きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
「クモガクレ」Calumia godeffroyi カワアナゴ科 |
2002.8.23(金)
今年高校生になった娘がしきりに同窓会をやりたがっていました。小規模校で、小学校から中学校まで同じ1クラス。しかも16名しか同級生がいません。そんな環境から500人近い生徒がいる高校へ行ったのですから、9年間同じクラスだった子たちと会いたくなるのは、判らないわけではありません。やったら、と当然勧めました。
その念願が叶って、今日が同窓会だったようです。公民館の広場に集ってお菓子を食べるという計画だったようですが、雨。雨だったら公民館を借りるという知恵までは無かったようで、あわてて交渉したらしいのですが、公民館はすでに予約でいっぱい。計画の甘さがどういう結果になるか、いい勉強の機会だったのではないかと思います。それで突き放しては可哀想なので「うちでやったら?」と助言しました。私の家は広くはありませんし、庭も50坪が欠けるほどです。しかし、以前はキャンプの仲間が家族連れで訪れて、30人ほどが過したことが何度かありました。ガーデンパーティ用の椅子もテーブルも16人ではじゅうぶん過ぎるほどあります。葦簾張りのテラスにシートを乗せれば、雨も防げます。
街の子はそんなときに喫茶店かカラオケにでも集るのでしょうが、田舎ですからね、5〜6キロ行かないとそんな施設は無いんです。
朝、そんな助言をして会社に行ったのですが、帰宅したら集っていましたね。全員は集らず12名ほどでしたが、私にも懐かしい顔がズラリと揃っていました。子供会、小中学校のPTAをやっていましたから、彼ら彼女らは全員顔見知りなんです。ずいぶん様変わりして顔と名前が一致しない子も何人かいましたけど、みんないい顔になったなと思いましたよ。
近所の迷惑になってもいけないので、事前に挨拶まわりをすること、大声を出さないことを命じておきましたけど、それもちゃんと守れていました。近所のお宮さんで花火をやったりして22時過ぎまで遊んでいましたね。私の高校生の頃は、なるべく親から離れた場所で集ったものですが、今の子はやはり過保護なんでしょうか。ちょっと考えてしまいました。
○個人詩誌『波』13号 |
2002.9.10 埼玉県志木市 水島美津江氏発行 非売品 |
三つの部屋/水島美津江
こじんまりとした部屋の窓辺
この人は意識がなくて死んでいるのと同じだから
声かけも ケアーも無駄だよ
科学的 科学的にネ 君もべテランでしょう
と若い医師は白衣を翻して出て行った
けれども
眠り続ける人の脳の裏側には眠れないこころがある
生きている
ほら 髭だって伸びる
今朝 看護師さんがきれいに剃ってくれたんです
二十七歳の誕生日 ワインを含ませると
この子 微かに 微笑んだわ
--------応えている------
ぼんやりとした電燈が点滅している奥の部屋
息子の髪を撫でている母の指先がそこはかとなく重たい
さあ 早く
・・・まだ 暖かい のに
少しでも あたらしいうちに と
認定されてしまった死から
内臓をごっそりと抉りとる
痛みを感じないはずの顔がわずかに歪む
命が終っているのに取り出された塊から
すーと 血が滲んでくる
青田刈りされた からだ
やがては消えてゆく白い二本の筋を曳きながら
人から人へと贈ってはならないものを乗せて
狂った火の鳥が真赤な落日の
空の果てへと高い羽音を響かせながらつきさゝっていく
光と影が交錯する蒼い川を越えて
二つの体は溶けあうだろうか
待ちに待っていた時が来た
・・・
祈りながら凝って みつめる親と
静かに横たわる青年の
夢のような現実を迎えようとする部屋がある
消毒臭の漂う空間の
そのまた先の部屋
ガチャ ガチャと道具を準備する金属音が聞こえてくる
青いマスクの上の目と目の合図
ただの 塊 となった ものに
生を与えようとする
サイボーグ たちの白い腕が蠢いている
科学と名誉の部屋があった
おくるものの苦しみ
おくられるものの悩み と
----すべてはつかの間の命のために----
「いのち」という特集の中の一編です。作者の「すべてはつかの間の命」という思想は、編集後記の「ダーティ・ウーマン」にも現れていました。その中には蜘蛛膜下出血から生還した女性の話も載せられていて、医者から脳死と思われていた時間帯も意識はあったそうです。そんな思いもあって、重病の母上への思いもあってこの作品が生れたのでしょう。現代医学への詩人としての挑戦ととらえることもできると思います。私も同じテーマで詩らしきものを書かせてもらっていますが、生物の本質に迫るテーマだったと思います。
○詩とエッセイ『千年樹』11号 |
2002.8.22 長崎県諫早市 岡耕秋氏発行 500円 |
形のない形/鶴若寿夫
机の孤独
白い紙に潜む暗闇
時計を撃つ沈黙
珈琲に溢れる重力
栞に刻む物語
女は美しい姿の中に身を隠し
男は物陰で自らの失った影に探される
見せかけの空で溺れる
顔面蒼白の太陽
真紅の月
黒インクにひろがる空白
非常にインパクトのある作品だと思います。まさに「形のない形」を表現していると言えるでしょう。特に「白い紙に潜む暗闇」「時計を撃つ沈黙」「栞に刻む物語」「黒インクにひろがる空白」などのフレーズには惹かれます。イメージが次々に浮かんできて、ぼやけた私の脳を刺激してくれました。短い中に鋭い切先をもっと作品だと思いました。
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