きょうはこんな日でしたごまめのはぎしり
murasame mongara
新井克彦画:ムラサメ モンガラ




2001.9.5(水)

 4日〜5日、一泊で湯河原厚生年金会館に行っていました。社内研修です。受講生でもインストラクターでもなく、インストラクターを指導するアドバイザーを、さらに指導する役割です。ややこしくてすみません(^^;
 年に2回ほど研修が行われて、数年前まではインストラクターやアドバイザーという役割だったのですが、ここのところ、そのややこしい立場に立たされています。もう行きたくないと勤労部には言ったのですが、担当者が定年間近で、最後だからという口説きに落とされました。まあ、温泉が楽しみな場所ですから、不満はありませんけどね。
 研修内容は、製造現場で起きるトラブルをいかに早く正確に治すかというものです。アメリカのNASA生まれの手法で、30年ほど前に日本に導入されました。KT法とかATS手法と書けば知っている人もいるかもしれませんね。研修そのものは他の研修に比べると圧倒的におもしろいものです。導入当初は部課長クラスが受講していましたが、その後、現場のオペレーター層に浸透し、現在は大卒の若手技術者を受講生に迎えています。論理を組み立てる作業ですから、さすがに工学部出身の大卒者は理解が早いですね。でも、自分の思考の枠を破れない。トラブル解決も大事ですが、そんな人間の幅の狭さをどうやって打ち砕くか、というところに私は主眼を置くようになってきました。みんな、もっとブンガクやれよ!と言ってやりたいのを堪えながらの研修です(^^;
 でも、個人的にはつまらないですね。どうせなら自分でインストラクションをやりたい。受講生の反応をビンビン感じながら講義を進めるのは、教員としての喜びなんです。みんな給料や出張旅費をもらいながら受講しているわけですから、真剣です。学級崩壊や校内暴力とは無縁の教室です。やる気のない者は去れ!でおしまいです。3000人もいる工場の中から選ばれてくる15人ほどの受講生ですから、変な受講生がいると、送り出した職場が問題視されてしまいます。その上に胡座をかいている私なんか、工場で一番変な奴かもしれませんね(^^;



詩誌『帆翔』24号
hansyou 24
2001.8.31 東京都小平市
帆翔の会・岩井昭児氏発行 非売品

 光/三橋美江

月夜の浜辺を
海に向って
いっさんに駈けてゆく
子亀たちの姿は
光そのものだ

五千匹に一匹の
生存

 子亀の背に光る月の光、美しい光景です。「いっさんに駈けてゆく」姿に生命の躍動を感じ、新しい生命の誕生をほほえましく思い描きました。しかし、そんな甘い見方は終連の2行で見事に打ち砕かれてしまいます。5000匹生まれても、たった一匹しか「生存」できないという自然の過酷さ。そんなことも考えもせず漫然と前半を読んでいた私は、思いきり頭を叩かれたような錯覚に陥りました。
 たった8行の詩
に込められた作者の思いが伝わってきます。「光」というタイトルも、その影を考えさせられ、意味の深いものだと思います。短いが故にインパクトの強い作品と言えましょう。



神崎崇氏著現代詩への旅立ち
gendaishi e no tabidachi
2001.9.4 大阪府豊能郡能勢町 詩画工房刊 2000円

 大阪で発行されている月刊詩誌『柵』に長期連載されていた評論を一冊にまとめたものです。『柵』は毎月いただいていますから、神崎さんのおやりになっている仕事は存じ上げていましたが、正直なところあまりいい読者ではなかったなと反省しています。こうやってまとまった形で読んでみると、雑誌で拾い読みしていたのとは違う強烈な衝撃を与えられました。
 できれば発注して読んでもらうのが一番いいのですが、主題は抒情詩の復権です。戦争の反省の上に立って発生してきた、いわゆる戦後詩。その第一の標的が抒情詩でした。皇国史観の精神的なサポートを戦前の抒情詩が担った、というのが通説になっています。それは違うのではないか、意図的にねじ曲げられたいわれなき抒情詩への攻撃ではないか、というのがこの論の主題であると私は受け取りました。
 そして、現代詩が読まれなくなった理由にいわゆる戦後詩の難解さがあり、それを払拭するには抒情詩の復権しかない。でも単純な懐古で済むはずがなく、それにはどういう視点が必要か…。これ以上書くと神崎さんに著作権に触れてしまいますので止めますが、興味ある論だと思いませんか。現代の詩人が抱えている問題意識への、ひとつの回答例がこの本にはあります。私も個人的に2つ、3つほどのポイントを抑えました。今後の私の詩作や活動への重要な示唆です。ご一読をお奨めします。詩画工房や神崎崇さんへの連絡方法が判っている方はそれを、無い方には私が仲介します。
 
pfg03405@nifty.ne.jp まで。



   back(9月の部屋へ戻る)

   
home