きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり
kumogakure
「クモガクレ」Calumia godeffroyi カワアナゴ科


2002.2.15(
)

 日本ペンクラブの2月例会。今日は何が何でも行かなければなりませんでした。わが電子メディア委員会の報告があったのです。昨年11月26日の「ペンの日」に開館した「電子文藝館」のプレゼンテーションをやりました。本当は「ペンの日」にやりたかったのですが、500名も集る中でのプレゼは無理、との判断から今日まで延ばしたいきさつがあります。事前に企画事業委員会の高橋千劔破副委員長と連絡を取り合い、調整したのですが直前で取りやめた悔しさがありましたから、今日は這いずってでも行こうと思いましたね。

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 写真は会場でプレゼをやった画面の紹介ですが、本物は当然インターネットでご覧になれます。このHPにもリンクしてありますから、是非ご覧になってください。
 秦恒平委員長が説明し、それに合わせて私がプロジェクターの操作をしました。プレゼの後は何人もの方からご質問をいただき、かなり反響がありました。
 「電子文藝館」は、日本ペン会員の作品をインターネットで紹介しようというものです。掲載料は取らない替りに原稿料も出さない、読者に課金もしないというシステムです。会員の仕事を日本に世界に公開して、日本の文学の現在を知ってもらおうというものです。すでに初代会長・島崎藤村以来、現在の梅原猛会長までの13名の会長作品が揃いつつあります。もちろん一般会員の作品も続々と出稿されて、当初目標の100編はすぐに達成できそうです。現在の会員、約1900名を網羅するには無理があると思いますが、できるだけ多くの会員にご参加願おうとしています。一般の読者に親しんでいただけることをコンセプトにしていますから、是非おいでください。
 そんなわけで、会員の皆様にはご出稿をお願いする次第です。出稿規定はすでに会報でお知らせしていますが、赤坂の事務局にお問い合わせになっても結構です。もちろん私宛でもOKです。ペンの会員であることを作品でも証明する、そんな使い方をしてくれればいいなと思っています。



季刊詩誌『裸人』14号
rajin 14
2002.2.10 千葉県佐原市
裸人の会・五喜田正巳氏発行 500円

 見る/秋原秀夫

歩きにくい砂浜を
父と母に両手を引かれて歩いた
海も空も灰色で
遠くに工場の煙突があった
足元に打ち寄せる波を見つめていると
自分の体が沖へ運ばれていくようで
急にこわくなって
泣き叫んだ

父と母に連れられて
映画館に入った
山高帽に大きな靴をはいた男が
ステッキをふり回して
おどけていた
観客の笑い声と
フィルムの回る音のなかで
男の奇妙な動きを
見ていた

街角のポストを目指して
ひとりで歩いた
ポストの口には
手が届かない
太い樹のような胴体は
ひんやりしていた
夜はポストのそばで
飾りたてられた電車が通るのを
見ていた

今見ているのは
見馴れた風景だけである

 最後の2行に哀切を感じます。子供のときは何を見ても体験しても新鮮だったのに、今は何も驚くものがない、「見馴れた風景だけである」。そういう風になってしまったなあ、という、いわば嘆きと受止めていいのではないでしょうか。もちろん、見るべきものは見た、という悟りの境地ともとれますが、そうではないだろうと思います。それまでの連では、幼い自己への愛着が感じられて、その反動としての「見馴れた風景だけである」という断定だろうと思うのです。
 作品を拝見していて思ったのですが、こうやってたまには幼少のころを振り返るのも必要ですね。毎日毎日、目の前の仕事に追われて、ゆっくり過去を振り返る時間もありませんが、そうやっていると、何か大事なものを忘れてしまいそうです。そんな思いもこの作品から受けました。



美術雑誌『美術画報』34号
bijyutsu gahou 34
2002.3.1 東京都千代田区  1429円+税
朝日アートコミュニケーション発行

 日本詩人クラブ会員の白倉眞麗子さんよりいただきました。A4・290頁ほどの大冊です。美術雑誌ですから、とてもきれいな本です。中に白倉さんと、学習院の先生だと思いますが、篠沢秀夫教授との対談が載っていました。白倉さんの詩作の内面を知る上では重要な内容です。昨年出版した『ん・ん抄』を中心にした対談になっていました。「まな板文学」を提唱し、育児の時期には自分がベビーサークルの中に入って詩を書いていたという、白倉さんの詩作態度が深く掘り下げられた対談と言っていいでしょう。
 他の頁を見ると、驚いたことに日本詩人クラブの会員が3名も載っているんですね。白倉さんと同じように対談をしていたり、色紙展のインタビューを受けたりと、活躍の様子が判ります。詩は芸術の根源ですから、美術雑誌に載っていても不思議はありませんが、それにしてもこの『美術画報』という雑誌は詩人が多く登場する本だなと思いました。



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