きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり
kumogakure
「クモガクレ」Calumia godeffroyi カワアナゴ科


2002.3.18(
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 出張、というほどの距離ではありませんので外出≠ニいう言い方をしますが、小田原に行きました。機械メーカーに製作をお願いしてあった実験装置が完成して、その納入前の調査です。結果は問題なくOK。
 実はメーカーに出向いて驚いたんです。場所が「新開地」という所でした。いわゆる昔の赤線≠ナす。でも、私にとっては嫌なイメージではなく、なつかしい場所なんです。本来の目的で通っていたわけではありませんけど^_^; 小田原の著名な作家で川崎長太郎さんという方が、その新開地を舞台に書いていたんですね。何年か前に長太郎さんの墓前際があったときに私も呼ばれて、その折、新開地を見学した記憶があります。新開地はそれ以前から知っていて、ときどき訪れていましたから、それを記憶が混同している可能性がありますが…。置屋様の建物が残っていて、それを観察しながら歩きました。
 しばらぶりに行って、多少は古い建物も残っていましたけど、ほとんど変ってしまいましたね。新しい住宅地のようでした。
 夕食を近くの鮨屋でとりましたけど、話の中でつい新開地のそんなことが出てしまいました。再び驚いたことに、鮨屋の亭主が長太郎さんの名前を知っていたんです。「この辺では有名な人でしたからね」とご亭主は言ってましたけど、新開地、鮨屋、ときたら確かに長太郎さんの世界です。小田原もまだまだ捨てたものではないと、ついつい酒量も多くなってしまいました^_^;



大塚欽一氏著
『美神に木乃伊れた詩人たち[T]』
muse ni miirareta shijintachi
2002.4.15 東京都新宿区 文芸社刊 1200円+税

 タイトルにルビを振ると「美神(ミューズ)に木乃伊(みいら)れた詩人たち [T]」となります。「木乃伊れた」は木乃伊取りが木乃伊になる、という意味で付けられたそうです。医師でもあり、日本詩人クラブの会員でもある著者よりいただきました。詩史に名を残した詩人たちの多くが、最期は狂気や自死に至るさまを、詩人の人生と作品を通して考察するという異色の論集です。不勉強な私にはその名さえ知らない詩人も多く、本当に勉強になりました。
 自分の勉強という意味でも登場する詩人の名、死因等を列挙してみましょう。

 ヘルダーリン 1770-1843 精神分裂病を患い、36年間廃人となったのち死去
 ジェラール・ド・ネルヴァル 1808-1855 縊死
 エドガー・アラン・ポー 1809-1849 アルコール中毒死
 シャルル・ボードレール 1821-1867 失語症と半身不随ののち死去
 ステファヌ・マラルメ 1842-1898 呼吸困難の発作により死去
 ポール・ヴェルレーヌ 1844-1896 気管支肺炎により死去
 ロートレアモン伯爵(本名イジドール・デュカス) 1846-1870 自死?
 ジャン・ニコラ・アルチュウル・ランボー 1854-1891 全身癌により死去
 リルケ 1875-1926 白血病により死去
 ローベルト・ヴァルザー 1878-1956 23年間の精神病院入院ののち心臓発作で死去
 ゴットフリート・ベン 1886-1956 脊髄癌により死去
 ゲオルグ・トラークル 1887-1914 コカイン過量服用?により死去
 アンナ・アフマートア 1889-1966 長編詩を22年間に渡って執筆ののち死去
 チェーザレ・パヴェーゼ 1908-1950 自死
 パウル・ツェラン 1920-1970 セーヌ川に投身自殺
 シルヴィア・プラス 1932-1963 ガス・オーヴンに頭を突っ込んで自死

 これらの詩人たちの人生と詩を克明に見せられると、まさに「
美神に木乃伊れた詩人たち」という思いを強くします。特に最後のプラスは、英国の桂冠詩人テッド・ヒューズの妻(のちに離婚)であり、30歳の若さでガス・オーブンに自らの頭を入れて焼くという自死をしており、何が彼女をそこまで、と考えこんでしまいます。命と引き換えの死、ということを思うと、己の詩≠轤オきものはいったい何かと考えしまいますね。
 [T]とありますから[U]、[V]と続くのでしょう。どんな詩人の人生と死があるのか、楽しみであると同時に空恐ろしくなります。



村山精二共著
『犬にどこまで日本語が理解できるか』
inu ni dokomade
日本ペンクラブ編 2002.3.25 東京都文京区 光文社刊 1400円+税

 宣伝ですので読み飛ばしてもらって構いません。裏話をちょっと披露しておきます。
 日本ペンクラブ出版編集委員会の3冊目の単行本で、26名が共同執筆しています。私が参加したきっかけは1本の電話からでした。参加する気はまったくなかったんです。
 この本を出すと決って、ペンクラブの事務所を訪れる度に事務担当の女性から参加するように言われていました。もちろん断っていました。印税をもらえるほどの文章が書けるか自信がなかったのです。
 ある時、その女性から自宅に電話があって、たまたまうちの犬が吠えました。それを聞きつけた女性が「あら、ワンちゃんがいるじゃないですか。書いてくださいよ」。これももちろん断りましたね。
 でも、しばらくすると書面が来たんです。応募作品ではなく依頼原稿とするから書け、というものでした。そこまでされたんじゃ断るわけにはいきませんよね。OKを返信しました。
 〆切は過ぎていましたから、すぐに書いて送りました。こんなもので良かったら使ってください、駄目だったらボツでも結構ですよ、と添え文して(Eメールで送りましたけど)。すると女性から電話があって、出版社の編集部でもおもしろいと言ってくれて採用、だったそうです。
 そんないきさつでしたけど、人間って勝手なものですね、いつしか出版されるのを待つようになっていました。それが発売に先駆けて届いたという次第です。正直なところうれしかったですよ。
 版元から書面も付いていて、印税は10%。うち5%はペンクラブ、残りを執筆者で均等割り、とありました。価格が1400円ですからどのくらいになるのか計算してみました。私の取り分は1冊あたり、なんと2円70銭弱。なんじゃ、こりゃ!と思いましたね。1000冊売れても2700円!
 私クラスの原稿料は、最低クラスですけど400字詰め原稿用紙1枚で3000〜5000円、多いと1万円になります。最低の3000円で計算しても10枚書いてますから3万円。それと同じ印税が入るには1万冊以上売れないと駄目ということになりますね。そんなに売れるのかな?
 でも、万一、まかり間違って100万部のベストセラーになると、なんと270万円! 期待しましょ^_^;



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