きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり
kumogakure
「クモガクレ」Calumia godeffroyi カワアナゴ科


2002.6.2(
)

 金子秀夫さん、福田美鈴さんたちの「福田正夫詩の会」が主催する「福田正夫没後50年記念フェスティバル−小田原の詩人たち−」が小田原市立図書館で開催されました。6月1日、2日の両日に行われたものですが、私は1日は日本詩人クラブの作品研究会に出掛けましたので、本日のみの参加となりました。金子さんから詩の朗読をやれと言われて参加したものですが、なかなかおもしろかったですよ。
 私の担当の作品は、志澤正躬「枯野ッ原」、山ア正一「葦刈り」の2編でしたけど、変な緊張もなく、自分でもある程度納得できる朗読になりました。自作詩朗読より先輩詩人の作品朗読の方がやりやすいなと思いましたね。

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 写真は歌唱の渡辺さんという女性です。歌は福田正夫作詞「片浦小学校校歌」と志澤正躬作詞「小田原市民歌」。私は瞬間的に小田原市民になったことはあるものの市民歌は知りませんでしたけど、来場の市民には馴染みの歌のようです。何人も一緒に歌っていました。市民歌を歌える市民なんてなかなかいないと思いますよ。小田原市民ってすごいんだなと思いましたね。ちなみに私は、30年住んでいる現在の市の歌を知りません^_^;
 今日の収穫は、西岡光秋さんによる講演「木村孝と小田原」でした。1998年12月に亡くなった木村さんとは足掛け20年ほどの付き合いでしたから、私もそれなりに存じ上げているつもりでしたけど、西岡さんのお話を伺って、本当は何も知らないんだなと思い知らされました。新宿ゴールデン街のゲイバーに西岡さんたちが木村さんを連れて行ったなんてことは、今の今まで知らないことでしたしね。だまされてゲイバーに連れて来られたんだと判ったときの木村さんの反応などを聞くと、目の前に木村さんが立っているような錯覚に襲われました。久しぶりに木村さんの声を思い出して、胸が熱くなりました。そして、西岡さんと木村さんの友情がうらやましく思いましたね。いい講演でした。



石原武氏著
『君を夏の一日に譬えようか◇詩の遠景
shi no enkei
2002.5.15 埼玉県さいたま市 さきたま出版会刊 2000円+税

 あとがきによると、1985年頃から日本童話会機関誌『童話』に「詩の鳥たち」と題して、若い教師向けに連載したものだそうです。1994年頃に終刊になったそうですから、10年に渡って連載したと考えてよさそうです。22編のエッセイですので、半年の一度の刊行だったのでしょうか。その中で、「日本未来派」の創刊同人であった佐川英三氏の作品を取り上げた「岸のない川」というエッセイは強烈でした。孫引きになりますけど、佐川氏の作品を紹介します。

 クリークの水を真赤に焦がし
 あなたの村は幾日も燃えていた
 その火のなかで
 あなたの父あなたの兄が
 生きながら焼かれていつたのだ
 その残酷は
 私の網膜から生涯消えないだろう。

 しかし私は
 嘘をつきたい
 私は一度もそれを見たことはなかつたと

 高梁畑の茂みのなかで
 納屋の奥であるいは夫の眼の前で
 銃剣を突きつけられ
 あなたの母あなたの妻が
 日本の鬼に犯かされた
 その時女は眼を閉じるその眼は
 男の額に生涯の烙印となつただろう

 しかし私は
 嘘をつきたい
 私は決してそれに加わらなかつたと

 抱き上げると きまつて
 私の頬に噛みついた早熟の少女ユエイン
 日本語が上手だつた開水
(カイスイ)屋の小孩チン
 うまい焼飯を作つてくれた金物屋のワンタイタイ
 もはや遥かな昔のことだ村も変つただろう
 いま一度訪ねてみたい
 しかし私は
 やつぱり嘘を言わねばならないだろう
 何しろ当時は戦争で
 私は一人の兵士だつた
 決して人間ではなかつたと
 (佐川英三「嘘」 詩集『現代紀行』所収)

 この作品について著者は次のように述べています。

 <嫌応なく、抗いようもなく投げこまれた戦争という運命にあって、それを運命としてではなく、ひとりの人間の行為として、他の死に対する責任を問い、みずからを裁こうとする詩人の態度にわたしはうたれる。「人間でなかった」と「嘘をつきたい」ということは当然、「人間であった」ことであり、加害者であったのだ。戦争という悪しき状況にあったということになんらかかわらず、人間であることはつねに加害者になりうるという実存認識が、かれにこの詩を書かせたというべきだろう。>

 これ以上私が何かをつけ加えることは蛇足以外の何ものでもありませんが、ただ、兵士の体験者でこういう表現をした人は少なかったのではないかと言いたい。五味川純平の『人間の条件』や『戦争と人間』でも「私は一人の兵士だつた/決して人間ではなかつた」という視点・表現はなかったように思います。



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