
きげん良く笑顔をする

出掛けるのに渋い顔をしたり
見送るのに仏頂面をしたりしない
今日も平穏なふたり

 「悪癖1」というのは、ホームレス願望のご主人を題材にした作品、そして2がこの作品です。ご年配のご夫婦と拝察しますが、人生の重みを感じさせますね。こんなふうに言えて、しかも「今日も平穏なふたり」と言えるまでにどれ程の時間がかかったのか、想像に余りあります。しかし、こう言えるほど長生きできみことは羨ましいことでもあります。最近、知り合いが50代初めで何人も亡くなっていて、そんな思いをしています。この爽やかなご夫婦がいつまでもお元気でいらっしゃるよう、願わずにはいられません。



 
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