きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり
kumogakure
「クモガクレ」Calumia godeffroyi カワアナゴ科


2002.2.11(
)

 ここ4、5年、この日は毎年奈良の銘酒「鬼ごのみ」の蔵元に行っていたのですが、今年は仕事の都合で行きませんでした。仕事は予定が遅れて、結局18時の出勤になりましたけど、その時間に帰ってこれるわけもなく、結果的には奈良行きを取りやめて正解でした。でも、徹夜になるかと思った仕事は思いの他はかどって、21時には終了しました。時間をいっぱい儲けた気分になっています。



瀬川紀雄氏短編集『道端に風光り』
michibata ni kaze hikari
2002.1.21 青森県弘前市 路上社刊 1500円+税

 昨年、日本詩人クラブに入会していただいた著者より、初めてお会いした2月例会でいただきました。詩作品もそうなのですが、社会や人間の傲慢さに対する憤りはあるももの、それを声高に主張せず、静かに自説を述べる、そんな雰囲気が伝わってくる作品集です。
 山村の少年がいつの間かお地蔵さんのそばに佇む老人になってしまう、不思議なトーンの「道端に風光り」、駒草を求めて秋田駒ケ岳を目指す「幻の花」、大倉岳への山行を詩情豊かに描いた「半島の薄曇り」、濃霧の秋田森吉山での山岳会メンバーとの交流があたたかい「白い森のいただきで」などは、山への愛着と傍若無人な人間への怒りを静かに訴えた秀作と言えましょう。本の最後に置かれた「部屋」は、それまでの作品から一変して、ある老婦の半生を描いており、まだ
50歳になるかならないかの年齢の著者に、なぜ老婦の心境を詳細に描き切れるのか不思議に思った作品です。これからの可能性を秘めた作品と言えるでしょう。
 小説でもなく、かと言って随想でもなく、おもしろい書き方の作品集です。新しい散文の世界を開く人かもしれません。そして、やはり詩人の文章です。詩心を持った人でなければ書けない文体と思いました。詩と散文の狭間の短編集です。ご一読を薦めます。



村椿四朗氏著『ことばの詩学』
kotoba no shigaku
2001.12.25 東京都新宿区
土曜美術社出版販売刊 2500円+税

 最近、様々な詩人たちが試み始めている定型詩への論が主題となっています。私にとっての定型詩というのは馴染みもなく、進んで作りたいという気もあまりないのですが、詩を考える上では避けて通れないものだと思います。定型詩を考える上で重要と思われる韻についても丁寧な検証がされており、やはり読んでおかなくてはいけない本のひとつだという気はします。
 山田美妙、田山花袋、島崎藤村、岩野泡鳴、薄田泣菫そして福田正夫と、口語自由詩をめぐる詩人たちの群像が洞察された論集だと思います。私にとっては苦手な定型詩はちょっとおくとしても、それら先輩詩人たちの活動が活き活きと描かれていて、よいものを読ませてもらったな、というのが読後感です。空いた時間を見つけてはの読書になって、結局、一週間ほどかかってしまいましたが、読み終わってさわやかな気分になりました。著者の、それら詩人たちへの深い愛情を感じるからでしょうか、勉強させてもらったな、というのが正直な気持です。私の不勉強をまた知らされたことになって、何度でも読み返そうと思います。ご一読を薦めます。



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