きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり
kumogakure
「クモガクレ」Calumia godeffroyi カワアナゴ科


2002.9.30(
)

 静岡県天城湯ケ島町という珍しいところへ出張してきました。廃却品の処理状況の視察です。
 あまりあってほしくないことですが、製品を造っている私の工場ではたまに廃却品が出ます。通常の廃却品はルートが決まっていますから問題ないのですが、突発で出来た廃却品が問題です。廃棄物処理法で、発生させた会社は最後の処理まで責任を持つことが義務付けられています。8月中旬に今の職場に異動になりましたけど、真っ先に待ちうけていたのがこの廃却処理だったのです。いきなりそんな仕事かヨーと抗議しましたけど、前任者からの引継ぎ事項なのでしょうがありません、納得して引き受けました。
 訪問先の会社はもともと金山・銀山を持っていた会社でした。その溶解・溶融技術の延長線上に廃棄物処理があるようです。技術的には問題がないと判断しています。私の持ち込んだ廃棄物は数トンの量になるのですが、それの処理にはさすがに丸一日かかるようでした。とても最後まで監視は出来ないので、処理開始を写真に撮って帰ってきました。信頼できる会社ですので大丈夫でしょう。
 処理の実施状況について、たまには監督官庁の査察があるようですが自信を持っています。処理の流れをすべて写真で説明でき、証拠の書類も揃えました。あまりやりたくない仕事ですけど、いい経験をさせてもらったと思っています。それにしても数千万円の廃却費用、もったいなかったなあ。売れればその倍以上で売れるものですし、利益もあげて会社に貢献できたのに…。直接私が関与した事案ではないとは言え、今後の仕事に生かしていこうと肝に銘じました。



季刊詩誌『竜骨』46号
ryukotsu_46
2002.9.28 東京都福生市
竜骨の会・村上泰三氏発行 600円

 X氏の身の振方/松本建彦

ここのところ やたらに
出番が増えてしまって
おちおち休んでいる暇もない
地球上の あちこちの国から
お呼びのかかること まことに夥しいかぎり
ゆっくりと安眠させてくれよ と
虚しく呟いている
X氏

裟婆の 欲と色とに
さんざんひきずり回されて 今までも
随分と酷使されてきたことだが
それにしても ここ二、三年来の
時間外勤務の多さには
ほとほと 呆れ果てた
どこの労働基準局へ訴え出ようか

あまりに事柄が多くなりすぎ
結果が悲惨になりすぎ さらに
この身をいとも易々と
乗り越えていくものが多すぎる

わしの出番は もう無しにして
一刻も早く 二度と開けられない
絶対にピッキングされない
静かな場所に安置してもらいたい
切に願い祈っているX氏の名前は
前代未聞

 「X氏」とは誰なのか惹き込まれて読んできましたけど、何と「前代未聞」氏だったのですね。そう言われてみると「ここのところ やたらに/出番が増えて」いるようです。それも「地球上の あちこちの国」で。確かにそんな状態になっていると言えるでしょう、前代未聞なことばかりですから…。
 この作品からは作者の静かな怒りのようなものを感じました。人類はどうなっていくのだろうというような、作者の危惧さえも感じられます。決してユーモアを目的とした作品ではないと思います。



個人詩誌『息のダンス』2号
iki no dance 2
2002.10.20 滋賀県大津市 山本純子氏発行
非売品

 旅の途中で

京都駅構内の百貨店
入り口フロアの一角
でのこと

土産物の詰まった紙袋を提げて
修学旅行に来ました、
といった感じの
男子中学生の一団が
思い思いに長机にとりついて
アンケート用紙に何か書き込んでいる
おまえ、どれにした?
と互いの手もとを覗き込みながら

折しも
春のブライダルフェア開催中
純白のレースのとりどりを
華やかにまとったマネキンたちが
ブーケを胸に問いかける
 夢に見た日
 あなたの選ぶウェディングドレスは
 どれですか?

百貨店の思惑とは
だいぶん違っているけれど
旅の途中で男子中学生は
一瞬夢見る
いつか、自分のとなりに
寄り添って立つ人のことを

 思わず素直に笑ってしまいました。まったく「百貨店の思惑とは/だいぶん違っているけれど」、「男子中学生」が意図しているのかしていないのか判りませんけど、でも「あなたの選ぶウェディングドレス」という設問には男女の区別はなかったのだろうから、きっと中学生に悪意は無かったのでしょう。大人ならば女性に対する設問と咄嗟に判断するところを、中学生はそう受取らなかった、そのギャップが何ともおかしくて、大笑いしています。
 そして、美しくもありますね。「いつか、自分のとなりに/寄り添って立つ人」に着てほしいウェディングドレスを選ぶ男子中学生の姿に、将来を信じ切っている若者を感じます。ズレはあったけどほほえましく美しい光景だと思います。こういう作品を書かせたらピカ一、山本純子詩の面目躍如と言えましょう。



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