きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり
mongara kawahagi.jpg
新井克彦画「モンガラ カワハギ」




2001.8.13(月)

 9日間に渡った私の夏休みも昨日でおしまい。箱根や茅ケ崎、日本記者クラブに行った程度でしたが、いただいた本は読み終わって、昨日は半日ほど余裕が出るほどで、まあまあ良かったかなと思っています。出かけた人に厭味を言うつもりはないけど、家にいるのが一番。10年使っても飽きのこない書斎と、素晴らしい詩集をたくさん読んで(厭味じゃないよ(^^;; )、充実した夏休みでした。
 連休明けの初日は、仕事ものんびりしたものでした。なんせ課員の半分、30人ほどがまだ休んでますからね、今日は馴し運転というところです。毎日がこうだと最高なんですけどね。



詞華集ポイエーシス2001『新生』
shinsei
2001.8.1 東京都練馬区 銅林社刊 3500円+税

 水車/名古きよえ

林のなかを小川が流れ
その水を受けて 古い水車がまわっている
キーッときしみ
受けては流す水
昔ながらの早さで まわっている

中をのぞくと 薄暗いなかに 母がいた
(また蓬餅をつくってくれるの)
母はちよっと振り向き うなずいた
黄色い八重山吹が水車の水しぶきを受けて
金色に咲いている

(次はね 北村さんの番
 夕方には空くといってきて)
母がいつものようにわたしにいった
五軒の家に使われている水車
休まず米や黍をふんでいる
わたしは林を歩いていった
向こうから透けたように
紫色の着物を着た姉がやってきた
(わたし このごろ思うの
 あなたに生かされているのだと)
すると姉は首を垂れて草むらヘ消えた
我に返ると めずらしく
卯の花が群がってさいていた

ピクニックの人たちが数人
「水車はどこですか」
と 聞いた
「もう少し 行くと まわっていますよ」

自然のめぐり
古い水車のめぐり
それぞれが くるくるまわる
わたしのなかで二っの輪がまわる
土の匂う足もとを
すかしてみると薄い扉が
先のほうへ幾重にもひらいていた

 「帰る路」という大きなタイトルのもとに「植物園の森へ」「古い地図」「涙の発見」「炭の魅力」と、この「水車」の5編が収められています。「母」も「姉」も亡くなっていると思われます。「植物園の森へ」の中では「おばさんも 親のない子」になっていて「赤ちゃんのとき死んだ姉二人」「結核で消えるように亡くなった従姉妹二人」というフレーズが出てきて、それとオーバーラップして鑑賞してしまいました。事実がどうかは作品鑑賞とは関係ありませんが、そんな読み方の方が多分、作者の意図に近づけるだろうと思います。
 そういう前提で鑑賞していくと、最終連が良く効いているなと思います。そして総タイトルの「帰る路」。いずれ我々も「先のほうへ幾重にもひらいてい」る「薄い扉」を「すかしてみる」ことになります。それが「帰る路」なんだと思います。でもそれは忌み嫌うものではなく、なにやら懐かしささえ感じるのは、作品の力でしょうね。技術的には( )の使い方もうまく、いつまでも余韻を感じさせる作品でした。



詩誌『木偶』47号
deku 47
2001.8.10 東京都小金井市
木偶の会・増田幸太郎氏編集 300円

 夏蜜柑の落下に関する一考察
        ------増田幸太郎に/中上哲夫

夏蜜柑の実が目の前にぽとんと落ちた
引力のためではなく
熟したからだ

       ------二〇〇一・四・五

 ほんとうに失礼なことなんですが、しばらく笑いが止まりませんでした。二つの理由によります。一つ目は、この作品そのものについてです。「引力」ではなく「熟したからだ」という裏には、合理的な理系の考え方への皮肉が感じられます。もちろんニュートンを念頭においてのことでしょう。万有引力なんて七面倒臭いことではなく、熟したからに決まっているではないか!という開き直りに思わず笑ってしまったのです。
 二つ目は「------増田幸太郎に」という副題にあります。増田さんはこの詩誌の編集者(発行者と書いてないので拘りがあると思います)で、ともかく長い詩を書く方です。今号でも「五月の声」という、実に345行に及ぶ作品をお書きになっています(たぶん、数え間違いはないと思う)。毎号、同程度の作品を発表しているのです。それに対して中上さんは「増田幸太郎の詩は、どうしていつも長くなるのか?」という連載をやっているんです。で、「------増田幸太郎に」という副題ですから、詩はこうやって書くもんだ、と言っているようで、思わず大笑いしてしまった次第です。
 まあ、作品鑑賞にそんな裏など見なくてもいいという意見もあるかもしれませんが、ついついそんな読み方をして楽しんでしまいました。それにしてもたった3行の作品に対して、私もずいぶんと長く書いたものです(^^;;



 
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