きょうはこんな日でした ごまめのはぎしり
kumogakure
「クモガクレ」Calumia godeffroyi カワアナゴ科


2003.1.8()

 仕事が始まって2日目。実質的な仕事始めは充実していました。新製品の最終承認を控えて、技術・品質保証・営業の関係者が集って協議しましたけど、当初2時間の予定を大幅に越えて3時間半も掛かってしまいました。昼食を採る機会も逸失してしまいましたが、満足しています。最終の詰めですから、どうしても細かいところまで関心がいって、それで時間オーバーになったわけですから気になりませんでした。みんなで自信を持ちましたよ。これだけの頭脳集団 ^_^; が関与した製品ですから、絶対売れると思っています。
 昨年秋に試作品を発表したところ、工業新聞の関心を得て、すでに新聞発表されています。市場が歓迎する製品であることも判りましたので、開発を急いだ経緯もあります。わずか3ヵ月という短期間の開発でしたけど、いい製品になったと思います。自然環境への負荷低減という側面も大きい製品ですから、来週の上部組織承認も大丈夫でしょう。早く世に出したいものです。



季刊詩誌『裸人』16号
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2003.1.10 千葉県佐原市
裸人の会・五喜田正巳氏発行 500円

 白い毛布/禿 慶子

あしたが約束できないほど戦争が日常を押し潰していたころ
成長期のわたしは二つに折った雪のゲレンデで眠っていた
大きな白い毛布の肌触りはどちらかといえば堅くて重かったが灯り
のない部屋でも長い毛足に光を集めて ひととき 雪原で仮死にお
ちいりまたは冬のみのむしになることもできた

戦争がまだ事変といわれていたある日 家に出入りする人の背中に
乗ってその事故を見にいった
なぎ倒された板塀のむこう タイタンが掴んで投げこんだように
頭を地面に突き刺した真っ黒な小型機が倒立している
濡れて変色した土に散乱する大小のくすんだ金属片 ガソリンの刺
激臭に混じってものの焦げた異臭が漂っていた
片翼をなくした胴体の芯は充分に鎮火していないようでときおり黒
煙が噴き出し赤いものが揺らいでいる そして燃え残った一方の主
翼にも火が広がり いま 鮮やかに描かれた日輪を炎が砥めまわし
ている ためらうように 楽しむように 慈しむように

白い毛布が軍から届いたものだと知ったのはずっと後のことだった
墜落した飛行機に乗っていた若い訓練兵の遺体を最初に覆ったのは
母の持っていった毛布だったから
黒焦げの遺体はそののち頭から包帯を巻かれ運び出されたという
 操縦不能後の短い時間その青年はなにを考えたろう 少なくとも
その瞬間固有の自分をしっかり抱き締めたのではなかったか
堅くてもあの毛布はとても温かかった 絶えず「全体」に脅かされ
た時代 壊れそうなわたしの個を 私の感覚を彼が温めてくれた
のだ ジョージ・シーガルの人型のような顔のないからだを寄せて

 軍用の「白い毛布」にまつわる作品ですが、「成長期のわたし」の感覚が見事に再現されていると思います。「白い毛布」を「二つに折っ」て「雪のゲレンデ」とするあたり、「若い訓練兵」が「壊れそうなわたしの個を 私の感覚を彼が温めてくれたのだ」と感じるあたりは、まさしく詩人の感覚と言えるでしょう。
 考えれば当り前なんですが「白い毛布が軍から届いたもの」とは驚きです。民間の協力に対して軍がそういうことまでもしたのか、と改めて知らされました。歴史の証言という側面も持っている作品だと思いました。



詩誌『都大路』32号
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2002.12.20 京都市伏見区
「都大路の会」 末川茂氏発行 500円

 ネクタイ/川出浩之

ある朝、突然ネクタイの結び方を忘れた
襟首に掛け胸の前で
長い方を短い方の周りにくるっと回し
手前から向こうへ輪っかに通して
さてそれからどうするのだったか
ネクタイの結び方を忘れたら
自分が誰であるかもわからなくなっていた
多分サラリーマンだったのだろう
とにかく背広を着てダイニングに行くと
妻と思われる女性がご飯をよそってくれた
子供が2人バタバタと学校の支度をしている
玄関に出ると後ろから
行ってらっしゃいという
みんなの声が聞こえた
なんだかなつかしい響きだった
行き先がわからないので
見知らぬ街をひたすら歩いた
ポケットにネクタイを握り締め
結び方さえわかればなんとかなると
ずっと考え続けたが
しだいに頭の中は空白になり
とうとう
永遠に忘れてしまった

 私もサラリーマンですから、この感覚は判りますね。作者は今号で「俗物(ミーハー)的現代詩人ガイド」というエッセイも書いていて、そこで公務員だということが述べられています。私企業のサラリーマンと公務員では職種は違うものの同じ宮仕えの身、同病相哀れむというところでしょうか。それにしても「ネクタイの結び方を忘れたら/自分が誰であるかもわからなくなっていた」というのは、本当は怖い話なんです。



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