きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり
kumogakure
「クモガクレ」Calumia godeffroyi カワアナゴ科


2002.2.2(
)

 日本詩人クラブの第4回現代詩研究会が開催されました。今回も作品研究。会員・会友12名の作品が討議されました。前回は22名の作品でしたから、かなりシンドかったんですけど、今回は楽勝でしたね。たくさんの方が作品を提出してくれるのはうれしいのですが、やはり3時間という制限では10件から15件ほどが限度です。これ以上増えるようでしたら教室をふたつにするなどの工夫が必要だと思っています。

020202

 ん? この写真、詩人クラブのHPにも使ったかな? 私はプロの写真家ではないので、著作権の問題はあまり考えなくていいでしょう。ご覧のように今回は男性が少ないのが残念。男女半々ぐらいの作品が寄せられるといいのですが…。会員・会友の皆さん、どうぞ気楽に提出してください。



個人誌『むくげ通信』8号
mukuge tsushin 8
2002.2.1 千葉県香取郡大栄町
飯嶋武太郎氏発行 非売品

 クォサン
 具常詩集「人類の盲点で」より

 生と死1

死! お前と私は一つのへその緒から
同日同時に生まれた双子
お前は私からいつ如何なるときも
離れられない一つの影

私はお前と向き合うときでさえ
お前の闇の泥沼におどろき
お前の千尋の断岸に肝を冷やし
あたかも敵にでも会うように顔を背けてしまう

しかし、顧みて思えば
私はお前によっているゆえ
生の明暗とその儚さを知ることができ
生甲斐とその喜びをも悟ることができ
神秘で無限の可能性をも生かすことができた

さらに私はお前との現存の前で
我らを在らしめた実在を仰ぐことができたし
その造花の中の私の不滅を信じることができたし
その永遠の中の生を賞賛することができた

−だれが死を終未であると云うのか!

すべての存在のその表象がいかに変わっても
永遠の中から生まれた存在の終わりはない
死はその永遠への通路であり回路であり
もう一つの新たな生の始まりである

 作者の生と死についての思想が第1連と最終連に端的に示されていると思います。特に「死はその永遠への通路であり回路であり」というフレーズは重要です。遺伝子という形でも言い表せるのではないでしょうか。東洋的な輪廻と言ってしまうには、ちょっと深過ぎる思想かもしれません。
 「−だれが死を終未であると云うのか!」というフレーズにも驚いています。名前だけは存じ上げている具常という詩人の、何がそれほどの強さの根底なのか、興味尽きないところです。



渡辺真美子氏詩集『草という名の女』
kusa to iu na no onna
2002.2.10 千葉県茂原市 草原舎刊 1680円

 花の名

図書館で「高尾山の花」という本を借りてきた
まえから花には過ぎた名前と ひどすぎる名前のものがある
と 思っていた
今日ついに 可愛らしい小花のために 筆をとる


へくそかずら

葉をもむと臭いから「屁糞蔓」ですって
なんでわざわざ 葉をもんで嗅ぐ必要があったか


あかね

こちらは 花ともみえないのに
紅色に染める染料として
根がほめられたから
茜草ですって
根は止血や消炎の薬効もある
ですって
使う使わないは 人間の勝手だけど
ずいぶん ひいきじゃないの
万葉集にまでよまれて


せんにんそう

果実の先につく 銀白色の羽毛を「仙人」のひげにみたてたって
白く さわやかな感じですが 有毒植物ですって
仙人って おじいさんのことよね 気を付けましょう


おにたびらこ

「鬼田平子」って かくんだって「母子草」と
同じ(キク科)で
コンクリートの割れた間や 道路脇のほこりのたまったところなどに
みられますって
ちゃんと 空気を きれいにしてくれているのに
愛とか 尊敬から 遠い感じよ

魅せられし こは鬼の道 入りたるか

 花の名前には疎く、ここに出てくる花がどんなものなのかまったく判りませんが、その花たちへの思いは充分伝わってきます。「今日ついに 可愛らしい小花のために 筆をとる」というフレーズには作者の並々ならぬ決意を感じますが、最終の句を拝見するとそれだけではなさそうですね。「鬼の道」を悪い意味でとるか固い決意ととるかによって意味は違ってきますけど、ここは「魅せられし」ですから後者でしょう。
 森常治さんの解説が素晴らしく、渡辺詩を鑑賞するのに多いに役立ちました。ポイントは「一般のものとは逆に書かれていること」だそうです。普通は「観念を中心に置くことから始め」「作者が抒情をいわば取り締まる」けれど「渡辺さんの詩では散文を詩にする抒情は「浮遊物」のなかに隠されている」そうです。そういう視点からこの作品を鑑賞してみるとよいかもしれませんね。おもしろい詩集です。



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