きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり
kumogakure
「クモガクレ」Calumia godeffroyi カワアナゴ科


2002.9.10(
)

 日本ペンクラブの電子メディア委員会があったのですが、出席できませんでした。10日になるか11日になるか、電子メディア委員会内の山田研究会座長の都合がはっきりせず、つい2〜3日前に最終決定しました。その間に会社の仕事の予定はどんどん入ってきて、とうとう両日とも出席できない状態になってしまったのです。まあ、私の職場異動で、以前ほど調整し難いということもありましたけど…。
 来月も委員会はありますから、それにはぜひ出席したいものだと思っています。職場異動もその頃には2ヶ月を過ぎますから、自分のペースになっているでしょう。仕事も大事、ペンも大事、うまく時間を配分すれば両立できるはずだと思います。



短編集『夜』
yoru
2002.5.30 東京都文京区
驢馬出版刊 2000円+税

 「上質の詩を書いている詩人達に、小説と絵とを書いていただき、この短編集を企画してみました」。主宰とも言うべき夜の会≠フ駒田克衛氏の言葉です。その言葉通り、新進の詩人たち、居谷寅牛・渡辺めぐみ・松尾真由美・山田咲生・渡邊那智子・斉藤圭子・駒田克衛の各氏の作品計10編が載せられています。詩のみに拘泥せず、きちんとした散文も書けることが良い詩人の条件だ、と私は思っていますから、その意味でも意義のある企画だと思います。
 山田咲生氏の「くらげ」は佳作と思いました。派遣会社の女子社員が恋人に捨てられる際に、携帯電話の感度の悪さのせいにされて、「勝手にOFFしないでよ。」と心の中で叫ぶ。「パチンとスイッチを切られる」ように派遣先から解雇される。この二つが噛み合って、現代をうまく表現しているなと思いました。また、中に「ビルの隅で点滅する赤い警光燈」という言葉が出てきます。警光燈≠ニいう言葉は無いと思います。航空機の衝突防止用に義務付けられているのは警告燈=B作者の造語ですが、これはうまい言葉ですね。警光燈≠フ方が人間味を感じます。無理のない造語も作家の力量、山田さんの詩作品は存知上げませんが、作家としてもセンスの良い人だろうと思います。
 その他、渡辺めぐみ氏「遠い約束」、松尾真由美氏「XYZの幽閉」、斉藤圭子氏「スマイル アゲイン」、駒田克衛氏「桃色の部屋」なども印象に残る作品でした。詩人たちがこれからも散文の世界に足を踏み入れて、そこから詩を見つめ直してくれることを願って止みません。



詩誌『交野が原』53号
katanogahara_53
2002.10.1 大阪府交野市
金掘則夫氏発行  非売品

 引き算/岡島弘子

カワセミが背負う
青空の色 太陽の輝き

曇天ばかりの寒い日が続いて
ときおり雨が降る
私の人生
の 空が色を引いてひさしいから

カワセミがくぐる
水さえあたたかい
こころ 引く 想い いこおる こおる
ので

よくねむるためには ねむらない
泣くためには 泣かない
叫びを届かせるためには 叫ばない こと
よく生きる 引く 死なないこと
いこおる いかない

ガクアジサイ 引く がく いこおる
むき身の むきだしの

川が水を手放す
風が時間を落とす
土が大地からはぐれる
火がたち消える

そのすきに身をひるがえして
カワセミは辞
(ひ)

私 引く あなた
私から 退く あなた いこおる
答えは
ない

 人生は足し算なのか引き算なのか。この作品を拝見してそんなことを考えてみましたが、ことはそう単純ではありませんね。でも、数学にはもっと複雑な式がありますけど、詩は足し算か引き算かという基本の式で成立っているのかもしれません。これはもっと真剣に考えてみるとおもしろい結論が導き出せそうな気がします。いずれ誰かがそんな理論を打ち立てたときに、基になった詩となるかもしれません。
 最終連がやはり見事だと思います。カワセミもガクアジサイも、川も風も土もいっぱい登場してきますが、最後は「私」と「あなた」。作者の基本姿勢を感じますけど、詩の基本をもうたっていると思います。短い言葉の中に、さまざまな問題点を凝縮させた作品と言えましょう。



   back(9月の部屋へ戻る)

   
home