きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり
kumogakure
「クモガクレ」Calumia godeffroyi カワアナゴ科


2002.8.19(
)

 先週末、職場異動をして、今日は実質の1日目でした。この3日間は前任者からの引継ぎになっていて、レクチャーを受けましたけどシンドイ、シンドイ。細かい疑問がドッと出てきましたが、こらえました。聞き出したらキリがないし、細かいことは自分で考えようと思ったからです。レクチャーを、そうやって分類しながら聞いていると、いつもと違う頭の使い方をしているようです。16時頃には、もう何も考えられなくなるほど頭がいっぱいになってしまいました。私の頭脳は、ある一定を越えると拒否反応を起すようです^_^;

 まあ、そんな個人的なことはどうでもよくて、問題は住基ネットです。私のところにも市役所から送られて来ました。まだ開いていません。ですから、どんな番号かも知りません。新聞を見ると番号が縁起が悪いとか透けて見えるとか、かなり次元の低いところでクレームが付いているようですが、本質を炙り出した国民総背番号制への反論はまったく見当たりませんでした。私はどう行動するか考えているところですけど、日本ペンクラブ電子メディア委員会のメーリングリストに興味深い投稿がありました。転載歓迎ということですから、ここに紹介してみます。

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住基ネット「中止請求」のマニュアル

【概要】
 「中止請求」とは個人情報保護条例によって保障された自己情報コントロール権の一つです。通常、条例では個人情報の外部提供・オンライン結合が原則禁止とされています。市区町村による住基ネットへの本人確認情報の提
供が、これに抵触するとして本人が市区町村長に対して中止を求めるものです。「中止請求」があった場合、自治体は30日以内にその可否を決定しなければなりません。
 また、請求者が決定に不満がある場合には、その取消しを求める不服申立てや裁判もできます。本人確認の必要
があるため、原則として郵送、FAX、e-mailによる請求は認められないので、役所の個人情報担当課で必要事項を記入し請求書を提出します。

【具体的方法】
 1 個人情報保護条例の有無を確認する。
 まずはお住まいの自治体に個人情報保護条例があるかどうかを確認してください。総務省調査によれば、昨年4月1日現在、全自治体の約60%にあたる1994団体で(一部事務組合12を含む)で個人情報保護条例が制定されています。マニュアル(手書き)処理を含むすべての個人情報を対象とした新しいタイプの条例と、コンピュータ処理情報だけを対象とした古いタイプの条例とがありますが、いずれのタイプでも住基ネットの個人情報は対象になります。
 2 「中止請求」または「是正の申出」の有無を確認する。
 次に条例の中に「中止請求」があるかどうかを確かめてください。個人情報保護条例の有無を自治体に問い合わせたときに、ついでに聞いてみましょう。前記の総務省調査によれば、710団体が「中止請求」を定めています。例規集や個人情報保護制度のコーナーのあるHP(ホームページ)を参照したり、図書館にある例規集で調べることもできます。
 もし「中止請求」の規定がなくても、かわりに是正の申出が定められている場合があります。その場合は、是正の申出という形で本人確認情報の提供の中止を求めることができます。ただし、是正の申出は権利として認められたものではないので、通常は不服申立や裁判などの権利救済制度を利用できません。
 3 請求または申出をする。
 個人情報保護条例があり、その中に「中止請求」または「是正の申出」の規定があれば、役所・役場に行って個人情報保護担当課をたずねてください。そこに、請求書または申出書が置いてあります。請求書または申出書には住所、氏名等のほか、対象となる個人情報として「住基ネットに係る本人確認情報(住所、氏名、生年月日、性別、住民票コードほか)」を、中止または是正を求める内容としては「住基ネットへの提供」を該当欄に記入します。記入にあたっては担当課職員がていねいに説明してくれるはずなので、わからないことがあったら、その場でたずねましょう。なお、本人確認のため、提出の際に免許証や健康保険証などの身分証明証の提示が必要です。
 4 決定・回答に不満ならば不服申立てをする。
 「中止請求」または「是正の申出」に対する自治体の決定・回答は30日以内に行われます。国が「選択制」を認めていないことから、住基ネットへの提供を中止しないとの決定・回答が出る可能性が大です。しかし、これに不満であれば不服申立や裁判を起こすことができます。とりわけ不服申立は簡易迅速な権利救済制度であり、誰でも気軽にできます(しかも無料!)。こうした機会を通じて、住基ネットについての不安や不満をうったえていくことも大切です。なお、審査するのは自治体ではなく個人情報保護審査会等の第三者機関なので、請求自体は認められなくても主張に理解を示してくれる答申が出ることも期待できます。
 5 住民票コードについては「削除請求」も可能。
 本人確認情報の提供の中止に加えて、住民票コードの付与(付番)を拒否したいときは、個人情報保護条例に基づく「削除請求」も可能です。
 これは、自治体が事務に必要な範囲を越えて保有・収集したときなどに当該個人情報の削除を本人が求めるもの
です。住民票コードは通常の事務に不要であるとして、住民票コードという個人情報の削除を求めるのです。やり方は「中止請求」または「是正の申出」とほぼ同じです。なお、前記の総務省調査によれば、制定団体の約80%にあたる1679団体で規定しているので、「中止請求」または「是正の申出」のかわりに「削除請求」するのも一案です。

【呼びかけ】
 「選択制」を導入する横浜市を除いて、本人に対する説明と同意を欠いたまま「住基ネット」はスタートしてしまいました。高度情報化社会といわれる現代では、プライバシーは「私生活上の秘密を他人に知られたくない」という消極的な意味にとどまらず、自己に関する情報の流れをコントロールするという積極的な意味で理解されています。住基ネットによるプライバシー(自己情報コントロール権)侵害に対して、私たち市民が唯一「NO」といえる方法が「中止請求」または「是正の申出」です。他人に守ってもらうのではなく、自分で守ることがプライバシーの基本です。沈黙は同意とみなされます。住基ネットに「NOの意思表示」をしたい人は、ぜひ自らの権利を行使してください。

マニュアルの参考資料もお送りします。意識して中庸の条例を選んでいます。使えるようなら、どうぞ

■「中止請求」の例。
 高崎市個人情報保護条例
 第18条 何人も、第12条第1項又は第13条第1項の規定によらないで自己情報の目的外利用又は外部提供がされているときは、当該目的外利用又は外部提供の中止を請求することができる。
 ■「是正の申出」の例
相模原市個人情報保護条例
第24条第1項 何人も、実施機関が行う自己の個人情報の取扱いが不適正であると認めるときは、当該個人情報の取扱いの是正(事実の誤りの訂正を除く。以下この条において同じ。)を申し出ることができる。
 ■「削除請求」の例
 千代田区個人情報保護条例
 (自己情報削除請求権)
 第21条 区民等は、実施機関が第6条、第7条又は第8条第1項の規定に違反して自己情報を収集していると認めるときは、実施機関に対し、当該自己情報の削除の請求(以下「削除請求」という。)をすることができる。
 2 区民等は、実施機関が第17条の規定に違反して自己情報を電子計算組織に記録していると認めるときは、実施機関に対し、削除請求をすることができる。
 ■個人情報保護条例のリンクがあるサイト
 全国条例データベース(鹿児島大学法文学部)http://joreimaster.leh.kagoshima-u.ac.jp/

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 うーん、これを実行するのは正直なところ、かなり勇気がいりますね。でも、日本ペンクラブの反対声明を添えて市役所に行ってみようかと思っています。何も表明しないことは賛成したことになりますから、主権者たる国民の一人としては最低限の意志表示は必要かな、と思います。もう2〜3日、じっくり考えますけどね。



鈴木俊氏詩集『青大将』
aodaisyo
2002.8.20 千葉県習志野市 青孔社刊
非売品

 

息子は頑冥な父親をはげしく憎んだ

薄暗い厨房で
息子は目を光らせながら包丁を研いだ

そんな息子に頓着なく
父親は思うままに生きて老衰して死んだ

枢は会葬者達が捧げる菊の花で埋められた

法事を済ませたある日
息子が鏡に向き合うと
そこに立っているのは父親だった

 「息子」とは著者自身、「父親」は著者の父上という解釈で良いと思います。父と息子の本質的な確執が見事に表出した作品と考えます。しかし、その確執は最終連のように、血のつながりによって置き換えられないものになっていると知らされた作品、と言えるのではないでしょうか。その証明のひとつが詩集表紙の書です。父上は鈴木汪亭という書家で、書かれている書は「蔵身露影」と読むのだそうです。
 この詩集の中では「ぼくの戦後史」と題された15編の詩群も重要な位置を占めていると思います。鈴木俊という詩人の目を通した戦後史は、日本史の中の位置付けとしても重要ですが、詩人の生き方・思想を知る上でことさら重要な詩群と思います。少し斜に構えながらも本質を抉り出す詩人の視線は、まさにこの「ぼくの戦後史」の中に原点があると思いました。



月刊詩誌『柵』189号
saku 189
2002.8.20 大阪府豊能郡能勢町
詩画工房・志賀英夫氏発行 600円

 湖北潭/田井中 弘

琵琶湖の最湖北
葛籠尾崎(つづらおざき)と南二キロに竹生島がある
葛籠尾崎を背負い 竹生島に抱かれ
陸の孤島 領主のいない菅浦は
明冶以前 みかんがたわわに実る
日本唯一の自治のむらであった
あれは昭和二十四・五年だったか
その葛籠尾崎の岬の崖の
湖中四十メートル地点で縄文土器が発見された
その時だったか 潜水夫は興ひかれるままに
深く潜った 長い
事故でもありあがってこないと思った程だ
水深およそ百メートル
底では流れはない
彼は しっかと見た
はたちばかりのひおどしの鎧着た武者が
死蝋と化し眠るように横たわっていた
なおじっと目を凝らす
先日新聞に出たばかりだ
高校三年の男子と一年の女子が
水着のまま
抱擁し 胴を真紅の帯留でしっかと括り
両脚に重石をぶらさげ
一番の深みにすっくと立っている
彼らも今では死蝋となり若さのままでいるのだろう
横たわることなく

 詩作品を読む楽しみは、本来の作品鑑賞とともに、自分の知らないことを教えてもらえるということにもあると思っています。しかも、散文ではなく詩という芸術形態で、美しく…。この作品はその好例と言えるのではないでしょうか。「領主のいない」「日本唯一の自治のむら」があったということに驚かされ、「死蝋」という現象があることを知りました。
 琵琶湖は好きな湖のひとつで何度か訪れていますが、この作品によってまた行ってみたくなりました。「ひおどしの鎧着た武者」や「一番の深みにすっくと立っている」男女に会うことは無理としても、「菅浦」を見ることはできるかもしれませんね。



季刊詩誌『詩と創造』40号
shi to sozo 40
2002.7.20 東京都東村山市
書肆青樹社・丸地守氏発行  750円

 切り口/山本倫子

指先から意志が伝わって
鋏の長太郎はわたしに忠実であった
切ることに
ためらいはなかった
切り口は鮮やかであった
ほつれはほとんどなく
切ったことに悔いはなかった

新婚六か月の生活を切ったのも
長太郎が傍らにあったからだ
調停委員の
安西冬衛先生は
切ることに助言して下さった
本来はまとめることが仕事ですが……と
おっしゃりながら

コツコツとひびく杖の音が遠ざかり
安西先生の後姿が消え
幾年か過ぎたのち
見失う前に詩を覚えた

布を切るほどには
詩は上手に切れないが
深傷を負うと切り口から
ふしぎにコツコツという音が
鮮やかに聞こえてくる

 *コツコツ 安西冬衛先生の杖の音。先生は堺の家庭裁判所の調停委貝をしていた。

 「研究会作品」として載せられていた詩です。作者は2000年7月に『以後無音』という優れた詩集を出しています。紹介した作品はご覧のように安西冬衛との貴重な出合いがきっかけとなっており、作者の詩人としての生活の上でも重要な位置付けととらえられそうです。
 最終連がやはりいいですね。「深傷を負うと切り口から」「コツコツという音が」聞こえてくるというフレーズは見事だと思います。それにしても「本来はまとめることが仕事」というのは本当でしょうか。私も調停を頼んだことがあり、ちゃんと「切ることに助言して」もらいました。数字は判りませんが、調停の結果の離婚率は意外と多いのではないかと思っています。



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