きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり
kumogakure
「クモガクレ」Calumia godeffroyi カワアナゴ科


2002.8.7(
)

 私の夏休みも5日目。9日間のうちの、ちょうど半分が過ぎたことになります。先月、ある同人誌から西脇順三郎について書いてくれという依頼がありました。この夏休みのちょうど良い宿題とばかりに準備を始めたのですが、案の定、手持ちの資料では足りません。それでは、と近所の本屋に行ってみましたけど、これも案の定、何も置いてないですね。期待はしていなかったけど、それにしても文芸書の少なさにはがっかりさせられます。吉村昭さんの本で、まだ読んでいないと思われるのが一冊、ペンクラブの委員会でご一緒している東大の坂村健さんの本が2冊、目に留まりましたけど、グッと堪えて買いませんでした。買うと没頭しちゃって西脇さんがお留守になりそうで怖いのです。
 明日、図書館で探してみましょう。週末には東京に行きますので、八重洲ブックセンターででも探してみます。たまには神田の古本屋もいいけど、掘出物は高田馬場ですね。駅前の古本市で意外な本がびっくりするほど安く出ているんですよ。まあ、それまで手持ちの資料をあたっておくことにします。



藤森重紀氏詩集『雪 行列』
yuki gyoretsu
2002.6.30 東京都町田市 龍工房刊 1500円+税

 雪行列

凍える道をかりかりと
あるいて
行ったつおん

足あとさぁ
雪っこ
積もったつおん

可愛
(めごこ)いから
病気に罹
(な)ったと
噂されたつおん

何時
(いつ)戻れるの
いもうとが訊いたつおん

戻れぬ病いだよ
あした
黴菌ついた猫っこも
縊らねばならないよ
出がけに姉は聞いたつおん

(さき)をいくのはお父(と)っつぁん
花嫁衣装をあきらめて
お月さまさえ出てなくて
(か)さまのちょうちん頼りなく

猫このお暮作ってけらえ
鳥こに餌こ遣
(や)ってけらえ
山羊
(やん)この面倒みてけらえ

隔離の島へ行くときは
気になるものをいっぱい残し
とまどう躰は吹雪に押され
凍てつく道をかりかりと
息を殺して行ったつおん

 詩集のタイトルポエムです。方言は岩手県南部地方のもののようです。著者は現在、東京・町田市在住ですが、お生れは岩手県、日本詩人クラブ会友です。
 著者の子供の頃のことを題材にしていると思います。「戻れぬ病い」「隔離の島」とありますから、ハンセン氏病などを想定しているのかもしれません。国の誤った政策にも黙々と従う農民の姿、ととることは的外れでしょうか? 仮にそうだとすると、耐えるなかにも「可愛いから/病気に罹った」と慰め、「気になるものをいっぱい残し」と、他者へのいたわりを表出させるなど、農民の本質的な強さ優しさを表現した作品と受けとめました。
 他に、痴呆を描いた「静止画」、精神異常を描いた「新緑弔詞」など佳作の多い詩集だと思いました。



鬼の会会報『鬼』362号
oni 362
2002.9.1 奈良県奈良市
鬼仙洞盧山・中村光行氏発行 年会費8000円

 たけのこ
 漢字で旬。竹冠をはずした旬は上旬、中旬などの旬で、十日を意味します。十日も経つと固くなって竹になるのです。竹薮は日本的な風景とされますが、渡来は元文年間。琉球から二株の孟宗竹の苗が、薩摩藩に献上されたのが最初でした。しかし、本当は中国から来たのを鎖国時代とて、琉球と偽ったのかも知れません。息子の孟宗が、病母の好物とて冬に掘り当てた伝説が、孟宗竹の語源です。
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 連載「鬼のしきたり(51)」の中の一節です。竹が日本古来からのものでないとは知りませんでした。孟宗竹の由来もこれで判りました。そう言えば孟宗というのはいかにも中国人の名前ですね。筍の漢字の由来、琉球からの献上というのは偽りではないか、など、これだけの文章に多くのことを含んで、見事な文章だと思います。見習わないといけませんね。



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