きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり
kumogakure
「クモガクレ」Calumia godeffroyi カワアナゴ科


2002.4.10(
)

 社員教育で湯河原に一泊してきました。研修のあとは温泉にゆっくり浸かって良かったんですけど、ちょっと欲求不満でしたね、オレがインストラクターをやりたい!
 研修は入社3〜10年の受講生を相手に、製造現場でのトラブル解決能力を強化してもらおうというものです。そのインストラクター養成コースに二人の若手技術者が行ってきました。あとは実際に受講生を前にしたインストラクションが残っているだけです。そこで今回の研修で彼らに講義をしてもらい、教員資格を取ってもらおう、ということになりました。私は彼らの合否を判定するという立場で研修に臨みました。
 基本的には合格してもらうことが目的の研修ですから、私の役目なんて気楽なものです。それに超一流大学の工学部出身者ですし、職場では50人近い部下を持つ立場です。若いとは言え人格的にも優秀で、私が惚れぼれする場面も多々ありました。些細なミスをやさしく^_^;指摘するだけなんです。でもやっぱり、もどかしさはありますね。初体験の彼らに罪はありませんけど、オレだったらそんな言い方はしないな、という場面も多々あったんです。このフラストレーションは意外とキツかったですね。
 おそらくこれからも私が直接インストラクションをする場面は少なくなるでしょう。直接、受講生を相手にすることほど楽しいことはありません。でも、それでは後続が育たない。寂しいことですが、先輩たちもそうやって私への道を拓いてくれたのだと考えると、その恩を返す時期なのかなと思います。



詩誌『黒豹』99号
kurohyo 99
2002.4.5 千葉県館山市
黒豹社・諫川正臣氏発行 非売品

 春が翔ぶ/西田 繁

ふりそそぐ春の光りをはじきかえし
あすこにも ここにも
たんぽぽの花が まぶしく咲いている

地面に葉を ぴたりとひろげ 茎を支え
蕋がふくらみ 咲きおわると
まんまるの 白い帽子を そろってかむる

ピンと背のびした茎は
静かに 黙って 根気よく
それぞれ 何かを 待つ気配

ある日 春をさらって 一陣の風吹くとき
たんぽぽは ひと粒ずつの種を抱き
自らひらいた 落下傘につかまって たかく舞う

目的もたない 捨て身の飛翔
着陸は 田の畦か 畠の隅か ビルの吹きだまりの砂の上か
根を張る場所は 舞い降りたときでよい

たんぽぽは 自立目ざして たかく なお高く
綿毛に托して どこまで行くのか
風が また はげしく吹き上げた

 春の代表的な草花であるたんぽぽを詩情豊かにうたいあげた作品だと思います。「ピンと背のびした茎」というフレーズには、一般的な綿毛だけの観察ではなく、詩人の繊細な眼差しを感じます。そして「根を張る場所は 舞い降りたときでよい」という連や最終連に、自然の厳しさをもきちんと捉えていることが判り、単に表面的な観察ではないことをも感じさせてくれます。詩誌の4月発行という時期も考えた佳作だと思いました。



個人詩誌『蛙』創刊号
kaeru 1
2002.4.20 東京都中野区
菊田守氏発行 180円

 さくら/菊田 守
   ----個と他者

今朝も 庭で
百日紅の天辺で待機していたヒヨドリ一羽
パンの餌にやってきたスズメを
急降下して追い払っている
庭にくるムクドリもツグミも
なかなか餌にありつけない
ヒヨドリの存在なのです

団地にある集会所のさくらがきれいというので行ってみた
集会所のさくらは全部で七本
染井吉野が今を盛りと咲いている
満開のさくらの枝から枝を ヒヨドリが数羽
いいよ いいよと 楽しそうに飛び
嬉しそうに鳴いている
このさくらの世界には
誰もはいることはできない

満開のさくらは花と花が 囁きあい
枝と枝とが気持よさそうに触れあって
肩を並ベて歌っている
花の中のヒヨドリも自己を主張することはない
春を謳歌している
さくらの花は自己を忘れさせる存在なのです

さくらはヒトの思考も麻痺させる存在です
早く強い雨や突風が吹いてほしい
さくらの世界は妖しく艶やかな
春欄漫なのです

 「個と他者」というサブタイトル、そして最終連が意味深い作品だと思います。前者については総ての連がそうであると思いますし、後者は一般的な桜への見方を一蹴した着想だと言えましょう。この作品中、最もインパクトのある部分です。
 編集後記には「いつの頃からか個人誌を出したいと思っていたお腹の虫が騒ぎだして」とあります。小動物詩人・菊田守さんの面目躍如とも言える詩誌発行です。どんな菊田ワールドを見せてもらえるか、これからも楽しみです。



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