きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり
kumogakure
「クモガクレ」Calumia godeffroyi カワアナゴ科


2002.12.11()

 新製品の最終的な状況判断を行いました。技術部門、販売部門、そして私の品質評価部門の3者が集って、GOの決断をしました。若干の問題点はありましたけど、改善と使用方法の限定で発売できるという結論に至りました。家庭用ではなく装置メーカーや工場で使うものですから、一般には知られることがありませんけど…。この秋の展示会で参考出品して工業新聞には記事が出ていましたから、知る人ぞ知る製品です。

 いずれにしろ、新製品を発売するというのは気持のいいものです。この分野の仕事では、私にとってこれで3件目の新製品です。4年ほどで3件目ですから多いわけではありませんけど、決して少ないわけでもない、そういう位置付けでしょう。前2件はいずれもユーザーの高い評価を得ていますから、今回もそうなってほしいものです。性能の自信はありますので、まあ、大丈夫でしょう。娘を嫁に出す気分で、来年早々の発売を待っています。



高橋未衣氏詩集・詩論集『鴉』
karasu
2002.12.20 東京都東村山市 書肆青樹社刊
2300円+税

 

ロンドン塔の
夏の大樹に 鴉がとぶ
黙して舞いおり 地をついばむ
E・アラン・ポウの不吉をギァと啼く

鎖をめぐらす絞首台跡がにぶく光る
幼い王侯のそこで消えた露の命
古城の奥の白い部屋に
かつて栄えた宮廷のものがたり

テームズの水が城内に引かれている
船着きゲートに送りこまれてきた
幻のつみびとたちに
塔は牢獄となり果て

中庭に棲みついた数羽の
大鴉が羽ばたけば
宝庫の中で宝冠の百カラットが落涙し
古塔の壁がほろりと剥がれ落ちる

ロンドン塔の大樹のくらがりを
風が吹き抜け 鴉がとぶ
大帝国は歴史の恥部も優雅に晒し
美貌の宰相は民族の末喬にすっくりと立っていた

古城の塔は青く暗い緑樹をしたがえ
ロンドンの喧騒の中に
妙に静かに息づいている

 ロンドンを訪れたときの作品でしょうか、古都と「鴉」の対比がうまい作品だと思います。英国を見る眼も確かで「大帝国は歴史の恥部も優雅に晒し/美貌の宰相は民族の末喬にすっくりと立っていた」というフレーズにそれはよく現れていると思います。
 詩は紹介した作品を含めて8編だけで、大半は「随想的詩論」として与謝蕪村について書かれていました。こちらもおもしろい。今で言われている侘び寂びの蕪村に「展
(の)び」があるのだ、という主張です。蕪村のさまざまな句を取り上げ、「展び」がいかにあるかを検証しています。新しい見方で、これは蕪村研究に一石を投じるものではないでしょうか。興味のある方は是非ご覧になると良いでしょう。お薦めします。



詩誌『撃竹』52号
gekichiku_52
2002.11.20 岐阜県養老郡養老町
冨長覚梁氏発行 非売品

 やあ今日は!/堀 昌義

細い碍子管を通して
軒下から電線を取り込んでいる
瓦ごとに雨跡が盛り上がり
雨樋が傾いている
巻き上げたままの日除けシートが
意地悪のように両肘を張っている

執念深く 意固地に しらじらしく
忍耐強く 気長に そ知らぬ顔をして
一本釣り漁師のように日焼けして
過疎地の老農のようにしわを刻んで

換気窓にトタン板
窓も道具で塞がれている
くすんだ一枚の引き戸
がたぴしがたがた がたがた
やあ今日は!

今夜も灯が点る
一群のビル林立の狭間に 断固居座る
一杯飲み屋

 こういう店って、ありますね。つい這入ってみたくなる店です。向うが「意固地」なら、こっちだって「意固地」だ! そう思って這入ってしまう店なんでしょうね。変な連帯感とでも言いましょうか…。
 2連目の比喩もおもしろいし、「意地悪のように両肘を張っている」というフレーズもおもしろいと思いました。「細い碍子管」など珍しい素材もあって、懐かしい思いのする作品でした。



個人詩誌『パープル』21号
purple 21
2003.1.16 川崎市宮前区
パープルの会・高村昌憲氏発行 500円

 目薬/姨嶋とし子

一歳三か月の息子に
母親が目薬をさしてやっている
「坊やパチパチして」
息子は両手をパチパチと叩いた

六十五歳になった息子が
母親に目薬をさしてやっている
「母さんパチパチして」
母親は息子を見つめて「あなた誰方?」

 第5回パープル賞の入選作です。4行2連という制約を設けた賞ですが、なかなかうまくまとめたものだと思いました。第1連は思わず笑ってしまい、第2連をどうまとめるのかと思ったら、ボケを演じたという設定なのですね。
 こういう楽しい詩も、詩の魅力のひとつです。楽しめました。



文芸誌『伊那文学』63号
inabungaku_63
2002.11.30 長野県伊那市
伊那文学同人会・中原忍冬氏発行 500円

 誕生、そして死 U/市川 篤

私の誕生とともに
私の時は生まれた
あるいは速く
あるいはゆっくり
私の中を流れ
約束された死に向かう

死は生にセットされて
誕生の時から私と歩む
いつもかたわらにあるのだが
生の喜びにかき消されて見えない
見えないのではない
見ない
生と死はペアを組んで
私とともに歩む
死は 約束されたものだから……

しかし
死はセットのひとつではない
新たな旅立ちでもない
死は……

私の誕生とともに
私の時は生まれた
私の死は生まれた
別に特別なことではないのだが……

 「死は生にセットされて/誕生の時から私と歩む」という設定のもとに綴られた作品ですが、最終行の「別に特別なことではない」という言葉が重く伝わってきます。「見えないのではない/見ない」という生き方をしてきた私たちには、考えさせられる作品だと言えましょう。なにより「死は 約束されたもの」ですから。



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