きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり
kumogakure
「クモガクレ」Calumia godeffroyi カワアナゴ科


2002.4.30(
)

 昨日は一日中原稿を書いていて、依頼されていた400字詰18枚を書き上げました。一日に10枚くらい書くというのは、たまにあることなのですが、さすがに18枚は初めてではないかと思います。実質6時間ほどですから、1時間に3枚書いた計算になります。まあ、そんなに早いわけではありませんね。苦手にしている詩論でしたから、どうなるか自分でも心配だったんですけど、何とかやり遂げたなという思いでいっぱいです。
 我ながらまともな詩論にはなっていないと思いますので、あまり詳しくは書きたくありませんけど、7月号の某誌用原稿です。気付いたら読んでみてください。



木村孝夫氏詩集『座標』
zahyou
2002.3.23 長野県諏訪市
ゆすりか社刊 1500円+税

 エレべーター

押しボタン
たった二つの
選択肢

気兼ねなく
意思表示ができる
十分な数

系列の世界は
限りなく数ばかりで

悶々と
意図するところに
近づけなかった

この頃
迷うことは少なく
手ごろな数に
やっと出会った

 「エレベーター」と現実の会社生活とがうまくイメージされた作品だと思います。出世するとかしないとかに関係なく、サラリーマンには自分の思い描く地位があるものですが、なかなか思った通りにはいかないものです。それが「悶々と/意図するところに/近づけなかった」という連に表現されていると思います。でも、いつかはそんなことに思いを巡らすのは意味のないことに気付き、「手ごろな数に/やっと出会った」という感情になるのかもしれません。
 自分に引き寄せて考えると、私も50歳を過ぎて、その辺の機微が判るようになってきました。サラリーマンのそんな思いを「エレベーター」に重ねた佳作だと思いました。



季刊詩誌『ゆすりか』52号
yusurika 52
2002.4.1 長野県諏訪市
ゆすりか社・藤森里美氏発行 1000円+税

 約束/高 貞愛

机の筆箱に棒切れが差されている
棒切れの表面に
細かく分かれ引かれた線
標準によってミリとセンチの
長さを示す線がぎっしり刻まれている
ぶっ切り割って滑らかに手入れした
三十センチ長さの実直な竹の表が
折れはしても曲げられはしない

心次第
この棒一つで赤道の長さを計れる
ミリ単位であるなめくじの卵の大きさも
筆箱から抜いて計ることができる

まっすぐな線を引こうとすれば
確かな寸法を知りたければ
ためらいなく取り出す 使い古し手慣れた私の物差し
よろよろ心が揺れて足取りが危ぶまれる時
白白と濃霧の立ち上る中で右往左往さ迷う時
疑いなく一途に信じて探し頼れる
物差しのような私になりたいね

 「物差し」の概念もおもしろいのですが、タイトルとの呼応が見事な作品だと思います。確かに物差というものは、ある「約束」のもとでの計量器ですからね。それを「疑いなく一途に信じて探し頼れる/物差しのような私になりたいね」と結ぶところはさすがです。物差への考察を自分に引き寄せたおもしろい作品だと思いました。



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