きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
新井克彦画「モンガラ カワハギ」 |
2001.7.11(水)
仕事が終ってから家電量販店に行って、カセットテープレコーダを買ってきました。先日の日本詩人クラブ理事会で購入が認められたものです。例会や講演会で録音して、テープ起しのあとに機関誌「詩界」や「詩界通信」にダイジェストを載せなければならないのですが、今までは個人の機器でやっていたようです。今年と来年は私も編集長の立場で録音しなければならないことになり、個人的に買うつもりでいましたが、ふと考えると、クラブの備品として持っていた方がいいんではないかと思い至りました。自分の腹も痛まないしネ(^^;;
安いのはそれこそ3000円以内で買えるんですね、驚きました。でも理事会には2〜3万円と言っておきましたので、その範囲で探すと、何と最高級の部類が買えるんですね。当然、それを買っちゃいました(^^;;
私も多少の経験があるんですが、テープ起しというのは音質が勝負です。音質が悪いとすごい苦労をします。音質の決め手は、良いテープレコーダとマイク。内臓マイクは基本的にはダメです。本体のモータ音がノイズとして録音されてしまうことや指向性の関係から、外部マイクが有利です。で、外部マイクも買っちゃいました(^^;;
いずれもソニー製で、本体2万円、外部マイク5000円で、私が提示した金額のちょうど真ん中になりました。この2年間は、例会担当理事と私の間を行き来するようです。さっそく「日本詩人クラブ」とテプラーで貼っておきました。これでクラブの備品は、4年ほど前に、これも私が買ったパソコンとともに2点になりました。ペンクラブの備品に比べると、本当にささやかなものですが、いかにも法人格の団体のようで、うれしいです。
○詩誌『飛天』21号 |
2001.7.7
東京都調布市 飛天詩社(代表・磯村英樹氏)発行 500円 |
どうぞお大事に/工藤富貴子
じょうだんじゃない
あなたが片足を失ったのは御自分の所為(酔払運転)
多種類の薬が必要なのも今までの生活の所為(アル中からの肝炎等)
それなのに
二週間に一度ため息をつきながら入ってきて
この生活がいかに大変か、しんどいか、お前らにわかるか?
そこを十分に理解して親切にしてくれ
ときには手を握って励ましてくれ……
あげくに、今日はきれいな若い子はいないのかって
ここはキャバレーでもアルサロでもありません
薬の飲み方 薬の作用
副作用の心配までしているのに
いくら障害者の老人だからって
私はあなたのホステスではないのです
国からお代はいただいていますが
あなたからは一銭もいただいておりません
さあて
営業上のことばは大きな声で
どうぞ お大事に
気をつけて帰ってね
次回もお待ちしております
実際にこういう人がいるんでね。私も小さいことながら、経験しています。しかし、これに関連して、以前から弱者が逆の差別をしているのではないかと考えています。弱者を保護することは強者の義務で、それに反することは何がなんでもいけないこと。弱者と強者間でトラブルがあった場合は、強者のミスとされること、これらがなかなか納得できないでいます。痴漢騒ぎがあとを断ちませんが、犯罪者扱いされる強者は本当に加害者なのだろうか。弱者とされる女性が言うことだから正しくて、男が悪いに決まっているという風潮を感じています。ですから、小心者の私は、混雑した車内では若い女性のそばには近寄らないようにしています。例え女性側の間違いでも、痴漢!を呼ばれたら反論は難しいでしょうから。
この作品のような「障害者の老人」は論外なんですが、意外と多いようにも思います。私自身も大怪我をしたときや病気のときは、この老人ほどではなくとも「そこを十分に理解して親切にして」ほしいと思います。正直な気持です。しかし、それをやったら芯が崩れるような気がして、我慢します。まだ比較的年齢も若いからかもしれません。あと10年、20年経ったらどうなるかわかりませんが…。
それにしても「営業上のことばは大きな声で」と述べる作者は強いし、明るいなと思います。内心はそんなことはなく、それだからこそこういう作品が出来上がってくるんでしょうが、私なんかは怒り心頭して書く気にもならないでしょうね。人間としてのスケールの違いも感じてしまいました。
○詩と童謡誌『ぎんなん』37号 |
2001.7.1
大阪府豊中市 島田陽子氏発行 400円 |
ふたり/島田陽子
おじいさんが
ねるまえに
はみがき して
でんきを けしていきます
せんめんだい
げんかん
キッチン
ガスゆわかしき
おばあさんが
もんくをいいながら
ひとつずつ
でんきを つけていきます
ガスゆわかしき
キッチン
げんかん
せんめんだい
そして
はみがき します
主宰者の作品というのは、いいに決まっているし、どこでも批評の対象になりやすいから、このHPではなるべく避けるようにしています。いい主宰者というものは、自分が対象になるよりも同人の作品を見てほしいと思うものだ、という私の勝手な思い込みもあります。従って、主宰者よりは同人、というスタイルでやってきたのですけど、この作品はどうしても紹介したくなりましたね。
思わず笑ってしまいました。自分の父母を見ているようだし、場合によっては私たち夫婦も似たようなものかもしれません。これはおそらく夫婦間でなければ成立しないでしょう。親子でも兄弟姉妹でもこの雰囲気は出ません。夫婦でしか有り得ないものだと思います。そこを書いているのはさすがですね。島田陽子さんという詩人の視線に、完全に脱帽です。
○詩誌『裳』73号 |
2001.5.31
群馬県前橋市 裳の会・曽根ヨシ氏発行 450円 |
薔薇の声/金
善慶
咲き薫る ばらの花びら
撫でるような 微風に ね
微かに聞える えも言われぬ 音
仄かに 風が誘う ばらの風
笛の音かとまごう ばらの語り
慣性の美の賛辞は 棘になる
美の影の寂寥 燃える香りになる
ただ 静かに 静かに薔薇でありたい。
オレゴンで 始めて薔薇の声を聞く。
「薔薇の声」という作者の繊細な感覚に驚きます。薔薇の花びらの動き、あるいは花びらどうしのこすれ合いかもしれません。そういうところに視線と聴覚が働くというのは、私には無いものだけにすごい感覚だなと思います。
技術的にも最後の2行だけに読点があるというのは、かなり計算されたものだと言えるでしょう。「ただ 静かに 静かに薔薇でありたい。」というところで、それまでの行をまとめて区切っています。そして最終行。ここで「オレゴン」という具体的な地名、しかも日本ではないという位置を示し、読者に存在感を与えていると思います。短い作品ですが、なかなか巧みで教えられることが多くありました。
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