きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
「クモガクレ」Calumia godeffroyi カワアナゴ科 |
2002.11.29(金)
職場異動した人の送別会が行われました。今回の幹事はおもしろい連中で、いつものように居酒屋やレストランでやるのは飽きたからと言って、会社近くの公民館でやったのです。公民館の一室を借り切って、何とおでんやら刺身やらを幹事たちが造ったのです。仕事を途中からサボって準備したというのですから、その熱意には敬服しましたね。手作りの料理は、いつもと違う味でおいしかったですよ。
今回のトピックスは何と言っても私がお酒を一滴も呑まなかったことでしょうね^_^; 実は明日から札幌に行くことになっています。日本詩人クラブの第2回「札幌イベント」という催しに出ることになっています。ところが何も準備をしていません。明日の朝では間に合わないので、今夜は呑まないで早く帰ろうという気になったのです。お酒が目の前に出て、悩みに悩みましたけど、グッと堪えました。
そんな訳で、イマイチ乗れなかったことは否めませんでしたけど、その分、たくさん食べました。お酒呑んだら食べられなくなるタチですからね。呑まなきゃ食べられる、これ、道理というものです。まあ、たまには素面で酔っ払いを観察するのも悪くないですね。いつも呑まない人からそうやって観察されているのかと思ったら、ゾッとしましたけど^_^;
○詩誌『すてむ』24号 |
2002.11.25 東京都大田区 甲田四郎氏方・すてむの会発行 500円 |
もっといわせて/長嶋南子
小さなディスクのなかに入っている
同僚みんなの
家族構成 年収 特別昇給の回数 納税額 扶養家族 配偶者の有無
キィを押すとなんでもゾロゾロ出てくる
たまにまちがいがあって
給料がドンとあがるなんてことはないか
きのうケイコさんと交わした
上司の悪口も入っている
これまでいいふらした悪口もぜんぶ
インプットされていて
ひと口いうごとに給料がさがる
直径五センチに満たないディスクのなか
寄せ集められたわたしの部分が
ふえていく
どんなにふえたって
癖はなおらない
ますます大声で
カイシャの悪口をいいつのる
そんなにいうのならカイシャをやめたら
と上司に肩をたたかれる
給料いらないから
もっと悪口いわせてと
くいさがる
おもしろくておもしろくて、思わず手を叩いて喜んでいましたが、フッと気になりました。「キィを押すとなんでもゾロゾロ出てくる」って、オレのもそういう扱いなんだよなぁ。そう云えば「たまにまちがいがあって/給料がドンとあがるなんてこと」に出くわした先輩もいたなぁ。その人は真面目に申告していたけど…。この作品はそういう危険も示唆しているのかもしれませんね。
もうひとつは「もっと悪口いわせて」という心理でしょう。「給料いらないから」と言っているくらいですから、相当強い思い込みです。酒呑みながらの上司・同僚の悪口は最高の肴ですけど、そんなところをうまく掴まえていると思います。こういう作品を書かせたらピカ一の作者の、面目躍如たる作品と言えるでしょうね。
○文芸誌『獣神』26号 |
2002.11.24 埼玉県所沢市 伊藤雄一郎氏発行 1000円 |
伊藤雄一郎氏「0(ゼロ)の系譜」は雄大なスケールで描いた家族の系譜を考えさせられる小説です。江戸時代の庄屋から続く大門一族の当主・徳次郎の生き方を通して、日本経済、日本の家族について考えさせられました。自分の役割は洋菜で成功した体験をもとにして、多くの子孫を残し、大門家を永劫に栄えさせることとエネルギッシュに活動する徳次郎に、次々と訪れる長男の、孫の死。希みとは裏腹に子孫を断たれた徳次郎の報復行動とは…。末娘との結婚を断られた「私」の意外な行動…。手に汗を握るスペクタクル、ミステリーという側面も見逃せません。久しぶりに小説を読んだなという気がして、一気に拝読しました。
初めていただいた雑誌ですが、相当な書き手が集っていて飽きさせませんでした。私たちに馴染みなところでは丸本明子さんの短編「再生」も収録されていました。青江由紀夫氏の「銀次郎の日記」もユニークな作品で楽しめました。
○詩誌『ノワール』3号 |
2002.12.1 非売品 埼玉県新座市・田中眞由美氏 千葉市稲毛区・中村洋子氏共同発行 |
光のなかのしずく 女声合唱組曲 曲:平田あゆみ 詩:中村洋子
一 ふきのとう
屋根の雪がとける
光のなかの雨だれ
まひる 数珠につらなる
学校のかえり ふきのとうをさがしにいこう
流れのふちにやさしいきみどり
流れのおとにほころぶつぼみ
光をまって花になる
よろこびを両手でつつみたい
みそ汁にうかベて 春のかおり
にがみを味わうのがおとなになることかしら
こどもでいたいけど
ことしはにがみをのみこんだ
季飾はこんなにはやくかわる
ひかりのなかの雨だれ
屋根はもうかわきはじめる
夢にゆれる 屋根のかげろう
今回は歌曲用の中村洋子さんの詩を紹介してみました。「光のなかのしずく」という総タイトルのもとら一〜四の詩があり、その冒頭のものです。
中村さんは北海道出身で、私も北海道生れですから、この光景は懐かしいですね。生れたときは別として、私が自覚して北海道に住んだのは小学校3年から4年のたった1年間でしたが、その印象は強烈でした。私の原点だと思っています。特に春先の「ふきのとう」の出現は今でもよく覚えています。喜びの瞬間であり、それをこの作品は良くとらえていると思います。
この作品を曲とともに聴いたことはありませんが、おおよそのイメージは掴める気がします。特に「光のなかの雨だれ」「ひかりのなかの雨だれ」と繰り返されるところはきれいだろうなと想像しています。機会があったら一度聴いてみたいものです。
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