きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
「クモガクレ」Calumia godeffroyi カワアナゴ科 |
2003.1.17(金)
暮から正月にかけて初めてのアルバイトをした高1の娘の、アルバイト料が出ました。近くの郵便局でのバイトです。さぞ嬉しかろうと思っていましたら、妙にショゲています。理由を聞くとバイト料が半分しかないと言うのです。明細書を私も見て、カッとしましたね。天下の郵政省が子供を騙すのか!
大人が子供のバイト料のことで顔を出すのもどうかと思いましたけど、郵政省は許せないという気持もありましたから、私が電話することにしました。電話口で「娘のバイト料のことで…」と言うと、係の人も察していたようですぐに「あれは12月分なのです」という返事。?? 確かに一般の企業は12月締め、1月締めで給料を支払っています。こちらは10日ほど連続で働いたのですから、当然まとめて支払われると思い込んでいたんですね。すぐに納得して電話を切りましたけど、そうならそうと明細書にはっきり書いておいてほしかったナ。変なところで力が入って、ツカレた一日でした。
○詩誌『饗宴』34号 |
2003.1.1 札幌市中央区 林檎屋・瀬戸正昭氏発行 500円 |
王国の崩壊/瀬戸正昭
人、死を憎まば、生を愛すべし −徒然草−
頭 鮮血ほとばしる幻影 …
朝鮮動乱のかすかな記憶 …
首 けいつい崩落、トンネルは豊浜。
ときどき注射で援軍送る。
目 視界きわめて不良。網膜剥離の疑い。
これでも飛べというのかい。
耳 外耳炎。抗生物質メイアクト注入中!
胃 ピロリ菌撃退月間推進中!
生にんにく「蓬莱」濃縮タイプ摂取中。
肝臓 これはもうフォアグラ熟成状態。
おいしいですよ。
腎臓 尿道入口付近ニ崩落セシ石有。
腰 痛ゥ 痛ゥ 痛ゥ ! 経皮鎮痛小宴剤
ボッツタレン塗布せよ。
但し、粘膜に使用しないこと。
腸 配管については、公共投資事業の
予算折衝中。
その他 年末、血糖値、血圧友に上昇するも
正月床に伏し若干の安定を得たり。
舌 こんなに回るのだから、今年も
若干の 希望あり …。
「王国」とはもちろん我が身のことですが、冒頭の徒然草引用が効いていますね。ジタバタする様がこの引用で文学的に高まっていると思います。そして何より「舌」が良い。あちこちの不調をすべてカバーしてくれるのが「舌」。一見、軽そうな中に本質を教えてくれている作品だと思いました。
○詩誌『蛙』4号 |
2003.1.25 東京都中野区 菊田守氏発行 200円 |
現代の寓話/菊田 守
お正月の白鷺の町を歩く
白鷺ハイムは戦争中はルーテル神学校のあった所
憲兵もいた
白鷺ハイムに沿って立ち並ぶ銀杏はみんな裸木
電話ボックスの脇にある欅の大木が
空に向かって大きな手を挙げている
何かさけんでいるようだ
ーーおお そうだ
この白鷺ハイムの東南にあった正門の前で
昭和二十年三月夜の米軍の空爆により
焼け死んだ老婆の遺体はトタンを被せられ
その焼けた脚が木の棒のように下から覗いていた
いまは桜と銀杏の名所
北の方からやってきたシルバー色の乗用車
私の目の前で角を曲り東原中学の方へ走り去った
運転していたのは若い女性
晴れ着をきて運転していた
ーーまるで伝統と進化の象徴のようだね
しかし通り過ぎる瞬間
私は見てしまった
美しい日本の着物がないていた
着物の裾の下に覗いていたのは
黒い革靴だった
やんぬるかな(注)
注・やんぬるかな……「もはやどうにもしかたがない。万事休す。」の古い言い方。
「焼け死んだ老婆の」「焼けた脚」と「若い女性」の「着物の裾の下に覗いていた」「黒い革靴」を対比させた、まさに「現代の寓話」と言うべき作品です。最終行の「やんぬるかな」という言葉にすべてが表出していますが、本当にこれからどうなっていくんでしょうかね。「まるで伝統と進化の象徴のよう」なものは多く存在しますけど、その裏側もちゃんと見ろよと教えられた作品です。
○季刊・詩と批評『キジムナー通信』17号 |
2003.1.15 沖縄県那覇市 孤松庵・宮城松隆氏発行 100円 |
大五郎よ/宮城松隆
この世この生で自己に正直とは
冥府魔道しか残されていないのか
非道を凝視する
お前の眼光は鋭い
大五郎よ
お前の父は狼と呼ばれし男
刀一本に人の世の倫理が光る
この世の邪道を切り捨てる
しかし大五郎よ
お前とお前の父が凝視ている
この世の非道とは
この世の邪道とは
この世この生のしがらみなのでは
しがらみからの解放
しがらみからの脱出
たとえ冥府魔道と呼ばれようと
腐敗しきった奴らを一刀両断に
その現代版のすがすがしさよ
「キジムナー」とは沖縄の妖怪のことだそうです。金縛りに遭ったりもするけど、金持ちにしてもらったりもするというかなりユニークな妖怪のようです。それを誌名とする批評誌を沖縄から初めて頂戴しました。
紹介した作品は言わずと知れた子連れ狼≠題材にしたもの。最近では「大五郎」という焼酎までありますが、それはここでは関係ありません。
「この世の非道とは/この世の邪道とは/この世この生のしがらみなのでは」という視点が新鮮です。そのしがらみを「一刀両断に」することが「現代版のすがすがしさ」なのだという観点は、今の世では大事なことなのではないかと気づかされました。悪いことは悪い、良いことは良いという明快な議論が起きないことにこの国の問題があるように思います。常に灰色になっていく良さもあるのでしょうが、「一刀両断」の必要性も問われた作品だと思いました。
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