きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり
kumogakure
「クモガクレ」Calumia godeffroyi カワアナゴ科


2002.12.6()

 日本詩人クラブの、今年最後の理事会がありました。いつもは2時間みっちり会議をやるのですが、今日は1時間だけ。19時からは専門委員を招待した忘年会が設定されています。各理事のもとに専門委員会が設置されていて、そこの皆さんを毎年招待しています。日頃のご協力に感謝するという意味が込められています。私も理事になる前は理事長直属の専門委員としてOA化を推進した経験があります。そのため、当時の理事会の皆さんとも親しくさせてもらって、選挙で理事に推薦された時に何の違和感もなかったという経緯がありました。そんな訳ですから、専門委員を委託されたら、できるだけご協力をお願いしたいと思います。

 まあ、理事会はそんなことでしたから大した議論もなく、スンナリと終りました。私にとって良かったのは、休暇がとれたことですね。以前は15時頃仕事をサボって出てきたりしましたけど、職場異動でそれも出来なくなり、休暇をとるしか手が無くなったのです。それも午後からの半日休暇ではダメ。一度会社に出てしまうと何があってもおかしくないので、いっそ丸一日出社しない方が良いのです。それを今日やってみました。自宅に居ても電話はかかってきますけど、グッと堪えて電話対応で済ませました。これからもそんなふうにして行かざるを得ないでしょうね。来年5月、理事の任期が切れるまで、そうやってがんばります。



浅田隆氏詩集『樹海』
jyukai
2002.8.31 北海道旭川市
青い芽文芸社刊 1500円

 インカの星

原産地ぺルーの
紺碧の空を思わせる
ひときわ色濃い紫青の花弁

改良されたじゃがいもの
はるかな原種は
試験農場の片隅で
ひっそり立ち上がる

未開の地 異教の徒
マヤ族の食いものだったばかりに
悪性な病の元凶とみなされ
豚や貧乏人の餌として蔑まれた

雄雌同体
正常な受精によって生育せず
不純な増殖をするという罪科で
裁判にかけられた

襲い来る飢餓を
幾度救ったかしれないジャガイモの
理不尽きわまる扱いは
自称文明人たちの
思い上がりと無知がもたらす
差別と災難のいきさつ そのもの

いつか魔女の噂を立てられ
拷問の果てにギロチンにかけられた
ごく普通の女のように

狐憑きと指されたばかりに
部落に詫び証文を入れ
一家心中して果てた
つつましやかな家族のように

あだしごとも知らぬげに…
日ざしを浴びてゆったりとかしぐ
美瑛の丘陵 羊蹄山麓

綾に染め分け
今年もジャガイモの花が咲き競う

一つひとつめ花びらに
やさしく声をかけてあげたい

「インカの星よ
生き延びてくれて ありがとう」

 「ジャガイモ」は好きな食べ物のひとつですが「不純な増殖をするという罪科」があったとは知りませんでした。むしろ「襲い来る飢餓を/幾度救ったかしれない」食べ物として尊敬し「貧乏人の餌として」親しんでいたのですが…。
 著者は北海道富良野生れ、札幌在住の詩人です。私も富良野の近くの芦別に生れ、1959年頃の1年間だけでしたが芦別で小学校生活を送りました。その時、同級生の家に遊びに行って、無骨な父親が蒸かしたジャガイモに塩を掛けて出してくれたのが、今でも忘れられない味です。そんなジャガイモのこの詩に惹かれました。さらに詩集には夏の林間学校で行った「空知川」という作品もあり、40年以上も前の北海道の風景をしみじみと憶い起させてくれました。北海道に生れ、北海道の空気に慣れ親しんだ人でなければ書けない詩集と言えましょう。



季刊文芸誌『南方手帖』71号
nanpo_techo_71
2002.11.10 高知県吾川郡伊野町
南方荘・坂本稔氏発行 800円

 伊野・駅東町/坂本 稔

コノ辺リ
ヨク整ッテイル。

病院アリ
隣ニハ老人ホーム
線路隔テテ
葬儀屋サン。

病院ノ前ニハ薬局。

今日モ
ソノ通リヲ
汗ヲ拭キ拭キ
喪服ノ男女行キ交イ

時折
金ピカノ車
イトモシメヤカニ
何処カへ。

物影短ク
物音遠ク

夏ノ光ギンギン
幽界ノ門前町。

 「病院」「老人ホーム」「葬儀屋」「薬局」と、何でも「ヨク整ッテイル」町で、それは「幽界ノ門前町」なのだと記している作品ですが、「物影短ク/物音遠ク」という連がよく効いているなと思いました。特に、「夏ノ光ギンギン」なのだから「物影短ク」なるのは判りますけど、「物音遠ク」は思い浮かばず、このフレーズがこの作品の価値を高めていると言っても過言ではないでしょう。まさに「幽界」への入口を思わせるフレーズだと言えましょう。



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