きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり
kumogakure
「クモガクレ」Calumia godeffroyi カワアナゴ科


2002.9.28(
)

 第178回「KERA(螻)の会」が新宿で開かれました。今回は今年の第4回小野十三郎賞を受賞した甲田四郎氏が主役。「私の詩とユーモア」と題するレクチャーを受けました。初期の記念碑的な作品の紹介もあって、なかなかおもしろい会でした。ユーモアの中にもペーソスがあって、人間についての深いところまで考えさせられる詩が多い甲田さんですが、その秘密が少しは判ったような気がしました。
 賞とはほとんど無縁な人だったかな? 何か晩翠賞のようなものをもらっていた気もしますが、まあ、小野十三郎賞というのは悪くないでしょう。第4回ということでまだ評価も定まっていないと思いますけど、甲田さんが加わることで厚みが増すように思います。いずれにしろ、お祝い申し上げます。



庄司文雄氏詩集『みち』
michi
2002.4.25 横浜市磯子区 矢立出版刊
2000円+税

 みち

ひがしへ にしへ ばあちゃんは あるいた
よあけまえの じんじゃにのびる にしのみ
ちを しなに しゅっせいした じいちやん
の ぶじを いのって おひゃくどをふんだ
ほしのまたたきのまに じいちゃんの すが
たをおもって ひがとっぷりとくれた ひが
しにのびるみちを  ぎょうしょうをおえた
りやかーをひいて みなとまちから かえっ
てきた つきのみちかけに こどもの ねが
おをおもって みちは でこぼこの じゃり
みちだった ひがしへ にしへ ほおにつた
わるあせを よごれたてぬぐいで ぬぐいな
がら  ばあちゃんは あるいた  なみだも
まじっていたのだろうなあ  おんなだから
いま みちは あすふぁるとの ひろい ひ
ろい どうろになった おやじをのせた せ
んきょかーがはしる 「けいざい はってん
の どうみゃくだ」 しゃがれたこえで お
やじが じまんする
ひゃくしょうだった おやじは ねくたいを
しめて  せんせいと よばれ  ねくたいを
しめない さらりーまんの おれは ひゃく
しょうには ならなかった
「さっぱど かわって すまったなあ」
めがかすみ みみのとおくなった ばあちゃ
んが  おうむがえしに つぶやく  みちは
ひろい ひろい どうろになった
おやじは よく そうしきの いいんちよう
というやつを たのまれる きっと どうみ
ゃくこうかで しんだひとも いるのだろう
みちは でこぼこ の じゃりみち だった

 第一詩集だそうです。著者のお住いは宮城県で、30代ですから詩壇の中ではまだお若い方と云えましょう。紹介した作品はタイトルポエムです。宮城の風景と重ね合せて鑑賞すると良く見えてくると思います。
 祖母、父、自分というつながりの中で、日本の歴史が端的に表現されていると思います。祖母を見る眼、父を見る眼の違いに著者の歴史観がよく表現されています。それが「みちは でこぼこ の じゃりみち だった」という最終のフレーズに収斂されていて、今の若い人の感覚をも表現し切っているのではないでしょうか。今後の活躍を期待できる詩人の登場と云えましょう。



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